PICK UP ACTRESS 原菜乃華
PHOTO=城方雅孝 INTERVIEW=斉藤貴志
自分と重なる初主演映画
「はらはらなのか。」が公開
――「おはスタ」のおはガールは、新年度も継続となりました。
「1年で卒業するものだと思っていたので、続行と聞いて『おーっ!』となりました。最初の頃に比べたら、だいぶ朝に慣れましたね」。
――初めの頃は「目覚ましを三つかけても起きられない」とのことでしたが……。
「今は目覚ましが1コあれば大丈夫です(笑)」。
――中学1年目の思い出は?
「最初の頃、お仕事がたくさんあって、中間試験や期末試験の前に、休んでいた分のノートを友だちが貸してくれました。文化祭は本当はダンスを踊りたかったんですけど、お仕事が入るかもしれないから裏方をやったんですね。でも、それが意外と面白くて。みんなが踊る背景の絵を描いて、『来年も裏方をやろうかな』と思いました」。
――初主演映画「はらはらなのか。」が公開されますが、主人公の原ナノカは原菜乃華さんと重なる役でしたか?
「実際の自分とは違いますけど共通点も多くて、自分で自分を演じるような不思議な感じでした。子役から女優を目指しているところは、すごく自分と重なりますね」。
――ただ、ナノカは冴えない子役。菜乃華さんは「朝が来る」でも“天才子役”と称賛されました。
「いやー、全然。まだ自分のお芝居に納得できませんし、今回も最初に“主演”と聞いたときは『私なんかにできるのかな……』って、本当に不安でした」。
――ナノカ同様、オーディションに受からなかった時期も?
「小さい頃は本当に全然受かりませんでした。毎回いいところまで行って結局ダメ……という繰り返しで、すごく悩んだ時期がありました」。
――そうだったんですか。
「映画のオーディションのシーンはリアルだなと思いました。何人かで1列に並んで、1人1人お芝居をしていって。『小さい頃、こういうのをたくさん受けたな』と思い出しました」。
――他の人がどんなお芝居をするかは、気になりますよね?
「気になるし、うまい人がいると焦ります。私は家で『こうかな?』というのを作ってきちゃって、審査員の方に『もっとこうして』と言われても、切り替えられなかったんです。だから頭を柔らかくして、いろいろなパターンをできるようにしました」。
――菜乃華さんの性格はナノカと違って、ポジティブなのでは?
「いや、ネガティブです。あまり良い方向に考えられなくて、オーディション後も毎回、『なんであんなことをやっちゃったんだろう……』と落ち込みます」。
――オーディションについては、いろいろなタレントさんから「自分でうまくできたと思ったときは落ちて、ダメだと思ったときに受かる」という話を聞きます。
「そうなんです! 『いい感じかな?』と思ったら、だいたい落ちて、『ああ、ダメだった……』と思ったオーディションは、なぜか受かるんです。『朝が来る』のときも『絶対ダメだ』と思いました。最終審査で『最後に何か言いたいことがあれば』と聞かれて、言いたいことがすごくたくさんあったんです。『この役をどうしてもやりたいんです!』とお伝えしたかったんですけど、気持ちが先走りすぎて、うまくまとめられなくて、『しっかりしてない子だと思われちゃったな……』という。そしたら受かったので、うれしかったです」。
――「はらはらなのか。」の劇中にあった「お芝居は結局ウソじゃないか?」という問題は、実際に考えたことはありますか?
「そこまで考えたことはないです。でも、ナノカのお芝居に対する悩みや気持ちの変化は、私も経験しています。『ちゃんとお仕事として、お芝居を頑張りたい』と思うようになってきたり」。
――今回“演技について悩む役”を演じることで悩んだ部分はありました? 逆に、自分と重ねて自然にできたとか?
「自分と似ているところがある点はやりやすかったんですけど、やっぱりナノカは役なので。ちゃんとお芝居として表現しなきゃいけないのは、難しかったです。撮影期間中は最後までずっと『これでいいのかな?』と悩みながら演じていました」。
――どれぐらいの期間で撮ったんですか?
