PICK UP ACTRESS 森七菜
PHOTO=厚地健太郎 INTERVIEW=田中裕幸
映画「最初の晩餐」でヒロインの少女時代役
繊細な少女の心情を見事に表現
――お通夜の夜、亡くなった父の思い出の味をきっかけに、家族たちの間に父との思い出の時間が蘇り、誰も知らなかった秘密が浮き彫りになっていくという映画「最初の晩餐」。森さんは、戸田恵梨香さん演じるヒロイン・美也子の学生時代を演じています。美也子は、親の再婚で新しい母・兄ができたり環境が変わる中で、最初は反発しながらも次第に心を開いていきます。まず森さんにとって美也子はどんな女性だと思いましたか?
「美也子はトゲトゲ、ツンツンしていて、きれいな映画の王道ヒロインのイメージではないんですね。でも、それが逆に観ている人が自分と重ね合わせられるというか、自分のことってみんなきれいに見えてないじゃないですか。『私ひどいことをしたな』と思うことは誰しもある。この作品の中で、ある意味一番共感できる登場人物ではないかなと思います」。
――作中ではなんと小学生時代から演じています!
「ランドセルもかつぎました(笑)。小学生役はなかなか難しかったですね。自分の小学生のときの動画を観てみたり、写真を見たり、エピソードを思い出しながら演じました」。
――違和感はあまりなかったですよ(笑)。少女時代の美也子は、特に、新しい兄となったシュン(楽駆)との関係性が重要なポイントになります。
「美也子がシュン兄に、気持ちが近づいたり離れたり、また気持ちが離れたところからくっついたりしますが、常盤(司郎)監督は、演じるにあたって兄妹間の気持ちの管理をしてくださって、気持ちが離れる前の芝居のときは控え場所を別にしてくださったり、その配慮がとてもありがたかったです」。
――お父さん役の永瀬正敏さん、新しいお母さん役の斉藤由貴さんら人気俳優の方々との共演はいかがでしたか?
「永瀬さんも斉藤さんもすごくやさしくて……。永瀬さんは自分のことを『お父ちゃん』とおっしゃって、『お父ちゃんはね……』と話しかけてくださり、それで緊張もほぐれました。『ああ、そういうふうに思ってもいいんだな』と。でも最初は永瀬さんのオーラに圧倒されていました。主演の染谷将太さんや戸田恵梨香さんともこの作品の本読みのときに初めてお会いしたのですが、最初『私、ここにいていいのかな?』と思ったくらい、すごい方々ばかりで緊張していました」。
――戸田さんと同じ役を演じるということで意識したことは?
「戸田さんは、演じるにあたって違和感が出ないように、最初に常盤監督も交え3人で一緒に本読みをしてくださったんです。小学生のときのセリフも戸田さんが読んでくださって。『(大人の美也子の行動の)要因を七菜ちゃんが拾っていってね』ということで目の前でお芝居もしてくださいました。それは大きかったなと思います」。
――お父さんが家族に最初に作った料理の“目玉焼き”が、物語が展開していく導入的なアイテムになっていますが、森さんにとって、家族の味、思い出の逸品のような料理ってありますか?
「3つ挙げていいですか(笑)。“手巻き寿司”と“ハンバーグ”と“玉子焼き”!」。
――手巻き寿司は、作品のオーディションに受かったとき、家族でお祝いするときに食べると、以前のインタビューで語ってくれましたね。
「はい。今でもお祝いのときには続いています。作るとき、いつも同じ桶を使うんですけど、お母さんがその桶で酢飯の用意をしていると、『ああ、お祝いだな!』とワクワクした気持ちになります。ハンバーグは、家に帰ったときに『食べたい。牛肉100%で』とリクエストしたら、それで作ってくれるのですが、とにかくおいしいです! あとお母さんの玉子焼き。とてもあまーくて、お弁当の中に入ってるとテンションが上がります!」。
――物語のクライマックスでは両親の秘密が明かされる場面もあります。もし森さんの親御さんに何か秘密があったとしたら、それは聞かせてもらいたい? それとも……?
「言いたいなら言ってくれてもいいけど、それを言いたくなるまで私は待ちます。でも私の母は隠し事をしないんです。その信頼関係は信じています」。
――さて、今年は映画「天気の子」やドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」などで一躍注目され、先日は雑誌「日経トレンディ」が選ぶ“来年の顔”にも選ばれました。このブレイクの状況に周りの反響は?
「高校の友だちには、『あれ見たよ!』とか『あの人どんな人だった?』とか聞いてくれる子もいる一方で、中学時代の友だちは、ナチュラルで、ほぼ無関心な感じ(笑)。自分の興味がある内容の作品が決まったら、『すごくない!?』とか連絡をくれたりしますが、それ以外は、私が出ているからといって特別視するわけではなくて……。でもそういうところがあるから、地元の大分にいると普通の高校生に戻れます」。
――「天気の子」は公開されて3カ月以上たちますが、天気のことを考えたり、演じた陽菜のことを思い出したりしますか?
「今年大きな台風が立て続けに来ていろんなことを考えましたし、実際に台風の怖さを体感したからこそ映画の見方も変わりました」。
――映画の中の風景をリアルに思い出させるような状況もありました。
「だからこそ(主人公の)帆高の選択がよりリアルに感じられるというか、それでも負けない若者たちを描きたかった新海(誠)さんのメッセージも伝わります。若者たちに力を与えてくれる作品なんじゃないかと思います」。
――女優として、またひとりの女性として、今後の目標を教えてください。
「女優としては、満島ひかりさんが大好きなので、自分にとっての目標です。そして最近は、いろんな大人の方と会話する機会が増えてきて、プロフェッショナルな方々はジャンルは違っても、いろんな知識を持ってらっしゃって、いろんなことに興味がある方々で魅力を感じます。話していて私自身、ものの見方が広がるし、お話しすること自体楽しいので、自分もそういう知識が豊富な人になりたいです」。
森七菜(もり・なな)
生年月日:2001年8月31日(18歳)
出身地:大分県(大阪府生まれ)
血液型:A型
【PROFILE】
2016年、地元の大分で家族と食事中にスカウトされたことをきっかけに、行定勲監督のWeb広告に出演し芸能活動をスタート。デビュー以来、ドラマ「東京ヴァンパイアホテル」(Amazonプライム・ビデオ/園子温総監督作品)、ドラマ「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」(NHK)などに出演。2019年、ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ系)、そしてヒロイン・陽菜の声を演じた映画「天気の子」(新海誠監督作品)出演で一気に注目度を上げる。その他にも、映画「東京喰種 トーキョーグール【S】」、「地獄少女」(公開中)、NHK 土曜ドラマ「少年寅次郎」など話題作に続々出演。2020年には映画「ラストレター」、NHK 連続テレビ小説「エール」など出演作品が控えている。
詳しい情報は公式HPへ
【CHECK IT】
ヒロイン・美也子の少女時代を演じた映画「最初の晩餐」は全国公開中。
詳しい情報は「最初の晩餐」公式HPへ