PICK UP ACTRESS 恒松祐里

PICK UP ACTRESS 恒松祐里

PHOTO=城方雅孝 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

クラリネットの天才に金髪の悪役
自身とかけ離れた役に続けて挑戦

 
 
――「ハルチカ」で天才クラリネット奏者の芹澤直子を演じていますが、今まで吹奏楽に触れたことはありました?

「一切なかったです。楽器はピアノで『ねこふんじゃった』くらいしか弾けなくて(笑)。あとは学校の音楽の授業でリコーダーをやっていたくらい。全然わからなかったですね」。

――じゃあ、クラリネットの練習は大変だったでしょうね?

「プロ奏者の役だったので、曲数は少なかったんですけど、速く演奏するシーンが多くて。指をすごく速く動かすから、授業中も筆箱をクラリネット代わりに、指使いの練習をしていました。『ちゃんと勉強しろよ』という話ですけど(笑)。電車のなかでも、指を動かしていましたね」。

――音はスムーズに出たんですか?

「出ました。でも、指使いが速いところは音がズレちゃって。肺活量も必要だし、本当に吹奏楽をやっている人はすごいなと思いました」。

――4ヵ月ぐらい練習したそうですが……。

「最初はウォーミングアップをしていて、さっそく『チャルダッシュ』という速い曲の練習に取り掛かりました。それを演奏するシーンの撮影が最初のほうだったので、ギリギリで間に合わせていった感じで」。

――初心者にはハードな課題だったのでは?

「そうですね。とにかくプロの奏者に見えるように頑張りました。クラリネットを家に持ち帰らせていただいて吹いたり、撮影中もホテルに持っていって、音は出せないんですけど、鏡の前で指使いや吹いている姿を練習しました」。

――直子の役柄的には、難聴を抱えて心が屈折した感じで。

「ムスッとした役でしたね(笑)。全然笑わなくて。芹澤さんが、昔から音楽の世界にいて、いきなり難聴になったのは、たとえば私が女優をやっていて、急に声が出なくなったような感じだと思うんです。すごく戸惑うだろうし、どうすればいいのかわからなくなる。冷静な芹澤さんでも、苛立ちが態度に出ちゃう部分があったのかなと思います」。


――心情はわかると。

「私でも悩むだろうし、クラリネットへの情熱はわかります。ただ、私は芹澤さんほどクールではなくて、どちらかといえば明るいほうなので、性格は違いました」。

――そこは女優さんとして、役になるスイッチが入って?

「原作を参考にしようと思い、たくさん読んだのですが、衣装合わせのとき、監督に『原作のことは全然考えないでいい。現場の空気で演じてほしい』と言われました。それからは逆に、原作を読むと考えすぎちゃうから、読まないようにしました」。

――原作は人気青春ノベルですけど、そういうアプローチだったんですね。

「もちろん役の性格は前提に置きながら、みんながそのときの感情で演じたところはありました」。

――直子はヒロインのチカ(橋本環奈)にひどいことを言うシーンもありましたね。「あなたみたいな人と演奏すると……」とか。

「ひどいですよね(笑)。プライドが高くて他人との壁が高い芹澤さんに、チカちゃんはズカッと入ってきたので、『そういう反応になるんだな』と台本を読んで思いました」。

――後半には、やさしいところも見せてましたけど……。

「意外といい子でした。チカちゃんにどんどん惹かれたり、吹奏楽部の人とは違うチカちゃんとの関係性が見える部分がたくさんあって、そこは良かったと思います」。


――寝ている男子の頭をブッ叩いて起こすシーンもありました。

「結構Sな部分もありましたね。あれは一番楽しかったシーンです(笑)。普段なかなかやれないので。最初はちょっと遠慮して叩いて、監督に『もっとやって』と言われたので、『では』と本気で叩きました(笑)」。

――最後にはテンションの高いところも出して。

「弾けちゃいましたね。『笑うシーンがあって良かった』と思いました。吹奏楽部がまとまっていたのを、芹澤さんは違うところから客観的に見ている役だったので、寂しかったというか。練習も吹奏楽部で集まってやるから、みんなはすごく仲良くなっていたんですね。私はそこに途中から参加する感じで、孤独でした(笑)」。

――今回は現場でも、祐里さんは役柄に合わせて、共演者と距離を取っていたんですか?

