PICK UP ACTRESS 高柳明音
PHOTO=草刈雅之 HAIR&MAKE=Kohey
STYLING=瓢子ちあき INTERVIEW=斉藤貴志
映画「ONLY SILVER FISH」に出演
過去に戻るために命がけのゲームに挑む
――SKE48の中心メンバーとして活躍中の高柳さんですが、もともと女優志望でしたっけ?
「アイドルが好きだったんですけど、SKE48に入ってから、いろいろな曲の主人公になって世界観を表現するのが楽しくなって、そこから『お芝居がしたい』という気持ちになりました」。
――音楽のパフォーマンスからだったんですね。今年は舞台出演が続いていますが、演技のやり甲斐は大きくなってきました?
「そうですね。舞台は生もので毎回いろいろ挑戦できますし、映画はみんなでイチからひとつのものを作るところにも、やり甲斐を感じます」。
――今までの女優活動で、一番大変だったのは?
「最初にSKE48でやったミュージカル『AKB49~恋愛禁止条例~』が一番大変でした。少しノドを痛めてしまったので。でも、楽しかったです。いろいろな監督さんと出会って、いろいろなお芝居の作り方があるのも知ったので、あれがあったから今があるとも思えます」。
――映画「ONLY SILVER FISH –WATER TANK OF MARY’S ROOM」は洋館に集められた男女たちが招待状の指令でゲームを繰り広げ、勝ち残った1人が過去に戻れるというサスペンスミステリー。演じるのは難しかったですか?
「役というより、物語を理解するのが難しかったです。みんなで『この言葉はどういう意味なんだろうね?』とか『この役とこの役の距離感は?』とか、一緒に考えることがありました。でも、“チョーカーの女”という役にはわりとスッと入れました」。
――1月に上演した舞台版と同じキャストですが、違うストーリーなんですよね。
「そういうコンセプトで、西田(大輔)監督がキャストに舞台で演じた人物と真逆の性格の役を割り当てました。なので、舞台で真面目な役をやった人が、映画ではおちゃらけた役だったりします。でも、私の役柄は舞台とわりと近かったので、逆にどういう違いがあるかを考えながらやりました」。
――現場に入る前の下準備は細かくするんですか?
「今回は舞台の稽古と映画の撮影がほぼ同時進行だったんですね。過去に私が出演させていただいた映画の現場では、場当たりをして、監督さんが『ここからここまで動いて』と指示して作ることが多かったのですが、今回は稽古場で軽くセットを組んで、カメラの位置も決めて『ここからこう撮るから、そこで抜けてほしい』とか、舞台のようにやっていきました。いきなり撮影に入るのではなく、みんなでちゃんと稽古してからだったので、初めての経験で勉強になりました」。
――チョーカーの女役についてはいろいろ考えました?
「その場の空気に乗ることが大きかったと思います。他のみんなは過去にいろいろあった設定でしたが、私の役はちょっと異質なんです。自分のためか誰かのためか、それぞれ消したい過去がある人たちが集まったけど、この子はそういう過去が特にあるというより、今の状況から抜け出したい。みんなとは違うスタンスなので、ある意味、巻き込まれた女の子だと思いました。だから、どんな役かを追求するより、どういう立ち位置でいるかを考えました」。
――出だしからいきなり、チョーカーの女がイライラしてました。
「台本を読んで『口の悪い女の子だな』と思いました(笑)。乱暴でいきなり机をバンと叩いたり、すべてに投げやりだったりするところを、稽古で特にやりました。子どもじみた感じには見えないようにも気をつけました。全部がどうでもいいわけではなくて、芯はある。意外とここに出てくる人間たちの中で、一番まともな神経を持っているんじゃないですかね?」。
――確かにそうかも。具体的にはどんなところに気を配って演じました?
「なるべく姿勢を良くしました。私は普段あまり姿勢が良いほうではないのですが、この子は芯が通っていることを表現したかったので、しっかりピンと立ちました。西田さんからは『ちょっと爪をいじって』とか『脚を組んでみて』とか、女の子らしい仕草を指示されました。今回出てくる女性が気の強い子が多かったりする中で、私が異彩を放つ感じになったと思います」。
――クライマックスではハッとする行動に出ました。
「今まで、ああいうことをしたりされたりする演技は経験がなかったので、新しい挑戦ができてうれしかったです」。
――ちなみに、高柳さん自身は戻りたい過去はありますか?
