PICK UP ACTRESS 桜井日奈子

PICK UP ACTRESS 桜井日奈子

PHOTO=小澤太一 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

映画「ママレード・ボーイ」で初主演
常識はずれの恋に揺れる役を自然体で

 
 

――「ママレード・ボーイ」で主人公の小石川光希役。泣くシーンが多かったですね。

「多かったですねー。段取りの段階で涙が出ちゃって、段取りをやりすぎると、本番で出なくなるときもありました。監督に『さっきは出てたのに』と言われて『すみません……』みたいになりました(笑)」。

――気持ちは自然に高まった?

「そうですね。撮影が後半になるにつれて、自分がどんどん光希に近づいてきているのは感じていました」。

――泣くといっても場面ごとに感情は様々でしたが、つき合っていた遊に突き放されて「やだ、やだ、やだ!」と叫ぶところは、なりふり構わず想いをさらけ出したような?

「あそこで思ったのは、動きがあれだけ付くと感情も乗りやすいんだなということです。最初はあんなに遊にぶつかっていかなかったんです。『もうちょっと動いて』と言われて、やってみたら、涙もドッと出てきました。どこかで動きを制御していたから、感情も連動していたようです。何かに捉われないで、もっと自由にお芝居できるようになりたいと、撮影全体を通して思っていました」。


――でも、今回の光希役はすごく自然で、どこかにいそうな女の子に見えました。

「本当ですか? だったら良かった。廣木(隆一)監督に一番言われたのが、まさに『普通にやってくれ』ということだったんです。ナチュラルに、日常の一部として演じる。そういうことを求められる演出は初めてで、毎日悩んでました。『普通って何だろう?』って」。

――遊と落ち葉を掛け合ってはしゃいでるシーンなんかも、本当に高校生カップルがやってそうで。

「あそこはすっごい楽しかったです。『心底ハッピーなのを表現できる唯一のシーンだから』と言われて、2人で思い切り掛け合ったんですけど、途中で本気になってしまって(笑)。撮影しているのを忘れて葉っぱをぶつけて、ただ楽しんでいました」。

――ブランコのシーンも微笑ましかったです。

「最初『2人乗りってダメなんじゃない?』と言ってたんですけど、『いいんじゃない?』ということで2人乗りして、アドリブを入れました。『危ないって!』とか『ちょっと!』とか……」。


――遊役の吉沢亮さんの押し方が本当に危なかったから?

「普通に怖くて(笑)。他のシーンでもちょくちょくアドリブは入れてます。食事のシーンも、2人で九州旅行に行ってスマホで撮影しているときの台詞も、台本にはないものでした」。

――そういう自然な流れで、キスシーンも?

「キスシーンは最初緊張しました。保健室のときは、私は目をつぶっていたので、『いつ来るんだろう?』ってドキドキしました」。

――海辺で告白し合いながらキスしたところは、長回しですか?

「長かったですねー。私も出来上がった映画を観て初めて『こう撮っていたんだ』とわかりました。とにかく歩きながらで、動きが多いシーンでした。2人で海辺に来て、遊からパッと離れて、ちょっと後ろに下がっていく……とか。あれは監督の演出で、引いてずっと一連で撮っていたから、ここまで動きがあると全体が開けて見えて、すごく素敵でした」。


――夕日や海も見えていました。

「最初は昼くらいに撮影して、ほぼ撮り終えたのを、『夕日がきれいだ』ということで、また撮り直したんです。監督がすごく景色にこだわって、ハッとされたのかもしれません」。

――試写でそういう自分のキスシーンを観ると、どんな気持ちになりました?

「まだ客観的には観られないです。演じているときは余計なことは一切考えず、集中してお芝居できましたけど、終わってから観ると『来る……来る……。あっ! あーっ!』みたいな感じで緊張します(笑)。これを生業としていくので、慣れないといけないですね」。

 
 

じれったい感じはしましたけど
そこでキュンキュンするんですね

 
 

――「ママレード・ボーイ」の原作は90年代のマンガですが、最近の作品も含めて、少女マンガはよく読みますか?

「あまり見てきませんでした。男兄弟と育ったこともあって、どちらかと言うと少年マンガをよく読んでいたので。少女マンガには免疫がない分、『ママレード・ボーイ』の原作を読んだときは、ワーッと悶えました(笑)」。

――どの辺で悶えたんですか(笑)?

