PICK UP ACTRESS 恒松祐里

PICK UP ACTRESS 恒松祐里

PHOTO=河野英喜 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

映画「殺さない彼と死なない彼女」に出演
奔放な親友を見守る地味なメガネ女子役

 
 

――「殺さない彼と死なない彼女」でメガネの地味子を演じましたが、華やかなオーラがある祐里さんに地味な役は難しかったのでは?

「そんなこともないです。私、学校では地味なタイプだったので。親友のきゃぴ子のように“ザ・JK”みたいな感じでキャピキャピできなかったんですよね。客観的な立場でクラスにいて、地味子と通じるところがありました」。

――メガネは普段かけているんですか?

「かけているので、すごく落ち着きます。同世代でメガネをかけてない子がかけてる役をやると、本番が終わるたびに外して『痛い痛い』と言うんです。でも私は今回、ずっとかけ続けて、衣装は着替えたのにメガネはかけたまま帰ろうとしちゃって、『あっ、ごめんなさい』ということもありました(笑)。だから、本当に自然に演じることができました」。

――奔放なきゃぴ子が複数の恋人と振ったり振られたりするのを、地味子は冷めた目で見ているようで、実はすごく気に掛けていました。地味子にとってきゃぴ子は、どんな存在なのでしょう?

「幼稚園の頃は、かわいいきゃぴ子が憧れだったかもしれませんけど、小学校、中学校、高校と進むにつれて、本当にかけがえのない存在になっていったんだと思います。きゃぴ子は自分を好きなのが良いところで、地味子は自分をそれほど好きになれないから羨ましい。でも、きゃぴ子は地味子が客観的でいられることを羨ましがっていて、お互いにないものねだりをしつつ、良いところも悪いところも認め合う関係だと感じます。地味子は今もきゃぴ子に憧れはあって大好きだけど、『なんでこんなにバカなんだろう?』と呆れることもある。家族のような親友なんでしょうね」。


――愛されたがりのきゃぴ子を、地味子は「死んでしまいそうで怖い」とまで心配してました。

「そこまで考えてしまう地味子も危ういですけど(笑)、高校生ならではの危うさかなと思います」。

――陰できゃぴ子のことを「かわいくない」とか揶揄するクラスメイトに「黙れブス!」と声を荒げたりも。

「自分の大切な人を守りたい気持ちから、咄嗟に出ちゃった言葉なんでしょうね。私も大切な友だちを悪く言われたら、すごく嫌な気持ちになりますけど、『黙れ!』とは……言えたら言いたい(笑)」。

――地味子自身の内面も掘り下げました?

「地味だけど、ただボソボソしているのではなく、すごく表情豊かで、考えてることもたくさんあると思いました。『黙れブス!』みたいにギャップのある台詞も言うし、『40秒で支度しな』という『天空の城ラピュタ』のモノマネもするので、家で言い方を練習しました(笑)」。

――恋人の1人と別れて落ち込んでいたきゃぴ子を、クレープ屋に誘う場面ですね。

「元ネタがドーラというキャラクターで、動画を調べて動きを真似して、髪を一瞬、三つ編みのように両手で上げたので、わかる人はわかると思います。そういう小ネタを挟みつつ、基本的にはきゃぴ子が攻めて、地味子は受けるお芝居でした。私は攻める役が多かったので、受けのお芝居は新鮮で、『ここで表情を変えてみる』とか工夫して演じました」。


――地道なところで工夫していた感じ?

「そうですね。派手な役ではないので、やっぱり受けているときの表情の変化とかで見せていくしかなくて、そこを工夫しました。あと、監督が長いテイクを重ねる方だったので、たくさん撮る中で、ちょこちょこ変えて自分で実験しながらのお芝居でした」。

――祐里さんと堀田真由さんで演じる地味子ときゃぴ子のシーンについて、小林啓一監督は「やればやるほど面白くなっていく」とコメントしてました。

「どんどんアイデアが出てきちゃって、監督も何か楽しそうでした(笑)。すべてのシーンをワンカットで撮っていて、私たちもそれに合わせて『この辺にいたら、うまいタイミングで出られて、いい感じに映るかな?』とか、ベストの動きを考えながらやるのが楽しくなりました」。

――特に楽しかったシーンというと?

「それが、一番楽しかったシーンはカットされちゃって(笑)。実はきゃぴ子と地味子と弟の八千代が絡むシーンがあって、3人がいかにいい感じで動けるか、どのタイミングで振り返るかも監督と相談して演じたんです。いつかDVDになったら、見られるかもしれません」。


 
 

心の底で繋がっている親友だから
遠回しな愛情表現の台詞が出ました

 
 

――「女の子はみんなかわいい」というきゃぴ子に、地味子が「遠目はね。あなたは近くにいてもかわいい」と返したのは、祐里さんの思いつきだったとか。

「そうなんです。女の子は誰でもメイクとかして遠目にはかわいくなれるけど、きゃぴ子は近くで見ても、心からきれいだからかわいい。地味子なりの遠回しな愛情表現として『遠目はね』という台詞を提案したら、OKをいただきました。ほぼ世紀末さんの原作のままの台詞の中で、恒松の考えた言葉がちょっと入って光栄です(笑)」。

――咄嗟に出た言葉だったんですか?