「映画の設定だと、一度戻ったら、元の自分には帰ってこられないんですよね? 戻った時代で生きていくことになれば、結局また同じ道を辿る気がします。私は『あれをきっかけに人生が狂った』ということはないので、過去に戻ってやり直したら、逆に全部なくなってしまうかもしれない怖さがあります」。
――だったら戻らないほうがいいと。
「戻って、また今に帰ってこられるなら、この世界に入る前の自分に『もっと特技や趣味を増やしておきなさい』と言いたいです。そうすれば、お仕事の幅がもっと広がるので。私は鳥はもともと飼っていましたけど、カメラはグループに入ってから始めたし、実は小学生のときにピアノを習っていたのに、続かなくてやめてしまったんです。もし今も続けていたら、コンサートで生かせていたな……と考えたりはします。でも、やり直したいとは思わないですね」。
――今が充実しているからでしょうね。
「今を否定するのは辛いから。『ああしていたら……。こうしていたら……』と考えることはあるし、いざ何かあったら戻れるなら戻りたいと思うかもしれない。でも今は現実を見て、もっと良い状況にすることを頑張っています」。
――この映画では、水槽にいる魚の本当の名前を呼ぶと過去に戻れることになっています。高柳さんといえば鳥ですが、魚に関しては何か思うところはありますか?
「私は小学生のときに生き物係をやっていたので、校内でメダカにエサをあげたり、ザリガニを育てたりしていました。家でも常にコオロギとか虫を飼っていて、自然と触れ合って生きてきたので、鳥がもちろんトップですけど、生き物は基本みんな好きです。魚は食べるのも好きです(笑)」。
――魚絡みの思い出もあります?
「おじいちゃんとお魚釣りに行くのが楽しみでした。最近は忙しくて行けていませんけど、今も釣りはしたいです。自分で釣った魚を家に持って帰って、おばあちゃんが料理してくれたのを食べるのが好きでした。完全に食べるほうの話になっちゃいましたね(笑)」。
ミステリーが好きになったし
コメディをやって殻を破りたい
――「ONLY SILVER FISH」は11月24日公開ですが、高柳さんの誕生日も近いですね。
「そうです。公開の5日後が誕生日です」。
――27歳ということで、区切りでもないでしょうけど。
「でも私が芸能界に入って10年目なので、区切りと言えば区切りですね。17歳だった子が、きれいに10コ年を取ったんだなって思います」。
――26歳と27歳という意味では、あまり変わらない?
「焦りはさらにありますね。一応アイドルをやっているので(笑)。10年前はアイドルを10年後も続けていられるとは思ってなかったし、続けていられる時代になっているとも考えてなかったから、思い描いていた未来とはだいぶ違って、戸惑いがあったりはします。かと言って、戻ってやり直したいとか、どこかで卒業しておけば良かったとも思いませんけど……」。
――今から10年後は、どうなっているか見渡せますか?
「まったく見渡せないですね。17歳のときに10年後のことを聞かれて『女優になって、いろいろな作品に出て、いろいろな自分を見つけて表現する人になっていたい』と答えていましたけど、今は実際、思い描いていた10年後を描き切れてないので、『次の10年後は?』となっても……。芸能界に残っていて、演技できていたらいいなとは思います」。
――誕生日といえば、ラジオで「ケーキはあまり好きじゃない」と話してました。
「そうなんですよ。サプライズのお祝いでケーキを出していただくと、上手に喜べないので申し訳ない気持ちになります。でも、お誕生日に何もないのも寂しいですし、素直にうれしいから、幸せを共有してほしくて、少し食べたあと『みんなも食べて』と言ってます」。
――では、誕生日には何を出してもらえるとうれしいですか?
「馬刺しが出てきたらうれしいですね。馬刺しにキャンドルを立ててくれたら、すごく喜びます(笑)」。
――なかなか見ないパターンですね(笑)。
「私、生肉が大好きなんです。ステーキは超レアで食べたいし、ハンバーグも中がミンチみたいな状態のを食べるのが好きです。火鍋も好きですけど、誕生日の現場には出ませんよね(笑)。NMB48と兼任していたときの生誕祭では、ケーキは劇場が汚れてしまうといけないから、我が家で飼っている鳥用のエサをくれたのが、めっちゃありがたかったです(笑)」。
――来月にはクリスマスもありますが、去年は松井玲奈さんとディズニーランドに行ったんですよね。SNSに上がって話題になりました。
「ああ、そっか。イブか当日でしたね」。
――今年はどう過ごしたいと?
「SKEの10周年の劇場公演で、聖なる夜に独り身のファンと独り身のメンバーが集まってミッドナイト公演をやりたいと話しました。1人でいるのが寂しいという感情はないですけど、お仕事があるに越したことはないので、やってみたいです(笑)」。
――アイドルさんだとクリスマスはヘンに疑われないように、「家族と過ごしました」とわざわざ証拠写真を上げる人もいるみたいです。
「私も昔は母ちゃんがチキンの照り焼きを作ってくれたりしたので、休みで名古屋にいられるなら、家族と過ごすのもいいと思います。家族が喜ぶなら、ケーキもサプライズで高いのを買って行ってあげたいです」。
――まあ、たぶん実際はクリスマスこそ仕事が入るんでしょうね。
「当日にクリスマスのイベントが入ることは、あまりないんですよ。劇場公演がたまたまイブだと、アンコールで1曲クリスマスソングを歌うくらいです。でも、クリスマスに街に出てもリア充の人たちでいっぱいで、良いこともないので、休みたい気持ちはないですね(笑)。クリスマスと関係なく、お休みをもらえるなら、今は一人旅をするのがすごく好きなので、どこかに行きたいです」。
――横浜とかに行ったんでしたっけ?