「2週間くらいで一気にバーッと撮りました。間が空かなくて、作品のことだけを考えて集中できたのは良かったです。台本を常に持ち歩いていました」。
――酒井麻衣監督のコメントによれば、「ラストシーンを現場で変えて、その日から菜乃華ちゃんの演技も変わっていきました」とのことですが……。
「最初、監督さんからラストシーンは『2パターン撮りましょう』と言われてました。その最初のパターンでやったお芝居が自分ですごく納得いって、周りのスタッフさんも『これで大丈夫じゃない?』と言ってくれて。監督さんも『すごく良かったから、これでOKにします』ということにしてくださったんです。モニターで確認して達成感があって、うれしくて泣いちゃいました。ラストシーンには不安があったから」。
――それで、その後の演技も変わったんですか?
「ラストシーンを撮ったのが2日目だったんです。撮影に入る前や初日は正直、原ナノカ役があまりつかめてなくて。最初は手探りだったんですけど、ラストシーンを撮って何となく『こんな感じ?』となって、だんだんパッとOKが出るようになりました」。
撮ってる最中のことは全然覚えてなくて
もう1回はできないくらい集中しました
――菜乃華さんは公式プロフィールで特技が“泣く演技”となっていて、今回の涙を流すシーンもグッときました。亡くなったお母さんが好きだったというジャムを食べるシーンとか、クライマックスのところとか。ああいう涙は、自然な感情の流れで出たんですか?
「最後のほうのシーンで泣いたときは、撮っている間のことは全然覚えてないんです。ただ、『OKです』と言われて終わったときに、『フーッ……』みたいに脱力しました。『このお芝居をもう1回やるように言われても、できないな』と思うくらい、集中してました」。
――逆に言えば、集中していれば、そんなお芝居もできると。やっぱり菜乃華さんは天才子役な感じがします。
「いや、そんなことは本当に全然なくて。自分のお芝居はまだまだだし、頑張りたいです。さっきのオーディションの話のように、言われたことに対応できるようにしようと思っているんですけど、難しくて。心配性というか、自分のなかで『こうする』と考えておかないと気が済まないタイプで、どうしても決めつけちゃうので。それは良くないと思って、直すようにしています」。
――自分では特に好きなシーンとか、ありますか?
「最初のミュージカルのシーンはすごく観てほしいです。かわいい衣裳を着て、曲が流れて踊って。自分たちでやっていても楽しかったし、試写で観て素敵なシーンになったと思いました」。
――ああいうミュージカル的なことは、やったことはあったんでしたっけ?
「ないですね。映画のなかで踊ったことが1回あるぐらい。歌をあんなに長く1人で唄うのも久しぶりだったので、すごく緊張しました。撮る直前までずっと練習して、私が踊りを間違えてやり直したり、カメラマンさんが角度を変えたりでたくさん撮ったんですけど、本番が始まってからは思い切り楽しんでやりました」。
――喫茶店のお姉さん役の松井玲奈さんは、役柄通りのやさしい方でした?
「そうですね。劇中のナノカとリナさんの関係と同じように、すごくやさしく話し掛けてくださいました。現場で会うたびに仲良く接してくださって、松井さんの好きな趣味の話を聞かせてくださったり」。
――鉄道の話とか?
「自分の推しているアイドルの生ハムと焼うどんのお話をしてくれました。現場の照明さんも好きで、2人で語ってくださって。私も動画を観て『面白いですね』と言ってました」。
――劇中では、ナノカの“もう1人の自分”も演じました。
「ナノカと変化をつけないといけなくて、本番に入る前に稽古をしていたときは、原ナノカのキャラクターはわりとすんなり決まったんですけど、もう1人の“透明ナノカ”のほうは全然決まらなくて。『こういうお芝居のほうがいいかな?』とか、監督さんとも相談しました」。
――結果的に、出来上がったイメージは……。
「一見フワフワしていて、何も考えてなさそうですけど、本当はナノカを見守っていて、心のなかをわかっている理解者。そんな感じで演じました」。
――菜乃華さん自身は、もう1人の自分と会話するような感覚はありますか?
