伝えたかった、言葉たち。 山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第1回 LEARN 2021.08.06

アイドルとしてはもちろん、ラジオパーソナリティとしても大活躍。乃木坂46の山崎怜奈さんが、心にあたためていた小さな気づきや、覚えておきたいこと、ラジオでは伝えきれなかったエピソードなどを、自由に綴ります。

(photo : Chihiro Tagata styling : Chie Hosonuma hair&make : Kiwa Inaba)

「自分サイズの言葉たち」

ポジティブは性格ではなく、状態だ。疲れては寝る、を繰り返すだけでは、誰だって心の免疫力が落ちてくる。生活が荒れた状態で、ポジティブに暮らすのはとても難しい。それなのに、生きていると3歩進んで4歩下がることがしょっちゅうだ。整体で骨盤のゆがみを直してもらっても、疲れているときほどソファーで寝落ちする。下手したらソファにすらたどり着けず、起きたら床、なんてことも少なくない。生活は自分の手で維持しなくちゃいけないし、時間は容赦なく削られていく。でも本当は、体も、心も、ずっと穏やかでいたい。気づいたら深夜1時、なんて日々からは、卒業したい。

職業柄、ダンスと歌は必要だからやり始めた。一方で、必要とされなくてもやっていたのが、ノートに書くことと、ラジオを聴くことだった。ラジオは耳元で勝手に喋ってくれるし、聴き逃しても罪悪感がない。誰にも教えていないけど好きな番組にチャンネルを合わせ、イヤホンをするだけで安心する。有名な番組を聴くのも、大部屋の離れたところから盗み聴きしているような気になって、妙にワクワクする。パーソナリティの話を勝手に文字起こしする習慣がつくと、友人との会話も、いいなと思ったら後で書き留めるようになった。それを読み返すのも好きだ。

思えば学生の頃から、人の話や記憶の断片を、無意識のうちに拾い集めていた。人のためじゃなく、自分が書かずにはいられないから書いていた。以前たまたま美容室で読んだ『Hanako』の言葉をお借りするなら、これらすべてが「いつまでも私らしくいるために自分を高める学びの場」なのだ。

このコピーが表紙を飾った号では、いろんな人が愛している「豊かさ」の形が、さながらカタログのように並んでいた。しかも、おしゃれすぎる! ウワアア眩しい! みたいなものだけでなく、ちょっと勇気を出せば手が届きそうなものまでそろっている親切設計。やさしさがしみる……。

“勉強が楽しい”。例えばこれも一種の「豊かさ」で、知的好奇心こそが、私の強みなのかもしれない。部屋に新しい風を入れるように、新しい価値観を取り入れると、目には見えないものが整っていくのだ。加えて、生活におけるすべての選択基準は「他人の目にどう映るか」ではなく「自分が幸せになれるか」だと知った。たしかに、一日一日の満足度を上げるだけで、心の栄養不足はびっくりするほど改善される。余裕が生まれて、諦めかけた希望が見えてくる。上手くいかなくても、まあそんな日もあるよねぇと寛大になれるし、人にもやさしくなれる。高価なものを身につけなくても、ささやかな知的好奇心を積み重ねていけば「豊かさ」に結びつくこと、忘れたくない。

帰り道、さっそく駅前のお花屋さんに立ち寄った。自分の手で一本一本選ぶなんて初めてだったが、花に顔を近づけて息を吸い込むと、香りが心まで広がった気がした。勉強になったなあ。

今でも、ノートの中で、たくさんの言葉が輝いている。精神治癒力と浸透力のある言葉の数々に、何度も救われてきた。自分でも0から生み出せたらいいのだけど、まずはノートの中身をおすそわけできたら、誰かの心の薬になるかもしれない。

世の中には面白い本があふれているし、何を書いても全く新しいことは言えない。それでも、焦って取り繕った華やかな文章より、自分の足元をじっと見つめる視点を大事にしたい。誰かを思いやる先にある温度を信じながら、「自分サイズの言葉」も少しずつ探して、進んでいきたい。

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