「中華街に1人で行ったり、この前は岐阜県の長良川のほうに行って、1人で温泉に入ったりアユを食べたりしました。海外にも行きたいんですけど、1人では経験がないので、松井玲奈さんと『時間ができたら台湾に行こうね』と約束しています」。
――けど、基本は一人旅派だと。
「もともとは1人でいるのが苦手で、いつも親に『1人でいると寂しそうに見えるから誰かと一緒にいないとダメ』と言われてきました。でも、SKEの活動が長くなり仲の良い子がどんどん卒業したことで、仲間がいても寂しかったのが、慣れたらむしろ楽だと気づいたんです。カラオケで同じ曲をもう1回歌いたくても『また歌うの?』と思われたらイヤだし、アニソンばかり歌って『知らないからテンションが上がらない』と思われたくもないので、いつも1人でカラオケに行きます。お買い物でも『このお店にもう1回戻ってきたい』というとき、1人だと気軽に戻れます」。
――では、ちょっと早いですけど、来年は女優としてはどんなところを目指していきますか?
「今、名古屋で映画を紹介する番組をやらせていただいているんです。前は映画を観ることはあっても、『映画館に行かなきゃ』と思うことはあまりありませんでした。でも、番組で映画好きの人たちに囲まれて、映画の良さをたくさん聞いているうちに観たい気持ちになって、いろいろ観ていたら『こういう作品に参加したい』と思うようになりました。『カメラを止めるな!』とか、すごく面白かったです。だから来年は、映画にたくさん出たいです」。
――どんな系統の映画に出てみたいですか?
「面白いのはあまりやったことがないので、コメディ系に出てみたいです。佐藤二朗さんが出てくるような福田組の作品は、楽しそうだし殻が破れそうなので、すごく憧れます。でも、『ONLY SILVER FISH』をやったことで、ミステリーも好きになりました。そういう映画も『あの最後のどんでん返しがいいよ』とか、いろいろ教えてもらってます。もともと謎解き系は好きなので、また出てみたいですね。あと、今はマンガやアニメが原作の映画も多いので、自分の好きな作品に出られるようになりたいです」。
――このマンガのこのキャラクターをやりたいとか、ありますか?
「『スラムダンク』が映画化されるなら、マネージャーの彩子をやりたいです。バスケットボールにハマっていることもありますけど、私の通っていた学校に男子バスケ部がなかったんですよ。それこそ過去に戻れるなら、バスケに青春をかけて一生懸命頑張っている男子をサポートするマネージャーになりたいです(笑)。それを映画でやるのが夢です」。
高柳明音(たかやなぎ・あかね)
生年月日:1991年11月29日(26歳)
出身地:愛知県
血液型:B型
【CHECK IT】
2009年にSKE48の第2期メンバーオーディションに合格。選抜制になった2nd以降の全シングルで選抜入り。2014年には映画「俺たちの明日」に出演し、個人で女優活動に進出。これまでの主な出演作は映画「浄霊探偵」、ドラマ「豆腐プロレス」(テレビ朝日)、「ショクバの王子様」(東海テレビ)、「金の殿~バック・トゥ・ザ・NAGOYA~」(CBC)、「名駅1丁目1番1号~人と、幸せを、つなぐ場所。~」(中京テレビ)、舞台「ライブミュージカル『プリパラ』み~んなにとどけ!プリズム☆ボイス」、「ReLIFE」、「斬劇『戦国BASARA』第六天魔王」、「若様組まいる~若様とロマン~」など。「映画MANIA」(東海テレビ/木曜25:00~)に出演中。「高柳明音の生まれてこの方」(ラジオ日本/土曜25:30~)でパーソナリティを務める。映画「ONLY SILVER FISH –WATER TANK OF MARY’S ROOM」は11月24日(土)よりシネ・リーブル池袋にて公開ほか、全国順次公開。
詳しい情報は公式HPへ
「ONLY SILVER FISH -WATER TANK OF MARY’S ROOM」
原作・脚本・監督/西田大輔 配給/ベストブレーン
詳しい情報は「ONLY SILVER FISH -WATER TANK OF MARY’S ROOM」公式HPへ
(c)2018「ONLY SILVER FISH」製作委員会