五戸美樹の「生まれ変わったら鈴木愛理さんになりたい」―番外編・道重再生に想う「アイドルの終わり方」―

五戸美樹の「生まれ変わったら鈴木愛理さんになりたい」

―番外編・道重再生に想う「アイドルの終わり方」―

止まっていた時が動き出した。

道重さゆみさんが、2年半前と何も変わらない、むしろさらに美しくなって目の前に現れたとき、そう感じました。透き通るような白い肌と、印象的な大きな瞳はそのままに、まさに彼女は「再生」したんです。

現在、東京・丸の内「COTTON CLUB」で開催中の『SAYUMINGLANDOLL~再生~』。モーニング娘。を卒業した道重さゆみさんの復帰ステージです。まだ公演は続くので詳細は控えますが、事前情報通り、「コンサート」でも「ミュージカル」でも「ディナーショー」でもないパフォーマンス。なるほどと思いました。音と光と映像を駆使し、歌ありイリュージョンあり、卒業後のこの2年4か月をファンタジー形式で彩る、約80分のショー。

卒業後、芸能活動を休止し、SNSも一切更新することなく、時折現役メンバーが会ったと話すのにザワザワするくらいで、もう、「道重再生」を期待するというよりは、同じ空の下で元気に生きてくれていたらそれで良いと思っていました。そんな彼女が、おそらくほとんどセルフプロデュースであろう公演で復帰したのです。こんな感慨深いことがあるでしょうか?
 


 

―道重加入からの道筋―

道重さゆみ。1989年生まれの27歳。モーニング娘。6期メンバー。モーニング娘。のリーダーおよびハロー!プロジェクトのリーダーをつとめ、モーニング娘。在籍期間は約11年10か月と史上最長。彼女に憧れてアイドルを目指す子が続出し、横浜アリーナでの卒業公演は、多くの感動を呼んだ伝説的なものとなりました。

しかし出だしは決して順調ではなかったと記憶しています。歌が必須のモーニング娘。の中で、道重さんは「リズムってなんですか?」という段階からでした。同期の田中れいなさんが歌で頭角を現していく一方、“自分大好きキャラ”で女性から反感を買っていた頃もありました(私は好きでしたが)。

6期メンバーは『シャボン玉』でデビューするも、その後モーニング娘。は人気メンバーが続々と卒業し、低迷期(今ではプラチナ期と呼ばれる)を経験。絶対的リーダーの高橋愛さんも卒業し、“さぁどうする?”となったモーニング娘。にハマったのがEDM、そしてそれに付随するフォーメーションダンスだったと思います。
 


 

―道重完成のエフェクト―

田中れいなさん卒業後、個人的には不安だったんですが、それを払拭したのが『わがまま 気のまま 愛のジョーク』。道重プラス後輩たち(9・10・11期)の新10人体制初シングル。2013年8月のことでした。道重さんのエフェクトボイスが曲にバチバチッとハマっていたのです。“モーニング娘。のEDMここに現れり”と思いました。

道重さんは歌が得意ではないかもしれないけれど、彼女の歌声はエフェクトされた時、とてつもない可愛いさを発揮するんです。ソロ曲『ラララのピピピ』『シャバダバ ドゥ〜』はまさにそうで、モーニング娘。がEDM路線に行けたのも、道重さんがいたからこそではないかと感じています。
 


 

―道重卒業とその後―

モーニング娘。が再び輝きを放っている真っ最中の2014年4月、道重さんは秋ツアーでの卒業を発表しました。同年11月、横浜アリーナで卒業公演。後輩たちにアリーナの景色を見せたかったと語っていたのが実に彼女らしかったです。ライブ中に足をつってしまい、本来のダンスはできませんでしたが、せり出したステージから駆け寄った現リーダー譜久村聖ちゃんとの歌唱は、今でも語り草となっています。

モーニング娘。になりたくて芸能界に入り、モーニング娘。が大好きで続けてきたから、卒業後はひとまずお休みをするということで、道重さんは長い芸能活動休止期間に入りました。
 


 

―道重再生までの日々―

メディアに出ないのはもちろん、SNSを全く更新しないどころか、他人のSNSにも登場しない…。ごくたまにメンバーや卒業生のブログで「道重さんに会った」とか「ご飯に行った」と書かれるのを見て、生存確認ができる程度。

そして約2年後の2016年10月、突然ブログを更新。「みなさん」というタイトルで「お久しぶりです。更新、、、してみた。」とたった2行の内容で、世間をおおいに騒がせ、ツイッターで「道重さゆみ」がトレンド入りしました。

その後、ブログで徐々に復帰公演が明らかになり、2017年3月、以前のレギュラー番組『ヤングタウン土曜日』でメディア復帰、『SAYUMINGLANDOLL~再生~』でステージ復帰となりました。ハロヲタの皆さんはご存知の通りですね。

お休みの間何をしていたのか聞かれると「ぼーっとしてました」と答える彼女ですが、決してそんなことはないと思います。美容に余念がなく、「どうやって復帰しよう、復帰公演で何をしよう…」と、ずっと考えていたのではないでしょうか?
 


