PICK UP ACTRESS 山谷花純
PHOTO=古賀良郎 INTERVIEW=斉藤貴志
初主演映画「シンデレラゲーム」が公開
サバイバルバトルに挑むアイドルを演じる
――「シンデレラゲーム」ではアイドルの役でしたが、花純さんはアイドルにはどんなイメージがありますか?
「同じ事務所のSUPER☆GiRLSの子たちを身近でずっと見てきました。同期の田中美麗もいて、ライブを観に行ったりもして。1人ではなくグループでの活動で、私のやっている女優の仕事もひとつの作品を作るうえでは、ある意味同じだろうなと思ってました」。
――今回共演した元乙女新党の其原有沙さんなんかには、いわゆるアイドルらしさを感じたのでは?
「そうでしたね。ビックリしました(笑)。今どきの女の子には珍しいほど天真爛漫で。この仕事をしていると大人っぽい子が多いけど、あの年齢のまま来た感じがして、すごくかわいかったです」。
――「シンデレラゲーム」ではアイドルたちが生死を賭けたゲームを繰り広げて、トップアイドルの座に執着する登場人物が多く出てきます。花純さんにもトップ女優を目指す気持ちとか、重なるところはありました?
「やっぱり人間、欲があるから。私はずっと主役に憧れてきて、今回初めて、そのチャンスをいただいて。自分のそれまでの過程と『シンデレラゲーム』をやっている数日間は、感情面ですごくリンクする部分がありました。役作りでは、気持ち的に難しいことはなかったですね」。
――主役志向は強かったんですか?
「お芝居を好きになって場を重ねていくうちに、いろいろな主役の方を見てきましたし。今まで主役の人をサポートするポジションを任せていただいて、『真ん中に立ったときに見える景色はどんな感じなのかな?』といつも思いながら、やってきたところはあります。『絶対に主役をやりたい!』というものではなかったんですが、『一回はやってみたいな』という」。
――実際に今回の現場では、主役として今までにない心持ちがあったり、座長的な振る舞いをしたりも?
「まず台本を開いたとき、自分の名前が最初に出ている時点で『ああ、本当に主役をやらせていただくんだな』と実感しました。撮影期間は短かったのですが、現場に入ってからは『主役は一番気をつかって過ごす存在なんだ』と思いました。スタッフさんが気に掛けてくれる分、自分も返さないといけない。演技以外の部分で、そう感じました」。
――それで具体的にはどんな行動を?
「演技経験の少ない子が多かったので、相手の寄りで自分は映ってないシーンの撮影でも、なるべく自分が映っているときと同じように、お芝居の掛け合いをしたり」。
――相手の感情が入りやすいように、ということですね。
「泣きのシーンが多かったので、私自身も1人1人と向き合って鍛えられたし、共演した女の子たちから勉強もさせてもらいました」。
――無人島が舞台という設定で、館山のほうで撮影したそうですね。
「いやー、もう半端なかったですね。ジャングルで(笑)。7月で、冒頭のシーンを撮影したときが太陽が一番出ていて」。
――アイドルたちが波打ち際に倒れていたところ?
「そのときが一番暑かったんです。本当は砂浜に打ち上げられているシーンだったんですけど、暑すぎて砂浜だとヤケドしちゃうから波打ち際に変更されたり、現場でいろいろ変わったこともありました」。
――死ぬかもしれない勝負って経験ないでしょうけど、どんな心理になるか、かなり想像しました?
「私が演じた灰谷沙奈は物語を大きく動かす役でもないし、そこまでキャラクター性が強いわけでもなくて。内気な女の子、という印象がすごくありました。だからこそ、この状況に一番戸惑わないといけない。人の死に敏感にならないといけないと思いました。だから撮影していた間は、誰よりもいろいろ考えたんじゃないかと思います」。
――それだけに精神的にハードな撮影だったのでは?
「ゲームのなかでの自分との葛藤みたいな部分は、演じていて本当にしんどかったです。死を意識しながら生きるって、ないじゃないですか。自分の生きている状況が当たり前だと思っているし、『明日死ぬかもしれない』と言われても全然実感がわからない。だからこそ見えてくる人間の本性や欲深さ、悪意、自我があったり。一緒にやっていた他の子について見えてくる部分もあって、そういう意味では面白かったです」。
自分の見た目とは反対の
弱さをどう出すか考えました
――沙奈はやさしい子ですよね。ああいう状況にいながら、他のアイドルのことを気遣って。
「たぶん人を優先しちゃうタイプで、弱いからこそ人に頼るし、人を守ろうともする。そこがブレたら作品もブレちゃうので、いつも心掛けながら演じてました。周りの子が強いからギャップがあるところで、真ん中の自分がブレずに行かないと。監督にも『最後まで意志の弱さを守ってほしい』と言われました。私は見た目的にハッキリした顔立ちをしているから、どうやったら弱い印象が伝わるのか考えてました」。
――確かに花純さんは外見的には、むしろ気持ちが強そうですよね。
「今までそういう役が多かったから、今回はイメージを変えたい部分もありました」。
――弱さを出すうえで気持ちの持ち方以外に、たとえば仕草とかで意識したこともありました?