「静かにしていました。私にしては珍しく(笑)。『くちびるに歌を』の合唱部のときとは違いましたね。どの現場でも、いろいろな人と仲良くなれるんですけど、今回はあえて距離を置きました」。

――普段も友だちと集まるとワイワイするタイプ?

「『くちびるに歌を』の女子で作ったLips!というグループがあって、そのメンバーで遊ぶときが一番テンションが上がります。(葵)わかなとか(柴田)杏花とか(山口)まゆとかみんなで、おしゃべりしたり、カラオケに行ったり、電車でちょっと遠いところにプチ旅行もしたり。すごく楽しいです」。

――いまだに仲がいいんだ。音楽つながりの話で、ツイッターを見ると祐里さんはライブにもよく行くようですね。星野源さんとか、SEKAI NO OWARIさんとか。

「J-POPも好きですけど、聴くのは小さい頃から洋楽が多いです。最近はジャズにハマっていて、プレイリストをシャッフルしてノラ・ジョーンズさんとかを聴いたり。気分を上げたいときはオアシスなどのロック、落ち着きたいときはジャーニーとか古めの曲を聴きます。女性だとアデルさんとかテイラー・スウィフトさんとか、カントリー系も好きです」。

――幅広いですね。

「日本の歌は、カラオケが好きなので、歌手より曲で調べたり。Charaさんのモノマネはずっと練習しています。あの特徴ある歌い方で『Swallowtail Butterfly~あいのうた~』や『やさしい気持ち』をマネしているんです」。

――どこかで披露したことは?

「ないです。個人的に楽しんでいるので(笑)」。


 
 

黒板を消すのが大好きなので
高校を卒業するのが寂しいです

 
 

――3月にはあと、「サクラダリセット」の前篇も公開されますね。こちらで演じた岡絵里は金髪のインパクトのある役で。

「本当に強烈な役で、楽しかったです。芹澤さん以上に私自身とかけ離れていて、別次元にいるようでした。初めて金髪にしたのも大きかったです」。

――初めて鏡で見たときは?

「意外と馴染んでいました。『金髪のほうが好きかも』と思ったし、親にも『黒髪より似合っている』と言われて。3ヵ月くらい金髪でいて、黒髪に戻したとき、逆に違和感があって戸惑いました」。

――劇中では、自分で「私、悪いヤツだから」と言っていたり。

「この役のためにプライベートでも革ジャンを買って、普段から着ていました。『やっぱり金髪には革ジャンが合うな』と思いつつ、ポッケに手を入れて歩いたり。私生活でも、ちょっと悪い子になっていました(笑)」。


――周りはビックリしたんじゃないですか?

「誰にも金髪にすると言わず、いきなり学校に行ったら『誰?』みたいになりました。金髪に制服ですごく浮いていて、階段を歩いていると後輩に避けられたり(笑)。『ヘンな先輩が来た』みたいな感じに見られたんですけど、それも楽しかったです」。

――役にもスムーズに馴染めました?

「『サクラダリセット』のほうは、原作をすごく参考にさせていただきました。赤い(カラーコンタクトの)目の女の子なので、特徴が出ている部分に赤いペンで線を引きまくったり(笑)。『ケッケッケケケー』という変わった笑い方をする子で、どうやったらいいのか全然わからなくて、すごく大変でした。自分でいろいろな笑い方を録音して研究しました」。

――結局、ポイントにしたのは?

「『フフフフフ』とか『へへへへへ』とか結構録ったんですけど、やっぱり『ケ』がこの役には合ってました。主人公の浅井ケイを憎んでいるから、“ケイ”を逆にして『イケケケケ』と笑っていたんです(笑)」。

――ネタじゃないですよね(笑)?