 

―道重再生がいかにイレギュラーか―

モーニング娘。の卒業生は、安倍なつみさんのようにミュージカルを主戦場とした方や、辻希美さんのようにいわゆる“ママタレ”になる方、移籍した方や鈴木香音ちゃんのように引退した方もいて、それぞれ様々な道をたどっていますが、道重さゆみさんほど卒業後が話題になる方はいないのではないでしょうか? 復帰の仕方が新しく、追加公演が続々と決まるのも珍しいと思います。

芸能界は厳しい世界です。普通なら、2年も自己都合で休んでいた子が、ステージに立ちたいと言っても簡単なことではないし、まして何日も会場をおさえたり、新曲を書き下ろしたりするというのは、とてもイレギュラーなことだと思います。

『ヤングタウン土曜日』で明石家さんまさんが「新曲作るなんて、そんな甘やかしたらあかん」と言っていましたが(本当にそう思っているわけではないと思いますが)、そうさせるほど、道重さんが周りから信頼を集めていたことに他ならないと思うんです。
 


 

―道重完走からくる信頼―

モーニング娘。在籍中から、マネージャーやスタッフと人間関係を築き、はじめは女性に嫌われる女性だったのに、どんどんキャラを確立させ、トークを磨き、ファンを魅了させてきました。そして、卒業もとても計画的で、半年も前に言ってくれたから私たちファンは心の準備ができましたし、横浜アリーナをおさえられて、身体をボロボロにしながらも、ちゃんと完走しました。

きちんとやり遂げたことで、彼女の信頼は厚みを増しましたし、モーニング娘。そしてハロー!プロジェクトへの貢献度は計り知れないものがありました。
 


 

―道重再生に想う終わり方―

終わり方は、はじめ方より難しいものです。私も退社を経験しているのでよくわかります(自分と同じにするのはおこがましいですが)。よく「死に方は生き方を表している」といいます。もちろんアイドルの卒業は生死ではありませんが、それほど、終わり方は重要です。体調に関することだったり本人の意思に反して卒業せざるをえない場合もありますが、例えばスキャンダルで終わっていたら、こんな復帰の仕方は絶対にできません。

たとえば、「女優になりたいから卒業する」でも「一人でやってみたいから卒業する」でも、人それぞれですから良いんですが、やっぱり「アイドルになりたくてアイドルをやっていた」と思わせてほしいところはあります。だって、アイドルのあなたが好きだから。「女優になりたいから」「モデルになりたいから」だから「アイドルをやっていた」では、アイドルが踏み台になってしまう…。「アイドルもやりたいし女優もやりたい」もしくは「アイドルをやっている中で演技の面白さを知った」そんな表現をしてくれた方が救われるし、美しい終わり方になる気がします。

色んなアイドルがあって色んな事務所がありますから、希望通りの卒業の仕方ができるとは限りませんが、現代の「アイドル=いつか卒業するもの」という時代においては、常に終わり方を考えて行動する必要があります(私はアイドルは卒業しなきゃいけないとは思いませんが)。そのためには在籍中の貢献度が非常に重要になってきます。そうでないと、キレイな卒業を迎えるのが難しいからです。

事務所に信頼され、スタッフに愛され、ファンに求められたからこそ、やりたいことができた。それは彼女の終わり方が美しかったからに他ならないと思うのです。

「道重再生」は、アイドル卒業後の新しい道筋となるだけではなく、いかに美しく終わるかの手本になったと感じました。
 


 
■道重さゆみ再生公演『SAYUMINGLANDOLL~再生~』
【東京公演】 会場:COTTON CLUB 日程:2017.3.19(日)~4.16(日)
【大阪公演】 会場:STUDIO PARTITA 日程:2017.5.17(水)~5.21(日)

詳しくは公式サイトへ
 


 
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五戸美樹(ごのへ・みき)

生年月日:1986年4月9日
出身地:埼玉県
血液型:A型
 
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お茶の水女子大学文教育学部を卒業後、2009年にニッポン放送入社。アナウンサーとして「垣花正あなたとハッピー」中継レポーターや、ショウアップナイターなどの番組を担当し、2015年11月退職。2015年12月からエイベックス・マネジメント(株)に所属し、フリーアナウンサーとして活躍中。趣味はアイドル観賞(特にハロプロ)、野球・競馬観戦。特技はマラソン。

現在は番組出演・司会業とともに日刊スポーツでコラムを掲載するなど執筆活動も行う。
日刊スポーツ 公式サイト
また、アイドルやアーティストのトーク指導を担当するほか、エイベックス・アーティストアカデミーでも講師を務める。
 
 
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