PICK UP ACTRESS 萩原みのり
PHOTO=草刈雅之 HAIR&MAKE=長坂賢
STYLING=清水美樹 INTERVIEW=斉藤貴志
共同生活中の3人を描く「転がるビー玉」で
恋愛も仕事もうまくいかず悩む役をリアルに
――年末年始はどう過ごしたんですか?
「実家に帰りました。いとこが集まって、おじいちゃんが“今日飲むお酒”みたいなのを一升瓶でドーンと置いたのを、みんなで飲んでました」。
――共同生活する3人の女の子を描いた映画「転がるビー玉」で、みのりさんは雑誌編集者の瑞穂役。2395人の応募があったオーディションで、「素晴らしかった」と宇賀那健一監督のコメントにありました。どのシーンをやったんですか?
「愛が最後に感情を一番出すところです。あのシーンで3人の役をやりました」。
――自分でも瑞穂をやりたい度合いは強かったんですか?
「ツイッターに流れてきた募集情報を読んで、初めて自分から『応募したい』と、マネージャーさんにお話した作品です」。
――みのりさんはこの作品について、「悩んできたことを肯定された」とコメントしてました。
「目標が定まらない。昨日はイエスだと思ったことが今日はノーになっている。人からもらった言葉で考え方がコロコロ変わる……。自分は年齢的にそんな頃だと思っていて。刺激を受けやすくて、それによって自分がどこを向いているかもわからなくなる。どっちに進むのが正しいのか? どっちも正しく見えて迷ってしまう。そんな感覚はみんなにあるんだと、台本を読んで思いました。悩んでいること自体が間違ってはいないと、肯定された感じがすごくしたんです」。
――瑞穂にとっては、彼女がいる啓介を好きなことが、一番の悩みどころのようですが、そういう状況のきつさもわかりました?
「啓介のことが一番大きいというより、何もかもうまくいかない中のひとつかと思いましたけど、彼女がいる人の家に行く感覚は、さすがにわかりません。でも、相手に彼女がいて『じゃあ、好きじゃない』となったら、もともと好きではなかったということだから、瑞穂の気持ち自体は理解できます」。
――居酒屋で啓介に抱きつかれたりしながら、「大嫌い」と涙になるところは、瑞穂のやるせなさが伝わって胸が震えました。ああいうシーンでいつも、みのりさんの演技が深く刺さるのは何なんでしょうね? 何か計算しているわけではないんでしょうけど(笑)。
「計算なんて、聞こえが悪いじゃないですか(笑)。かと言って、何も計算してないと言ったら、お芝居をしてないみたいにもなっちゃいますけど、カメラの前で嘘はついていません。泣けないなら、泣かない。気持ちが溢れてこなければ、泣こうともしません」。
――逆に言えば、泣いてるシーンは本当の心情で涙を流していると。
「そうですね。あの居酒屋のシーンは、1カット長回しだったんです。しかも、撮ったのは朝イチ。啓介役の笠松(将)さんに『初めまして。よろしくお願いします』と言って、もう撮り始めました」。
――会っていきなり、あの修羅場だったわけですか。
「それを長回しで撮るとメイク中に言われて、私は『ムリムリムリ!!』と床を転げ回りました(笑)。もともと、あのシーンを撮る日が来るのが、ずっと怖かったんです。この映画の中で瑞穂の核になる部分だから、すごくプレッシャーがあって。そんな大事なシーンを長回しで撮るなんて聞いてない! もうパニックでした。でも実際、一連で撮ったからこそ、気持ちが全部繋がってできた、というのがありました」。
幸せなはずなのに悲しげな表情が
したつもりはないけど出てました
――映画で観ると、わかる気がします。
「啓介の肩に噛みつくところまでが、ずっと自分の中で何か追い付いてなくて。私は人生で人に噛みつきたくなったことはないし、しかも居酒屋でなんて……。そんな私の迷いに監督も気づいたのか、本番前にフラッと来て話をされました。瑞穂は啓介の家に行っても、煙草の吸殻まで片付けさせられる。彼女の物はあっても、瑞穂の物は全部持ち帰らされて何もない。何か少しでも啓介の中に残したくて、噛んだ跡をつけようとする。『そんな気持ちで噛んで』と言われて、やっと繋がった感じがしました。本番は覚えてないくらいすぐ終わって、OKが出て、一瞬の出来事のようでした」。
――それこそ泣いたのも自然に?