「それが笑いやすかったんです。“イ”を最初に入れて『イッケケケケ』って。これはいいなと。しかも“ケイ”だから“イケ”と覚えることで、どう笑ったか自分で思い出せます(笑)。イヤーな感じの笑い方になりました」。

――本当に新境地の2作になりましたね。

「どちらも私のなかになかった役でした。あと『ハルチカ』では、監督に本番のたびに『新鮮な気持ちで』と言われていたのですが、大切な考え方だと改めて思いました。お芝居はやっぱり考えちゃうし、毎回テストとかもあるけど、本番は役にとっては、その瞬間しかないものだから。新鮮な気持ちは本当に大事ですよね」。

――一番難しいことかもしれませんけど。

「それを監督に毎回言われたので、自分の体に染み付きました。全編通してクセが付くくらい教えていただいたのは、すごく良かったです」。


――ところで、祐里さんは3月で高校卒業なんですよね。

「制服を着なくなるのが寂しいですね。あと私、黒板を消すのがすごく好きで(笑)。小学生の頃から、日直でなくても消していたんです。それができなくなると思うと、すごく悲しくて」。

――きれいにするのが好きだったんですか?

「そうなんです。黒板をきれいに消すのが好きだったし、うまかったんです。体重をかけて、縦に力を入れて消す(笑)。丁寧にやります。撮影でも教室のシーンで黒板を使うと、もう消したくて消したくて(笑)」。

――高校生活の思い出は、どんなことがあります?

「一番楽しかったのは修学旅行ですね。北海道に行って、自由時間にみんなでラーメンを食べに行ったり。時計台とかいろいろなところで動画を撮影して、8分ぐらいの映画みたいなものを作りました」。

――青春っぽいですね。

「時計台で女子同志がケンカする修羅場をやったりしました。いい思い出です」。

――夜もガールズトークで盛り上がったり?

「私は夜はほとんど、その映画の編集作業に追われていました(笑)」。

――学校がなくなる分、4月から何か始めようとは?

「ギターを弾けるようになりたくて、今も家で練習しています。小さい頃から家にギターがあって、弾けたらカッコイイし、自分で曲も書けたら楽しいと思って」。


――今はどんな段階ですか?

「コードは何でも弾けてジャカジャカはできますけど、速い曲だとまだできません。弾けると言えるのか言えないのか、よくわからないレベルです(笑)」。

――どんな曲で練習しているんですか?

「曲というか、練習アプリがあるんです。音が違っていたら『違うよ』と言われるので『ごめんなさい』みたいな。どんどんテンポが速くなって、たまにアプリとケンカします(笑)。『何でできないの!』みたいになって。そういうときは気分を晴らすために、miwaさんや片平里菜さんや藤原さくらさんの曲を弾いたり。英語の歌だと、シンディ・ローパーさんの『トゥルー・カラーズ』は弾けます。あとウクレレも家にあって、♪カーマカマカマ~というのは(カルチャー・クラブの『カーマは気まぐれ』)は歌いながら弾けます」。

――なら、結構弾けるんじゃないですか? 合唱、吹奏楽とやって、次はバンドものの映画が来るといいかもですね。

「それは来てほしいです! バンドもの、ぜひやりたいです」。

 
 


 
 

恒松祐里(つねまつ・ゆり)

生年月日:1998年10月9日(18歳)
出身地:東京都
血液型:B型

 
 

【CHECK IT】
子役としてデビューし、2013年にFUNKY MONKEY BABYS「ありがとう」のPVに出演。明石家さんまと共演し、同年の「FNS27時間テレビ」(フジテレビ系)内で明石家さんまが選ぶ「ラブメイト10」の6位になり話題に。これまでの主な出演作は映画「くちびるに歌を」、「ホラーの天使」、「俺物語!!」、配信映画「その一言が言えなくて」(ネスレシアター/主演)、ドラマ「まれ」(NHK)、「真田丸」(NHK)、「5→9~私に恋したお坊さん~」(フジテレビ系)など。映画「ハルチカ」は3月4日(土)に公開。「サクラダリセット」前篇は3月25日(土)、後篇は5月13日(土)に公開。
 

詳しい情報は公式HPへ

 
 
「ハルチカ」

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「サクラダリセット」

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