PICK UP ACTRESS 中島早貴
PHOTO＝上飯坂一 INTERVIEW＝斉藤貴志
℃-ute解散を経て舞台で活躍した1年の締めに
「ジーザス・クライスト・レディオスター」に出演
――今年は舞台出演が続きましたが、「ザ・池田屋！」は「人生のターニングポイントだった」とラジオで話してました。演技観が一変したわけですか？
「全然変わりました。まず本読の時点で、ずっと演劇をやってきた皆さんの声量にビックリして、立ち稽古が始まると、ハイテンションでハイテンポのコメディだったので、とにかく台詞回しが速かったです。ひとつの台詞でもいろいろな表現をされるし、自分は全然できなくて落ち込みました。だけど落ち込んでいる暇もなかったし、落ち込んでいると演出の池田（純矢）さんにバレるんです。とにかく、お芝居というものを全部教えてもらった感じでした」。
――℃-ute時代にも「劇団ゲキハロ」など舞台は結構出演していましたが……。
「全然違いました。本っ当に！ ハロプロの舞台ではマイクを使っているし、演出家さんもやさしいので、なごやかな雰囲気で伸び伸びお芝居させていただいてました。でも、外部の舞台だと演出家さんの『こうしたい』という意向があって、それにどう返せるかが重要なんです。そこで自分の引き出しが全然ないことに愕然としました。声量もないし滑舌も悪いことを知って、『ザ・池田屋！』のときは皆さん正直な方だったから、私が投げた台詞に対して『今のは全然刺さらなかったよ』と言われたりもしました」。
――それはキツイですね。
「やさしく言ってくださるんですけど、『エーッ！ どうしよう……』となりました。それでおうちで1人でめっちゃ練習したら、池田さんに『1人で練習した感じが出ちゃってるから、練習してこないで』と言われたり……」。
――掛け合いが段取りっぽくなっていたから？
「そうなんです。もうどうしたらいいのか、わからなくなっちゃって……。でも、本当に何でも言ってくれて、皆さん最後まで私ができるようになるのを待ってくれました。すごく良い座組み（出演者の構成）に出会えたと思います」。
――やっぱりアイドルとして舞台に立つのとはだいぶ違ったようですね。
「別ものでした。だから私、今“お芝居を初めて2年目”という気持ちです。向き合い方が全然違います。ハロプロのときは台詞を覚えて動きを決めてもらって、形ができたと思ったら、本番があっという間に終わってました。今の舞台では本番が始まってからも、『もっとこうしたほうがいい』と、常に皆さん考えられています。どんどん新しいことをやるし、同じ台詞でも全然違う言い方になったりします。『ちゃんとキャッチボールをしたから、こういう台詞が生まれてくるんだ』というのも初めて体感しました」。
――台本に沿ってやるだけではなく。
「そう。申し訳ないんですけど、昔はいかに台本をなぞってやっていたかもわかりました」。
――ラジオでは「自分の情けない部分を避けていた」とも話していましたが、そういう部分にも向かい合うようになったと？
「もう丸裸にされた気分です(笑)。今までは自分のことを話すのもあまり好きじゃなかったんです。グループのときは人の話を聞くのは好きだったけど、自分のプライベートのこととかは、あまり話しませんでした。それが1人になってからは、『ザ・池田屋！』のときも『私生活もお芝居に出るから』ということで、いろいろ話して丸裸になりました(笑)。今は自分をさらけ出すし、何でも受け入れる態勢です。今まで培ってきたものもプライドとして抱えるのではなく、それが本当に身に付いているなら勝手に放たれていると思うので、『常に新しいものを取り入れなきゃ』となりました。どこでも自分をオープンにしています」。
――今度の舞台「ジーザス・クライスト・レディオスター」では、カリスマDJ・ジーザスに心酔するラジオ局の新米AD・清水心役。稽古ではどんなことに力を入れてますか？
「一番の課題は笑いを我慢することです(笑)。皆さん本当に面白すぎてヤバイです。台本を読んでるときから笑ってましたけど、実際に動いてやるのを見ると、さらに面白すぎて、『私、ちゃんとお芝居できるかな？』と思うほど辛いです(笑)。お客さんとして観たいですもん」。
――清水心を演じる上での課題はありますか？
「ラジオ局でのワンシチュエーション・コメディで、清水はラジオ局に入ったばかりの新人なんですけど、演出の西田（大輔）さんに最初に言われたのが『場慣れしすぎて初々しさがない』ということでした。そこを引っ張り出すのが課題かなと思います」。
――早貴さん自身はラジオを長くやっている中で。
