Conan 公開終了時点で、コナン映画最高のヒットになった26作。見処が多い佳作なのは間違いない。ただ、前半の切ない展開に感情移入した分、後半に求心力が失われた感があり、27作ほど盛り上がれませんでした。

詳細を展開すると ネタバレ感想 

 前半の直美アルジェントの物語は切ない。善意で開発した老若認証が人の居場所を特定しやすくした事が、父への銃撃を助け、幼馴染の志保(灰原哀)の正体も明かしてしまう。善意の科学技術が、悪意に利用されるリスクへの警告でもある。直美の悔しさと哀しみは胸に迫るものがあり、彼女が終盤も物語の中心にいたらより感情移入できたかもしれない。
 中盤で灰原と直美が潜水艦から脱出した後、物語の焦点はピンガに移る。グレースへのなりすましは予想外だったので、明かされる過程は興味深かった。ただピンガの人物造形が粗く、組織の中で成り上がりたい純粋悪として描かれたので、感情の移入しようがなかった。また、欠陥があったとしても犯罪捜査に活用し得る可能性を秘めた八丈島の拠点があっさり破壊されてしまうのも釈然としなかった。
 ベルモットが灰原哀を救った方法や理由が明かされる最終盤は見事、フリが効いている分、心地よい回収だった。ただ、灰原哀がコナンに別れを告げるモノローグも、本作の性質上さほど真剣には聞けない。「サザエさん」「こち亀」「うる星やつらBeautiful Dreamer」同様、名探偵コナンは終わらない日々の物語。連載が続く限り、登場人物の構成は大きく変わらない。コナンや灰原に身バレの危機が訪れる度、なんだかんだ大丈夫だよねと思わせてきたのは青山剛昌先生自身。人気作だからこその定番を超える展開が欲しい。
 と言いつつ、コナンへの口づけを蘭に返す筋の通し方で、灰原哀の評価がまた一段上がったのは確か。