「台本であそこで泣くことになっていたから、気持ちを持って行こうとは思ってました。でも、笠松さんもお芝居という感じがしなかったんです。私が何か言うと小さく相槌を打って、ちゃんと聞いてくれる。受け止めてくれるやさしさがあるほど、つらくなる。他の役者さんと初めましてであのお芝居だったら、怖い部分もあったと思いますけど、笠松さんとは最初から瑞穂と啓介になれて、助かりました」。
――今出た、啓介の家のベランダで煙草を吸って、吸殻のことを言われたときの「わかってます」と答える瑞穂の複雑な表情も印象的でした。
「自分で観て面白かったのは、啓介に腕枕されて2人の顔がアップになったとき、瑞穂は幸せなはずなのに、笑っていても嬉しそうではなくて。どこか悲しげで、自分ではそんな表情をしたつもりはなかったのに……と思いました」。
――意識してないところまで、瑞穂になっていたんでしょうね。みのりさん目線だと、彼女がいても瑞穂にやさしいことを言う啓介は、どう思いました?
「彼女といるときにバッタリ会って、『うち寄ってきますか?』みたいな発言はどうかと思いました(笑)。できることなら、ああいう人は好きになりたくないですね。たぶん振り回されるから」。
――瑞穂もクラブで愛(吉川愛)をナンパしてきた男をいなしたり、それなりに遊び慣れてはいるんですかね?
「慣れてはいないと思います。慣れていたら、後で落ち込んだりしないだろうし。自暴自棄というか、自分にイライラして『何をやっているんだろう?』と思いながら、発散の仕方がわからない。意志があるようで、ないみたいな感じがしました」。
――酔って家に帰ってきて、「自傷行為」と称して、さらに冷蔵庫からビールを取り出したりもしていました。
「私は友だちと楽しく飲みますけど、瑞穂はイライラしながら飲んで、ベロベロになっていて。人に強く当たることで、甘えが出ている子だと思いました。私は強く当たって友だちがいなくなってしまうほうが怖くて、思っていることを言えない愛のほうに共感するかもしれません。瑞穂と自分が似ているのは、根っこに持っている部分くらいですかね」。
――スイカ割りとか花火とか、3人のシーンはほぼアドリブだったそうですね。
「その場で何回かアドリブで動いて、『今のここを活かして』みたいなことをしながら、シーンを作っていきました。停電で真っ暗になったのに恵梨香がギターを弾いたのも、ずーみん(今泉佑唯)のアドリブで、2人がどんどん自由にふざけていくんですよ(笑)。私がそれを『もうわかったから』って回収して、本筋に戻していかないといけなくて、『これが映画になるのかな?』って、完成したのを観るまで、ずっと不安でした(笑)」。
――でも映画を観ると、ルームシェアしている雰囲気が自然に出ていました。
「スチール撮影で2人と会って、そのあとにクランクインしてから、最初の数日間は家のシーンだったので、現場でのそれぞれの居方みたいなものは掴んだ気がします。愛ちゃんに初めて挨拶したときは緊張したし、ずーみんは自分が作ったオリジナルソングを延々と歌っているから、どうしようかと思いましたけど(笑)、監督も3人の空気で伸び伸びとやる場を作ってくださいました」。
――冬場の公開となりましたが、みのりさんは好きな季節ですか?
「夏よりも冬のほうが好きです。人との距離が近くなる感じがするので。夏は人混みとか本当にイヤですけど、冬は友だちとギューギューくっついて歩いたりできるから、楽しくてハッピーな感じがします」。
萩原みのり(はぎわら・みのり)
生年月日:1997年3月6日(22歳)
出身地:愛知県
血液型:B型
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2013年にドラマ「放課後グルーヴ」(TBS系)で女優デビュー。主な出演作はドラマ「表参道高校合唱部!」(TBS系)、「I”s(アイズ)」(BSスカパー!)、映画「64 -ロクヨン-前編・後編」、「何者」、「昼顔」、「ハローグッバイ」、「お嬢ちゃん」など。映画「転がるビー玉」は1月31日(金)よりホワイト シネクイントにて先行公開、2月7日(金)より全国順次ロードショー。「サーティセブンセカンズ」が2月7日(金)より、「街の上で」が5月1日(金)より公開。
詳しい情報は公式HPへ
「転がるビー玉」
配給:パルコ
詳しい情報は「転がるビー玉」公式HPへ
©映画『転がるビー玉』製作委員会
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