「放送でトラブルがあった場面で、ついマイクを持ったりしちゃうんです。『焦っているからそうしたのか？ 一般の人でもそうするのか？』を考えたりします」。
――早貴さんはラジオでしゃべる側ですが、清水のようなラジオに対する強い思い入れはありますか？
「あります。ラジオは面白いですよね。パーソナリティの人が一番気軽にしゃべっている場だと思うんです。テレビでは自分が映っていると、やっぱり緊張しちゃうじゃないですか。でも、ラジオだと、自分以外はスタッフさんしかブースの中にいないので、私も素でしゃべっています。他の人のラジオも聴きますし、何か作業をしながらでも聴けるのがいいところですよね。今はradikoでどこでも簡単に聴けるし……」。
――清水にとってのジーザスほどではなくても、好きなDJはいますか？
「オードリーさんの『オールナイトニッポン』は好きです。あと、高橋みなみさんと朝井リョウさんの『ヨブンのこと』という30分番組。お2人のやり取りがすごく面白いです」。
――「ジーザス・クライスト・レディオスター」では「ラジオが面白いのはハプニングが起こるからだ」という台詞が出てきます。ラジオをやってきた立場としてはわかります？
「私の番組は生ではないので、ハプニングは回避してますけど、生放送をやると、今はツイッターとかでリアルタイムでコメントが来るじゃないですか。スタジオでしゃべりながら見られるので、それは楽しいです。あと、番組にラジオネームでお手紙をくれる方が握手会で『僕、○○です』と言ってくれて、『あなたが!? いやー、お世話になってます』となったりします。そういうやり取りもワクワク感がありますね」。
――ジーザスは「リスナーからの悩み相談」が人気を博している設定。早貴さんも自分の番組で、そういう相談に答えることがありますよね？
「お悩みは大募集中です」。
――でも、人の悩みに公共の電波で答えるのは、プレッシャーもありません？
「それもテレビだったら『ちゃんとしなきゃ』となるんですけど、ラジオだと私を好きな人たちが聴いてくれているから、『何でもいいんだな』と思っちゃうんです。答えられなかったら『わかりません。ごめんなさい』と次のおたよりに行っちゃったりもします。『中島早貴のキュートな時間』は7年くらいやらせてもらっていますが、スタッフさんがやさしいので、本当に好き勝手にしゃべらせてもらってます(笑)」。
――とはいえ、真剣な相談には真剣に答えてますよね。
「そういう相談も来ます。学校の友だちについて悩んでいる子がいて、『その子と話すと相談ばかりされるけど、どう解決したらいいか私にはわかりません。なっきぃならどうします？』ということだったので、私はその悩みを送ってくれた子が友だちと一緒に落ち込んでしまうのが心配になりました。だから『高校生活がもったいないと思うよ』と話しました」。
性格がオープンになったから
人と会って話すのが楽しくて！
――今回の舞台の稽古は「笑いをこらえるのが大変」とのことでしたが、稽古場の空気も楽しい感じですか？
「めっちゃ楽しいです。演出の西田さんがとりあえず見守ってくれる姿勢なんですね。ただ、私は笑いのセンスがないので、ちゃんとコメディのテンポができているのか心配です。（取材日時点では）まだ台詞を入れてる途中ということもありますけど、もうちょっとスムーズに対応できるようになったら、西田さんを質問攻めにしたいと思っています」。
――コメディではテンポは特に大切ですよね。
「せっかく台本が面白いのに、笑いが起きなかったら私のせいかも……という気持ちがすごくあります」。
――男性の声でしゃべるシーンもあります。
「練習してますけど、そこはまだ絶対できません(笑)」。
――早貴さんの声はかわいいから。
「低い声が出せないので、男性の声はめちゃくちゃ苦手です。そこはパニクってる設定で、自分も本当にパニクっちゃいます(笑)」。
――本番でどうなっているか注目します。清水は基本、真面目な性格ですね。「やらせは良くないと思います」と、ディレクターさんに訴えてたりします。
「ラジオが大好きで、ジーザスさんに憧れて、その想いだけで前の仕事をやめて、この現場にいる。本当に真っすぐな子だと思います」。
――そういう真面目さは素の早貴さんとも重なったり？
「どうだろう？ 私はそんなに真面目ではないですね。やらせは良くないと思いますけど(笑)。見え方を気にするところはあります。グループで活動していたからか、誰かがしゃべっていたら、自分はしゃべらないようにしてました。でも、清水ほど真面目ではないです」。
――ラジオで上々軍団の鈴木啓太さんがゲストに来たとき、「好きなことにだけは真面目」と指摘されてました。
