PICK UP ACTRESS 荒川ちか

PICK UP ACTRESS 荒川ちか

PHOTO=厚地健太郎 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

帰ってきたカルトムービーに
やさぐれたヒロイン役で出演

 
 

――去年は受験のため仕事をセーブしていたそうですが、受験勉強は大変でした?

「自分で言うのも恥ずかしいですけど、頑張ったら初めて学年1位を取っちゃいました」。

――それはすごい!

「勉強は嫌いですけど、子どもの頃からずっと台本を覚えてきたせいか、暗記は得意なんです。でも志望校の試験内容が変わっていて、勉強以外に考えなきゃいけないことがたくさんありました」。

――そんな中で、アニメは相変わらず観まくってますか?

「最近は全然観られてないです。観るのは『犬夜叉』とか昔のばかりで、最近のアニメにはついていけません。そのせいか、好きな昔のアニメを何度も観直すクセがつきました。『PSYCHO-PASS』は1期22話、2期11話、劇場版と通しで5回くらい観て、受験勉強中にも2回、回しました」。

――以前は放送中の全アニメを録画して、1.3倍速で観ていたんですよね。

「寂しいけど、もうそんな時間はなくなりました。でも、観られなかったアニメでも観たいのはいっぱいあるから、熱が冷めたわけではないんです。ただ、今は観るのが昔のアニメに戻っていて、最近まで『鋼の錬金術師』の原作通りではないほうを観てました。『FULLMETAL ALCHEMIST』が付いてないほうですね。原作も好きですけど、原作と違うダーク過ぎる感じもめっちゃ良かったです」。


――最近のヲタ活はそんな感じで。

「そうですね。あと、最近はヲタ活といえばアイドルなんです。といっても、BiSHだけ。もう1年追ってます」。

――現場にも行って?

「めっちゃ行ってます! BiSHの現場に行けば、だいたいぼくに会えるレベルです。女の子で一番ガチで打ってる人が、たぶんぼく(笑)」。

――特典会にも参加してるんですか?

「握手会とチェキ会に行きました。アユニちゃん推しです!」。

――話は変わりますが、「星くず兄弟の新たな伝説」はいつ撮ったんですか?

「3年前の年末にクランクインしました。完成したのを東京国際映画祭で初めて観てからも1年以上経ちますね」。

――じゃあ、撮っていたときのことはあまり覚えてなかったり?

「そうですね。でも、トークショーで皆さんとしゃべっていたりして、断片的に『こんなことやったな』とか思い出したことはあります。最初のシーンを撮った頃は学校のテスト前で、いろいろな人に世界史の問題を出してもらってたな……とか。ちょっと思い出に浸りました(笑)」。

――1985年に公開された伝説的カルトムービーの新編ということですが、撮っていて風変りな映画だと感じてました?

「風変りというか、オーディションを受ける前に台本をもらった瞬間から、『これはヤバい映画だ』と思いました(笑)。自分が演じるウサコもヤバい台詞しかないし……。でも、完成した映画を観たら、全然ひどくなかったです。台本は本当にハチャメチャで、『どうやってまとめるんだろう?』とずっと思っていたんですけど、ちゃんと収まっているので、終わり良ければすべて良しだなと思いました」。

――とはいえ、だいぶヤバい映画ではありました。

「主人公の性別が急に変わるし(笑)、ウサコもいつの間にか所属が変わって、その間に何があったのかわからないし……。死んだ人が生き返って、みんなで歌ったり、破天荒な感じでしたよね」。


――オーディションではどんなことをやったんですか?

「演技と歌、そして、手塚(眞)監督といろいろ話をするなど、普通でした。でも、オーディションのときに『ぼくはこれをやるな』と思いました。手塚監督とすごく波長が合う感じがしたから」。

――何かの話で盛り上がったとか?

「ぼくが高校生バンドにハマっていたときで、その話をずっとしていて、『そういうコアなところも好きなんだね』と言われました。手塚監督の周りにはミュージシャンが多いんですよ。そういうところも合ったのかもしれません」。

――そして、ウサコは強烈な登場の仕方をします。

「あの子、強烈な台詞を吐きますよね(笑)」。

――家で練習するのもはばかられるような(笑)?

