PICK UP ACTRESS 吉柳咲良
PHOTO=河野英喜 INTERVIEW=斉藤貴志
「デスノート」のミュージカルでヒロイン
ピーターパンと真逆のかわいい女の子役に挑戦
――ミュージカル「ピーターパン」でピーターの少年ぶりを見事に演じてきた咲良さんが、「デスノート THE MUSICAL」で女子要素の強いミサミサこと弥海砂役となりました。
「ビックリしました(笑)。私は『デスノート』はドラマから映画、マンガ、アニメと観てましたけど、ミサミサはとにかくかわいい印象で、服装とかも本当に女子って感じ。まさか自分が演じるとは思いもしませんでした。私自身はもともとピーターパンに寄っているので、稽古で台詞を言ってると、まだピーターっぽさが出ちゃうときもあります」。
――咲良さんは普段ツインテールにしたり、ミニスカートを穿いたりはしませんか?
「まったくなかったです。ミニスカートは持ってもいなくて、いつもはほぼデニムのパンツ。『デスノート』のヴィジュアル撮影で初めてミサミサの衣装を着たときは、恥ずかしかったです(笑)。でも、ミサミサになるために、最近は普段から頑張ってミニスカートを穿いて、稽古にはハーフツインで行ってます」。
――日常から役作りをしているわけですね。
「あとは声です。私はもともと低いので、ピーターパンではそのままのキーで行けましたけど、ミサミサは高くてかわいい声のイメージが強いので、そこにどう近づけられるか。気を抜くと低くなってしまうから、そのたびにマネージャーさんに『低いよ』と言われて、毎日高い声を出す特訓をしています」。
――その辺がミサミサ役に対する最初の壁でしたか。
「そうですね。あと、ミサミサはアイドルですけど、私はアイドルっぽさからほど遠いので、毎日いろいろなアイドルグループの動画を観たり、『デスノート』のミュージカルの初演のDVDやアニメも観直して、私に足りない部分を研究しています」。
――取り入れたかわいい仕草とか、ありますか?
「歌っているときは常に笑顔でいるのが大事だと思いました。あと、ウインクはたくさん練習しました。そういうちょっとした仕草や表情から、アイドルとしてのミサミサの魅力をより伝えられると思うので、細かいところまでこだわっていきたいです」。
――一方で、咲良さんならではのミサミサらしさも出したいところでは?
「もちろん、それはあります。『私はこうしたい』という想いがミサミサと繋がったときに、お客さんの心を動かすお芝居になる気がします。それに稽古で演じてみると、ミサミサはかわいいだけではないことがわかってきました」。
――そうですよね。
「2幕では両親が殺されたことで抱えているものや、キラに対する異常なまでの執着が出てきます。ミサミサはすごく曲がっているように見えますけど、本人は自分にとっての真っすぐな道を生きてきただけ。ミサミサと弥海砂は別人格と思うくらい違うので、どちらの顔も私らしく表現できるように頑張ります」。
――アイドルらしさより、闇の部分のほうが得意だったり(笑)?
「感情がぶつけやすい分、そっちのほうが得意かもしれないです。歌もアイドルの1幕とは全然違う曲が多くて。いずれにしても『ピーターパン』の楽曲とは雰囲気も曲調もキーも何もかも違うので、今までやってきたことをバネにワンランク上げていきたいです」。
――そうすると、自分とかけ離れた難役ではありつつ、稽古でやるべきことは見えているというか、不安はない感じですか?
「不安より『頑張らなきゃいけない』という気持ちです。周りの方々のレベルの高さは肌で感じますけど、レムと一緒に歌うシーンでは、パク・ヘナさんに甘えたらいけない。逆に、海砂は死神のレムが惹かれていく存在じゃないといけないので、自分の中で覚悟は決めています」。
家でも稽古場でも毎日泣いてたのが
急に吹っ切れて楽しくなりました(笑)
――咲良さんは13歳で「ピーターパン」の主役でデビューしたときもそうでしたけど、中学生にして本当に強いですよね。ミュージカルで大役を演じた若手女優さんから、「逃げ出したくなった」といった話もよく聞きますが……。
「逃げたくなることもなくはないですけど、どこかで吹っ切れるんです。今回も(取材日の)1週間ぐらい前に峠を越えて、コロッと変わりました。それまではズンズン落ちていて、毎日ずっと泣いていたんです。家で泣いて、稽古場で泣いて、帰り道で泣いて(笑)。涙がかれないかと思うくらいでしたけど、急に立ち直りました(笑)」。
――へーっ。まず、泣いていたのはどんな感情からだったんですか?
「やっぱり周りの方についていけなかったんです。歌も演技もすべて、自分とはレベルが違うと感じましたし、ヘナさんの歌を聴くと泣きそうになるくらいで。そこまで人の心に歌を響かせることは私にはできないし、一緒に舞台に立つのが不安でした。でも、ヘナさんが『あなたが海砂で良かった』と言ってくださったのがひとつの自信になりましたし、『何とか頑張らないといけないんだ』と改めて感じました」。
――そこで急に吹っ切れたんですか?