「地味子としてきゃぴ子に接していて出た、深いひと言です(笑)。地味子ときゃぴ子はいつも仲が良いのか悪いのかわからない会話をしてますけど、心の底では繋がっていて、何を考えているのかわかる。理想的な親友の形なんですよね。だから遠回しな言葉でも、受け止めてもらえました」。

――地味子はさり気なく、きゃぴ子が食べたがっていたクレープの割引券を持っていたり、やさしいですよね。

「地味子はきゃぴ子の王子様的な存在なので、きゃぴ子ファーストで動いているところはあると思います」。


――きゃぴ子の台詞にあった「王子様」感は意識したんですね。

「きゃぴ子を励まして、手を繋いで体育館を走っていくシーンでは、王子様が『お姫様、どうぞ』という感じの手の取り方を意識しました。そんなふうに、ちょこちょこ王子様感を出していこうと思ってました」。

――その体育館倉庫での「40秒で支度しな」までのシーンは、何テイクも撮ったそうですね。

「いつの間にか夜になっていたくらい、結構なテイクを撮りました(笑)。大変でしたけど、あれだけこだわるのは、舞台で稽古をしてから本番をやるような気分でした。映画はだいたい一瞬で撮り終わって、自分の中で後悔があっても、どんどん前に進む感じですけど、今回は『練って練って本番、みんなが納得してOK』という形で心地良かったです」。

――堀田真由さんとは同い年で同じ事務所です。

「お仕事以外ではなかなか忙しくて、『ごはんに行こうよ』と言いながら会えないんですけど(笑)、『虹色デイズ』ではあまり絡みがなかったのが、今回は親友役でガッツリ一緒にいて、嬉しかったです」。

――ライバル意識もありません?

「すごく素敵な女優さんだと思います。お芝居が繊細できれい。つい見入っちゃいます。ライバル意識というより、ただのファン(笑)。きゃぴ子を演じているときも、ずっと『かわいいなー』としか思いませんでした」。

――そんな中で、祐里さんは10月で21歳になりました。

「20歳のときより、お酒は少し飲めるようになった気はします。前は2杯飲んだら寝ちゃったのが、最近は寝そうだと思ったら、お水を飲んだり、自分で管理できるようになりました。誕生日の前に五島列島に帰って……『帰って』と言うと『地元か?』って感じですけど(笑)」。


――4年前に公開された映画「くちびるに歌を」のロケ地ですね。

「第二の故郷に里帰りして、バーで日本酒を飲んで、グラスで5杯くらいいけました。そこで『結構飲めるようになったな』と思ったんです。でも、帰ってから(葵)わかなに誕生日を祝ってもらったら、梅酒のロックちょっとで酔っちゃって……。『結局弱いね』と言われて、『いや、違うの!』とずっと言ってました(笑)」。

――五島列島に行ったのは、何かの撮影だったんですか?

「違います。ただの里帰りです。撮影でお借りした福江中学の校長先生にたまたまお会いして、『明日来んば(来なよ)』と言われて行ったんですね。そしたら、生徒たちの合唱を聴かせていただきました。合唱コンクールの練習らしくて、私は映画の柏木先生のように腕を組んで聴いていたら、泣きそうになっちゃって(笑)。『私があそこで歌っていたのを、柏木先生はこうやって見ていたんだ。私はもうこっちの立場なんだ』と気づいて、感慨深かったんです。泣いたら引かれそうだから堪えましたけど(笑)、撮影から5年の月日が流れたのを実感して、『私も大人になったんだな』と思いました」。

――それは心が震えますよね。冬場には何か楽しみはありますか?

「クリスマスは、うちでは家族みんなでサンタさんになって、たぶん今年もデビルケーキを作ると思います。寒いのはアレですけど、冬のコートとかを出して着るのは楽しみです」。

――少し早いですが、来年に向けて考えていることもありますか?

「20歳で初めてミュージカルを経験させていただいて、ずっと夢だった世界に入れて、得たものはすごく大きかったです。そこからよりステップアップできるように、レッスンとかで自分を磨いていけたらと思います」。


――今も出演作が相次いでますが、「主役をやりたい」とも思いますか?

「やりたいです! 来年こそは呼んでいただきたいです」。

――祐里さんは品の良さが漂ってガツガツしたイメージはありませんが、そういう上昇志向みたいなものは持っているんですね。

「それはもちろんあります。自分が主役で映画に出てみたいと思っているので、そんな日を楽しみにしていてください!」。

 
 


 
 

恒松祐里(つねまつ・ゆり)

生年月日:1998年10月9日(21歳)
出身地:東京都
血液型:B型
 
【CHECK IT】
子役としてデビューし、2015年に映画「くちびるに歌を」に出演して注目される。主な出演作は映画「ハルチカ」、「サクラダリセット」、「散歩する侵略者」、「虹色デイズ」、「3D彼女 リアルガール」、「凪待ち」、ドラマ「まれ」(NHK)、「真田丸」(NHK)、「もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~」(日本テレビ系)、「都立水商!~令和~」(MBS・TBS系)、ミュージカル「ドン・ジュアン」など。映画「殺さない彼と死なない彼女」は11月15日(金)より全国ロードショー。映画「シグナル100」が2020年1月24日(金)より公開。
詳しい情報は公式HPへ
 

「殺さない彼と死なない彼女」

配給:KADOKAWA/ポニーキャニオン
詳しい情報は「殺さない彼と死なない彼女」公式HPへ
 

 

©2019映画『殺さない彼と死なない彼女』製作委員会
 
 
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