「確かに。でも、ぼくはそれこそBiSHが好きだったり、下ネタを恥ずかしがって言うタイプじゃないから。最初は『家帰ってマスでもかいてろ!』とか、意味がわからなかったんですよ。『何だろう?』って調べたら『これ、調べちゃいけないワードじゃん!』と思って、すぐ検索履歴から消しました(笑)。でも、振り切ってやったほうがいいし、普段言えないことを合法的に言えるのは楽しいです(笑)」。

――主人公のスターダスト・ブラザーズとののしり合うところは、ブスッとしつつ演技的には楽しかったと。

「テンポがいい掛け合いはだいたい好きなんですよ。だから、あそこは楽しかったです。言葉はちょっとひど過ぎますけど(笑)」。

――あそこのウサコはやさぐれ風でしたが、自分の中でキャラ設定はありました?

「ウサコは乙女なんです。ちょっと男まさりだけど、実は乙女な子って、よくいるじゃないですか。そういう感じですね。恋をするとどんどん変わる典型的なタイプで、そんなところを徐々に見せていけたら……というのはありました」。


――どんな感じで乙女を出そうと?

「相手が気になる感じを見せたり、歌うシーンも恋愛の曲だったから、ウサコの心情と重ねてピッタリくればいいなと思いました」。

――やさぐれたところから乙女なところまで見せたわけですね。

「最初のところのほうが工夫しやすさはありました。乙女になるといろいろ気にするじゃないですか。『好きな人の前だったら、こういう行動はしないだろうな』とか考えると、どんどん制限がかかってくる。でも、最初のところは何の制限もなかったから、いろいろできて、『よし、ここでやっておこう!』みたいな感じでした」。

――「いろいろ」というのは、どんな試みを?

「その辺は全然覚えてません(笑)。ただ、手塚監督は演技に対してあまり口を出さないんです。『自分で考えてみて』という感じでした。その中では、ぼくはちょっと言われたほうかな。『もっと悪びれていいよ』とか『それはやりすぎ』とか……」。

――やりすぎくらいやったこともあったと。

「たぶんペッてやるところが汚なすぎたとか(笑)、そういうことだったと思います」。

 
 

ヘンな役をやることが多かったので
さらに非現実的な役をやりたいです

 
 
――ステージで歌うシーンも見どころですね。

「歌も踊りも得意ではないので、すごく緊張しました。それに、あそこは全部通しで撮ったから、『途中で失敗したら、そのまま使われちゃうの?』という不安もありました。しかも、自分の撮影が終わった武田航平さんが、後ろのほうで勝手に客として観ていたんです。映画をよく観ると、私服でノリノリになっているところが映ってます(笑)。恥ずかしくて『観ないで~』と思いながら歌ってました」。

――そこまで気になりました?

「ぼくって面白いタイプで、知らない人たちの前では何も気にせず何でもできるのに、学校で前に出て何かを読むとなると、緊張して脚が子鹿になるんです。ブルブル震えてしまって。みんなに『ちかって、そういうところは意外』と言われます」。

――小さい頃から人前に出る仕事をしてきたのに。

「そうなんですよね。だから、知ってる人に見られていると緊張します」。


――でも、乙女新党での経験が生きたシーンだったでしょうね。

「それは完全にありました。見せ方として『この振りのあとはこうしたほうがいい』とか自分で考えられたし、振りを覚えるのは得意なので」。

――今もカラオケには行ってますか?

「めっちゃ行きます。BiSHの曲とバンド系と、あとは秦基博さんとかそっち系を歌って終わります。17歳の誕生日のあと、BiSHの『本当本気』という曲があって『まだseventeen’S OK?』というところが言えなくなる前に……って、友だちを誘って歌いに行きました」。

――映画の酒場での乱闘シーンでは、だいぶ暴れてましたね(笑)。

「あれは楽しかったですよ~(笑)。蹴りまくって、殴りまくって、みたいな感じで。殴るのに使った酒ビンがスタント用で、パンと叩いただけでバンと割れるようなものなんですね。でも、ぼくは不器用だから、持った瞬間にどこかにぶつけて何本か割ってしまって……。スタントのスタッフさんが『ヤクザガール(二代目は10歳)』のときと同じ方で、『ちか、頼むよ~。これ結構高いんだから……』と言われて『スイマセン!』みたいな感じでした(笑)」。

――「ヤクザガール」というと、ちかさんが小学5年生の頃に撮った映画ですね。

「そうなんです。あと、小1か小2のときに撮った『パーク アンド ラブホテル』の助監督さんも、今回また助監督で入っていて、みんなに『ちか、大きくなったね』『成長したね』と言われました。ちょっと気恥ずかしかったけど、うれしい感じでした。今回の現場でもぼくより年下の人がほとんどいなくて、皆さんに娘か孫のようにかわいがっていただきました」。

――DER ZIBETのISSAYさんに頬っぺたを引っ張られるシーンがありました。台本にあったんですか?