「たぶん吹っ切れたのは、歌稽古に音楽監督の塩田(明弘)さんがいらっしゃったときでした。『ここはこう』と細かいアドバイスをたくさんいただいて、できると『そう、それ!』と言ってくださって。歌のことがひとつひとつわかって、自信がついたんだと思います。それからお芝居の稽古場に入って、さっき言ったようにハーフツインとか形からミサミサに近づいて、今はすごく楽しくやれています」。
――ちなみに咲良さんは、夜神月(ライト)の「犯罪のない世界を作るために法で裁けない犯罪者を殺す」という考えは、どう思いますか?
「月に『法律と正義は別物だ』という台詞があって、そこは共感できないわけではないです。だからって犯罪者を殺すことが正義なのかと言われたら、どうですかね? 物語の中では、犯罪が減って世間はキラを称える感じになって、誰かにとっての正義は別の誰かにとっては悪なんでしょうね。私は一番の悪は死神のリュークだと思います。1冊のデスノートを人間界に落として、世界中をあんなに混乱させたので」。
――もし咲良さんがデスノートを拾ったら、どうします?
「私は人の名前は書きません。でも、死神とはしゃべりたいです。それと、(相手の顔を見たら本名と寿命がわかる)死神の目は欲しいです」。
――寿命が半分になっても?
「はい(笑)。人の名前を覚えることはすごく大切だと思うんです。お仕事の現場でも、いる日といない日があるスタッフさんのお名前まで、完璧に覚えたくて」。
――それはいつも心掛けているんですか?
「全員のお名前を覚えるようにしています。グッと距離が近づく気がしますし、私も『咲良』と声を掛けてもらえるとすごく嬉しいので」。
――本当に咲良さんは大人ですよね。「デスノート THE MUSICAL」の公演が3月まである中、中学生活も残り少なくなってきました。
「今は稽古に集中しているから、実感はありません。たぶん卒業式の当日に、始まったら泣くんだろうなと思います(笑)」。
――学校での思い出もできました?
「文化祭は楽しかったです。1人で『リトル・マーメイド』の『Part of Your World』を歌って、ダンスを4人で踊りました。放課後やお休みの日に集まって、『ここはこうしたほうがきれいだね』とか細かいことまで話し合って、ビデオに撮って何回も練習しました」。
――去年は「初恋ロスタイム」で映画に初出演しました。今年はドラマにも出たいとか考えていますか?
「自分の中で特に『これが一番やりたい』というのはなくて、ただ役の幅をもっと広げたいです。今回、ピーターパンと真逆のミサミサをやらせていただきますけど、また全然違う役も演じて、『あの役とこの役は同じ人がやっていたの?』と思われるくらいになれたらと思います」。
――では、差し当たって「デスノート THE MUSICAL」に関しては、本番までにあとはどんなことを磨きたいですか?
「月と海砂、Lと海砂、レムと海砂と関係性が全部違うので、そこがちゃんと見えれば、物語がもっと面白くなると思います。だから、海砂自身のそれぞれの人に対する想いをどう見せるか、頑張りたいです」。
――咲良さん自身が惹かれたキャラクターはいますか?
「今はヘナさんと一緒の稽古が多いこともありますけど、レムが一番好きです。レムは『愛は愚かだ。身を滅ぼすだけだ』と言いながら、海砂を愛してしまう。見捨てられなくて助けてしまうやさしさを感じます」。
――死神らしからぬところですね。
「原作でレムが『死神の殺し方は恋に落とすことだ』と言うシーンがあって、海砂は『素敵な殺し方』と言うんです。やっぱり海砂は感覚がどこかズレてます(笑)。それは月と似ているから、海砂には月が絶対に正義なのかもしれません。そんな海砂をほっておけなくて、みんなが惹かれていく部分があるので、そこをすべて出し切れたら一番良いかなと思います」。
吉柳咲良(きりゅう・さくら)
生年月日:2004年4月22日(15歳)
出身地:栃木県
血液型:B型
【CHECK IT】
2016年の「第41回ホリプロタレントスカウトキャラバン PURE GIRL 2016」で史上最年少の12歳でグランプリを獲得。2017年のブロードウェイミュージカル「ピーターパン」で10代目のピーターパン役に抜擢されて、以後3年間続けている。2019年にはアニメ映画「天気の子」に声の出演、映画「初恋ロスタイム」で映像作品デビュー。「デスノート THE MUSICAL」にヒロインの弥海砂役で出演する。
詳しい情報は公式HPへ
「デスノート THE MUSICAL」
詳しい情報は「デスノート THE MUSICAL」公式サイトへ