AIRPLANE NUT

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ブログタイトルは「ヒコーキきちがい」という意味です。航空ショーや航空博物館を見に行くのが趣味です。

上掲の画像は米国、カリフォルニア州チノにある有名なプレーンズ・オブ・フェイム航空博物館に展示されているハインケルHe100のレプリカモデルです。He100はドイツの主力戦闘機の座をメッサーシュミットBf109と争い、(実際にはその前のHe112が競作に敗れた後でリベンジをかけてハインケルが制作したのですが。)熾烈なスピード記録樹立競争を繰り広げたことで有名です。ハインケル博士の執念も空しくHe100は空軍に採用されることなく、わずかにプロパガンダなどに利用されて終わりました。

 

ハインケルという会社は技術偏重の傾向がある当時のドイツ航空業界の例にもれず、常にいろいろな新しい技術を試していて、このHe100もまるでレーシングカーのごときエンジンのリジッド・マウントや、そして表面蒸気冷却機構を備えていました。

 

スーパーマリン224の記事のなかで触れたこの冷却システム、私は大きな誤解をしていました。単に「表面冷却」という場合と「表面蒸気冷却」とは異なるシステムらしく、私は両者を混同していました。私の投稿を通して同様の誤解を招いておられる方がおられたとしたらお詫び申し上げます。

 

単に「表面冷却」という場合、通常のラジエーター・コアの代わりに機体表面下に冷却水の通路を設け、その通路に水やオイルを循環させて冷却するもので、対して「表面蒸気冷却」はスーパーマリン224のなかでお話しした通り、気化潜熱を利用する方式です。私のブログにたびたび登場するスーパーマリンS6Bは多分単なる表面冷却です。よって非常に広い冷却面積を必要としたと思われます。対する224の冷却表面積が翼の前縁部にしかないのは理論上は効率が良いはずの表面蒸気冷却を採用しているからだということなのでしょう。この辺の違いを詳しく説明しているメディアを見たことがないのではっきりしたことはわかりませんが、恐らくそういうことだろうと思うし、専門に勉強や研究をなさっているかたがたでなければ私と同じような思い違いをなさっておられる方は意外と多いんではなかろうかと想像します。(自己弁護。)

プレーンズ・オブ・フェイムに展示されているハインケルHe162ジェット戦闘機と搭載するBMW003エンジン。やはり新機軸満載でしたが戦局を一転させるには到底及びませんでした。

ヒコーキではありませんが1978年のF1マシン、ブラバムBT46Bファン・カー。ニキ・ラウダの操縦でスウェーデン・グランプリに勝利しましたが、一戦限りで禁止されました。このマシンのおおもととなったBT46は発表当初ボディ・サイドに表面冷却装置を備えていました。小さなF1マシンに搭載されたことを考えるとおそらく「蒸気」を介さない「表面冷却」でしょう。冷却システムはうまくいかなかったようで、すぐに通常のラジエーターに改められました。F1車体の表面積でF1のエンジンの発生する大熱量を冷却することは不可能だったことでしょう。