「光希は優柔不断で、遊にも銀太にも揺れてハッキリしないから、どっちにも悶えちゃって(笑)。遊に後ろからバッと口を押さえられるとか、『えっ、こんなこと自然にできちゃうの?』という感じですよね。マンガの世界だからいいんですけど、私はどちらかと言うとパッと決めちゃうほうで、光希にじれったい感じはしました。でも、そこでキュンキュンを生み出しているんですよね」。

――劇中で銀太と「キスの味ってどんなか試してみる?」と話していて、顔を近づけてきたらすごく怒り出したのは、ひどいと思いました(笑)。

「ホントですよね(笑)。映画で銀太役の佐藤(大樹)さんが『酸っぱい……』と言っているのを見て、フッと吹いちゃいました(笑)。私は立ち去ったあとで知らなくて、撮り終わったあとに監督がニヤニヤしていたから『何だろう?』と思っていたんですけど、『こんなことを言ってたんだ』と映像を観て知りました」。


――光希と遊はお互いの両親同士が相手を交換して再婚して、ふた家族で同居することになったわけですが、どこから遊を好きになったと捉えましたか?

「どこからだろう? 両親が再婚を決めたのを受け入れられずにいたとき、遊が部屋に来たじゃないですか。混乱してワーッとなっている光希を元気づけに来た遊はズルいですけど(笑)、あそこで『そんなふうに考えていたの?』って彼の懐の深さが響いたんじゃないかと思います。それで遊に対する気持ちが変わったのかな? というのはあります」。

――なるほど。その辺から前半は、目線の芝居が多かったですね。バス停で遊のことを見つめたり。

「台詞のない場面ですよね。2人でシチューを食べるシーンが私は一番好きです。まだそんなに仲良くなってなくて、ぎこちない雰囲気の中で、お互いを気にしていることがすごくわかるなと思います」。

――そうですね。2人の視線が絡んだり、視線を逸らしたり……。そこもすごく自然でした。

「あのシーンは特に長回しをしていました。『これ、いつまで撮るんだろう?』と不安になるくらいに。そこに台詞はなかったんですけど、監督はやっぱり流れている雰囲気を大事にしたかったみたいです」。

――映画の本筋と関係ないところだと、日奈子さんが走る姿がカッコよくて、さすが元バスケ少女と思いました(笑)。

「ヘンな負けず嫌いが出て、つい本気で走っちゃって、カメラさんを置いてけぼりにしたりもしました(笑)」。


――遊は光希のことを「騒がしくて素直で純粋で一生懸命」と言ってました。日奈子さん自身にも当てはまることはありますか?

「私が光希を演じることになったとき、周りの人からは『等身大に近い感じだよね』と言われたので、どこか当てはまるところはあるのかな……? 自分ではわかりません。でも、騒がしいとは思います」。

――最近だと、どんなことで騒ぎました?

「うちで虫が出たときとか(笑)。ベランダでG(ゴキブリ)を発見して、映画でもGのオモチャを見て叫ぶシーンがありましたけど、あれとまったく一緒です。『ウワーーーッ!!』という感じ(笑)。あと、友だちとVRのアミューズメントに遊びに行って、一番声を上げて騒いでいたのは私でした(笑)」。

――光希は遊について「いつもドキドキさせられる」と言ってました。日奈子さんは何にドキドキさせられますか?

「最近は古着屋さんに行くことが多くて、ヨーロッパのヴィンテージのワンピースが好みで、結構なお値段で買えないんですけど、見ているだけでドキドキします。普段着られないような服なんですね。フリフリしてたり、丈がすごく長かったり……。それでも欲しいので、いつか何かのごほうびで、1着買おうと思ってます」。

――「ママレード・ボーイ」の大ヒットのごほうびで買うとか?

「そうですね。大ヒットしたら……。なので、よろしくお願いします!」。


 


 
 

桜井日奈子(さくらい・ひなこ)

生年月日:1997年4月2日(21歳)
出身地:岡山県
血液型:O型

 
【CHECK IT】
2014年に「岡山美少女・美人コンテスト」にて美少女グランプリを受賞。2015年5月から配信の「LINE MUSIC」ウェブCMをきっかけに“岡山の奇跡”として全国的に注目される。大東建託「いい部屋ネット」、コロプラ「白猫プロジェクト」、GROP、コスモステーションのCMに出演中。2016年5月に舞台「それいゆ」で女優デビュー。同年7月に「そして、誰もいなくなった」(日本テレビ系)でドラマデビュー。これまでの主な出演作はドラマ「THE LAST COP/ラストコップ」(日本テレビ系)、「恋の503」(FOD)、映画「ラストコップ THE MOVIE」など。初主演映画「ママレード・ボーイ」は4月27日(金)より全国ロードショー。映画「ういらぶ。」が今年公開。
詳しい情報は公式HP

 

「ママレード・ボーイ」

詳しい情報は「ママレード・ボーイ」公式HP
 

 

 

 

(C)吉住渉/集英社 (C)2018 映画「ママレード・ボーイ」製作委員会