「小さいときは、そういう自分がいました。アイドルごっことかして遊んでましたね」。
――映画でも、そういう台詞がありました。
「酒井監督といろいろ話して、それが台本に出ていたので、『私と同じだ』と思いました」。
――本当に良い作品になりましたが、自分でも何回も観たい感じ?
「DVDをいただいたので、もう2~3回観てます。私が出ているところ以外にも、笑えるシーンや面白いシーンがたくさんあるので、巻き戻しちゃいます(笑)。(吉田)凜音ちゃんが歌っているところはカッコ良くて素敵だし、劇団員の皆さんが歌に乗せて自己紹介するシーンは、私が笑ってしまって何回もNGを出しちゃいました(笑)」。
――この映画が公開されたら、菜乃華さんの演技はますます評判になると思います。それこそ子役から女優への階段をまた一歩上るでしょうけど、同時に菜乃華さんは天才子役的な前提で見られるからハードルも上がる。そういう意味での葛藤はありますか?
「今、『3月のライオン』も公開されて、『良かったよ』とたくさん言っていただいて、すごくうれしいです。その分、『じゃあ、次はもっと上のものを出さないといけないな』という不安もあります。『3月のライオン』の役は自分に合うらしくて、やりやすかったんですけど、そういう役じゃないときでも、ちゃんとお芝居しないといけないし。次はもっと、その次はもっと……って一生懸命やっていかなきゃいけないから、良いプレッシャーもかかるし、考えすぎて悪いプレッシャーにもなってます。でも、『はらはらなのか。』に出て本気で女優さんになっていきいと思ったので、頑張りたいです」。
――最後に、最近“はらはら”したことってありますか?
「電車に乗り遅れたり、乗る時間を間違えたり、電車系が多いです。アプリで検索して時間を調べて乗るんですけど、大切なお仕事の日に、最寄り駅と間違えて、ひとつ次の駅で検索しちゃって。いざ駅に行ってみたら『あれ? この時間の電車がない……』と思って、よく見たら、『この駅じゃない!』という(笑)」。
――何分かの差なんでしょうけど。
「その何分かが命取りで、冷や汗をかきました。私、いつも驚いたらフリーズしちゃって、お母さんとお父さんに『助けて!』と連絡しました。『何やってるの? とりあえず次の電車を待ちなさい』と言われて『はい……』となりました(笑)」。
――お母さんたちも「助けて」と訴えられても、そう言うしかないですよね(笑)。よくあることなんですか?
「電車は最近慣れてきましたけど、やっぱり知らない駅の乗り換えはすごく不安です。方向音痴だから『どっち? こっち?』となって、乗り換え時間に間に合わなかったり、逆の方向に乗っちゃったり。本当に不安で、はらはらします(笑)」。
原菜乃華(はら・なのか)
生年月日:2003年8月26日(13歳)
出身地:東京都
血液型:A型
【CHECK IT】
子役としてデビューし、映画「地獄でなぜ悪い」(園子温監督)でヒロインの幼少期を演じて注目される。これまでの主な出演作は、ドラマ「夫のカノジョ」(TBS系)、「ビンタ!~弁護士事務員ミノワが愛で解決します~」(読売テレビ・日本テレビ系)、「朝が来る」(東海テレビ・フジテレビ系)など。2016年4月より「おはスタ」(テレビ東京系/月~金曜7:05~7:30)におはガールとして出演中。映画「3月のライオン」(前編公開中、後編が4月22日より公開)に出演。初主演映画「はらはらなのか。」は4月1日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開(配給/SPOTTED PRODUCTIONS)。
詳しい情報は公式HPへ