「それはあります。今、釣りにハマっていて、この前、女の子3人で行ったときは、最初は2人を楽しませなきゃと思って、めっちゃテンション高くしゃべっていたんですね。でも釣りを始めた瞬間、無口になりました(笑)。魚に対して、真面目に向き合いました」。
――公演はクリスマスイブが千秋楽ですが、終わってからクリスマスで盛り上がるんですか？
「それなんですよね。イブまでこんな楽しい舞台でワーッとやったら、きっと終了後の25日にポッカーンとなるんですよ(笑)」。
――ジーザスロスになりますか？
「はい。『とりあえず外に出ようか』と思って、『待って！ クリスマスだ』となる流れが見えてます。絶対『この世に私1人……』みたいになっちゃうから(笑)、何かしら予定を入れなきゃと思ってますけど、今のところ何も入ってません」。
――普段の生活は℃-ute時代とだいぶ変わりました？
「めちゃくちゃ変わりました。私自身の性格がオープンになったこともありますけど、人と話すのが楽しいです！ いろいろな人と会って、いろいろな話を聞きたいから、外に出るようになりました。あと、舞台をやっていると、休演日や稽古がお休みの日を結構前に出してくれるので、その日に何をするか、1カ月くらい前から予定を決められるんです」。
――℃-uteの頃はそうもいかなかったと？
「休みが決まるのがギリギリのこともあるので(笑)、何も決められなかったんですよ。なので、解散してからは決めやすくなりました。観たい舞台もたくさんあるので、前からリサーチして『この日はこれを観に行く』と予定に入れてます」。
――舞台は映画と違って、日程も上演時間も限られてますから。
「そうなんです。『今観ないと観られない』というものがたくさんあります。そうやって舞台を観に行くので、本当にプライベートもすごく充実しています」。
――仕事と直接関係ないことを何かするようになったりは？
「釣りは℃-uteの頃からやっていたし……。やっぱり舞台を観に行っちゃいますね。観るのも好きなので。今年たくさん舞台に立たせていただいたので、『共演したあの方の舞台を観に行きたい』ということも増えて、そういう時間が多くなりました」。
――来年も女優として、さらにステップアップを目指していこうと？
「今年が充実していたので、来年もたくさんお芝居をさせていただきたいです。プライベートでも舞台を観に行くとお話しましたけど、観てない作品もたくさんあるので。来年はちゃんと映画や昔流行ったドラマも観て、役者さんの名前も全然知らないから情報を集めて、お芝居をするだけではなく、お芝居の歴史みたいなものをちゃんと学んでおきたいと思います」。
――それを自分の演技にも活かしていくわけですね。
「そうですね。本当にまだ無知なので。今までは皆さんが教えてくださったり、好きな映画を周囲の人に聞いて、それを観るようにしてましたけど、これからもし厳しい現場に当たったら、『○○も知らないの？』ってなるかもしれない。だから勉強しておきたいんです」。
――なるほど。プライベートで来年したいことはありますか？
「おうちに人を呼びたいです。今までは狭くて呼べなかったんですけど、ちょっと前に引っ越して大丈夫そうになったので。鍋も新調したから、おうちで鍋パーティーを開いて、盛り上がりたいです(笑)」。
中島早貴（なかじま・さき）
生年月日：1994年2月5日（24歳）
出身地：埼玉県
血液型：O型
【CHECK IT】
2005年にアイドルグループ℃-uteのメンバーとなり、2007年にメジャーデビュー。℃-ute解散後の2017年からは女優として活動中。これまでの主な出演作はドラマ「釣り刑事」（TBS系）、「目玉焼き法～ニッポンの食卓が変わる～」（BSフジ）、映画「王様ゲーム」、「ゾンビデオ」など。今年、舞台「エン＊ゲキ#03『ザ・池田屋！』」、「陣内の門～1st ACT～」、「愛と青春キップ」に出演。「ふるさとの夢」（TBS／水曜24:58～）に出演中。「中島早貴のキュートな時間」（ラジオ日本／土曜24:30～）、「HELLO! DRIVE! -ハロドラ-」（Radio NEO／月曜～金曜24:00～。中島早貴は水曜日に出演）でパーソナリティを務める。12月12日（水）～24日（月）に上演の舞台「ジーザス・クライスト・レディオスター」（紀伊國屋ホール）に出演。
詳しい情報は公式HPへ
舞台「ジーザス・クライスト・レディオスター」
原作・演出／西田大輔 脚色／家城啓之
12月12日（水）～24日（月） 全16公演 紀伊國屋ホール
詳しい情報は舞台「ジーザス・クライスト・レディオスター」公式HPへ