「私の妹がわりと沙奈タイプなんですよ。だから撮影前に実家に帰って、妹を観察しました(笑)。人の話を聴いてるときの口元の形だったり、ちょっと猫背だったり、走り方が少しヘンで『この子は絶対運動できないだろうな』と感じたり。そういう部分を表現できたら、役として説得力があるんじゃないかと思いました」。
――沙奈は他のアイドルに「1人じゃ何もできない」「周りに流されるだけ」などと言われてましたが、逆に花純さん自身にはそういうところはないと?
「私は沙奈のお姉ちゃんの沙里のほうに共感できました。言ってることが理解できたし。私が沙里で私の妹が沙奈みたいな印象は、最初に台本を読んだときからありました」。
――沙奈は自分がカードゲームに勝っても目に涙を溜めていたり、表情とかで見せる演技も多かったですね。
「涙を流すポイントはすごく考えながらやった記憶があります。ここは涙を溜めたほうが伝わるのか、流したほうがいいのか。毎日カードゲームがあって同じパターンが続くから、日数を重ねるなかでの役の状況の変化や心情の変化も伝えたいと思って。監督とはそこまで話はしなかったんですけど、1人で考えてましたね」。
――それは頭が痛くなるくらいのレベルで?
「けっこう考えてました。撮影期間中は役のことだけをずっと。それは他の作品でも同じですけど」。
――そこまで打ち込んでいたら、やっぱりお芝居とはいえ、目の前で人が死んだり、人から裏切られたりするのはキツかったのでは?
「そうですね。周りの空気感がしんどかったです。でも私、普段も騙されることが多いから。人をすぐ信じちゃうんでしょうね。あまり疑わずに。そこは大人にならないといけないけど、私は裏切られても、その人のことを嫌いになれないです」。
――えっ? と言うと……。
「だって、その人のそういう部分だけを見て好きになったわけではないから。辛いこと、『イヤだな』と思うことをされたとしても、絶対に『嫌い』とは言えない気がします」。
――人間ができてるというか……。争いごとをしないタイプとか?
「基本しません。平和主義ですね。あっ、ゲームとかは負けず嫌いで、自分が勝つまでやりますけど(笑)。現実の争いは面倒くさいと思って、関りません」。
――終盤に海に入るシーンもありました。ああいうのは衣裳の関係からも、何度も撮れなかったりするんですよね?
「あそこは雨待ちが長くて。粘って粘って、やっと晴れて、日が暮れる直前まで撮っていました。監督がカメラの隣りにずっといてくれたのが印象に残ってます。『もっと感情をぶちまけていいんだよ』と言いながら、一緒に海でビショビショになって戦ってくれました。それでああいうシーンになったのではないかと」。
――ラストの沙奈の表情も意味深でした。
「台本には『何とも言えない表情で……』とだけ書いてあったんですよ。そこもいろいろ考えました。アイドルっぽくしたほうがいいのか、涙を流したほうが伝わるのか。でも、あの状況のなかですから。きれいに……という意識は全然なかったですね」。
――主演映画を1本撮って、収穫は大きかったですか?
「視野が広くなりました。台詞の裏にある心情や本当に伝えたいことを、今までより深く掘れた印象はすごくあります。あとは責任感。真ん中だからこそ、言葉で周りに伝えるのはもちろんアリだと思いますけど、私が素敵だと思った主役の人は背中で伝えてくれたことが多かったので。同じことを私が今の年齢でできたのかわかりませんけど、芝居で共演者に何かを届けられて、何かを変えられて、それによって良い表情をしてもらったり、さらに作品全体が良くなったらいいなと思って、今回やらせていただきました。そういうのは主役をやってみないとわからないから、すごくいい経験になりました」。
――「今の年齢で」という言葉も出ましたが、花純さんは年末で20歳になりますね。意識してますか?
「10代だからこそアイドルの役もできたし、何がやりたいか聞かれても、まだ明確な答えは出さなくていいと思ってました。『若い』と自分で言ってもいい年齢の間に、何でもやりたくて。たとえ失敗しても、いずれ自分のためになると思うので。やりたいことを考えるのは20歳になってから。それまではあまり考えていません」。
――早く大人になりたい派ではあります?
「そうです。早く30代になりたいです。大人の人と対等に話せるように」。
山谷花純(やまや・かすみ)
生年月日:1996年12月26日(19歳)
出身地:宮城県
血液型:O型
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2007年にエイベックス主催のオーディションに合格し、2008年にドラマ「CHANGE」(フジテレビ系)で女優デビュー。主な出演作はドラマ「あまちゃん」(NHK)、「ファーストクラス」(フジテレビ系)、「手裏剣戦隊ニンニンジャー」(テレビ朝日系)、映画「人狼ゲーム プリズン・ブレイク」など。1st写真集「baby’s breath」が発売中。初主演映画「シンデレラゲーム」は10月1日(土)よりシネマート新宿ほかで公開。