「あれは確か書いてなかったんじゃないかな。現場で手塚監督が『頬っぺたを引っ張ったりしたら面白いよね』と言って、私がISSAYさんに『ガンガンやっちゃってください!』と言ったと思います」。

――撮影がだいぶ前だっただけに、公開は待ち遠しかった感じですか?

「そうですね。自分で映像を観ると若いんですよ。まだ中学生みたいな顔をしていて、高1から高3って、すごく変わるんだと思いました。髪もだいぶ伸びたし、多分痩せたし……。18歳になって、実際はそんなに変わってないのかもしれないけど、気持ち的にちょっと大人になった分、16歳の自分を見ると幼く感じますね」。


――もうすぐ高校も卒業ですもんね。

「みんなが『制服が着られなくなるのが悲しい』と言っていたのが、すごくわかります。ディズニーランドとかに行くと、いくら制服を着て黒髪で幼く見えても『この人は本当の高校生じゃない』というのは絶対わかるんですよ。ぼくが大学生になって制服を着ても、多分そうなるから、『高校生の間にセーラー服を着ておかなきゃ!』と思ってます。趣味で写真を撮る友だちが増えているので、いっぱい撮ってもらっています」。

――大学生になったら、また仕事もバンバンやっていくんですか?

「作品を創るほうも考えているんですよね。『星くず兄弟~』を撮影した高1のときも自分で映像作品を撮って、手塚監督に見せて『どうすればいいですか?』と相談していたので。知り合いに松本花奈ちゃんという大学生の映画監督がいて、もともと『戦慄迷宮3D(THE SHOCK LABYRINTH)』という映画に一緒に出ていたんですけど、今はHKT48のMVも撮ったり精力的に活動しているんですね。彼女とも話していて、『ぼくも何か撮って(コンテストに)出したほうがいいかな』というのは思ってます」。

――女優のちかさんを好きなファンの方には微妙かも。

「じゃあ、『ぼくが撮った映画の上映会に来てください』みたいな感じにするかも(笑)。あと、自分がやりたい役を自分で作りたい気持ちも強いんです。それが一番手っ取り早くないですか? 誰かに『ずっとこういう役をやりたいと思っているんです』と言っても、実際そういう役が来ることはめったにないから。だったら、自分で監督したほうが良いじゃないですか。ただ、自分のお芝居を客観的に見られなくて、他の人に指摘されないとダメなところもあるんですけどね」。


――その「やりたい役」が具体的にあるんですか?

「まだそこまで考えてません。でも、自分と似た感じの引きこもりとか、やってみたいですね(笑)。今までヘンな役が多かったんですよ。今回の『星くず兄弟~』のウサコもヘンですけど、妖精役だったり幽霊役だったり、織田信長(の幼少期)をやったのも考えたら面白いですよね(笑)。そういう非現実的な役をやってきたから、さらに非現実的なものをやりたい、というのはあります」。

 
 


 
 

荒川ちか(あらかわ・ちか)

生年月日:1999年7月29日(18歳)
出身地:神奈川県
血液型:A型

 
【CHECK IT】
2003年に「ACジャパン」のCMに出演して、子役としてデビュー。2011年に日本公開のロシア映画「ヤクザガール 二代目は10歳」に主演。これまでの主な出演作は映画「東京家族」、「夏ノ日、君ノ声」、ドラマ「幽かな彼女」(関西テレビ・フジテレビ系)、「明日の光をつかめ-2013 夏-」(東海テレビ・フジテレビ系)、「私の父はチャンポンマン」(NHK BSプレミアム)など。映画「星くず兄弟の新たな伝説」は1月20日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー。
詳しい情報は公式HP
 
 

「星くず兄弟の新たな伝説」

監督:手塚眞 脚本・手塚眞、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、原案:近田春夫

詳しい情報は公式HP
 

 

 

(C)2016 星くず兄弟プロジェクト

 
 

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