FRESH ACTRESS 吉田志織
PHOTO=城方雅孝 HAIR&MAKE=anna(M-rep by MONDO-artist)
INTERVIEW=斉藤貴志
映画「チワワちゃん」でメインキャスト
自由奔放で誰も素性を知らない役を熱演
――志織さんは地元の北海道の居酒屋でバイト中に、急に「東京に行って女優を目指そう」と思い立ったそうですね。
「自分の中でずっと『いつ東京に行こうか?』と迷っていたんですけど、その日に居酒屋でお皿を洗いながら、不意に『あっ、明日行こう!』と思いました(笑)」。
――何かきっかけがあったわけではなく?
「たぶん溜まっていたボルテージが一気に上がって、『今だな』となったんです。“思い立ったらすぐ”というタイプなので、その日にバイトをやめて、お母さんに『明日、東京行くから』と言って出てきました(笑)」。
――そんなに急で、お母さんに引き留められませんでした?
「『うそーっ!?』と言われましたけど、お母さんはちょっと天然なので(笑)、『気をつけてね』って応援してもらいました」。
――女優志望は昔からあったんですか?
「小学5年生の頃、『タイタニック』を観て以来です。それからいろいろな映画を観てきましたけど、今でも一番好きです。たぶん本当に私の好みに合っていて、映画の質感とか出ている人の感じとか全部含めて、ただただ好きという感じですね。最初はレオナルド・ディカプリオさんがカッコイイなというのがあったし、ケイト・ウィンスレットさんもきれいでローズになりたかったんです。『映画の中で生きてみたい』と思ったのはそのときからでした」。
――それからずっと「いつか」と思っていたんですか?
「そうですね。学習発表会の劇とかではちょくちょく立候補して、メインの役を頑張ってやっていて、演技は好きだったから『いつ行こう?』というのは常に考えていた気がします」。
――とはいえ、いきなり東京に出てきて、勝算はあったんですか?
「生命力には自信があったので、何も考えずに出てきました(笑)。自分で事務所を探して入るのかと思ってましたけど、東京に来た1日目に携帯ショップで携帯を充電していたら、グループのダンスの先生をやっている方に『レッスンを受けに来ない?』と声を掛けられたんです」。
――いきなり? まあ、それだけ光っていたんでしょうけど。
「音楽も好きだったので、芸の肥やしというか、いろいろなことを吸収したくて、1年くらいダンスのレッスンを受けていました。芸能活動もデビューもしてなくて、事務所に所属という形でもなかったんですけど、そのグループのスタッフさんのルームメイトが、今の事務所のマネージャーさんだったんですね。紹介してもらって『演技をやりたいんです』と伝えたら、スカウトしていただけました」。
――すごく強運みたいですね。
「東京に行くときに、いろいろな人から『どんな人がいるかわからないから気をつけてね』と言われましたけど、初日にその先生に会えたのは良いご縁でした。ダンスのレッスンでリズム感が鍛えられたので、ありがたかったです」。
――そして映画「チワワちゃん」では、ミュージックバーに集まる仲間に加わるチワワの役にオーディションで選ばれました。何かアピールしたことはありました?
「武装していきました。チワワっぽいショートパンツを穿いて、ピッチピチの赤いTシャツで毎回行ってました」。
――他の人は毎回違う服を着ていたそうです。チワワはバーでVIP席の男たちから600万円の入ったバッグを盗んで逃げるような大胆な女の子ですが、思い立った翌日に上京した志織さんと通じるところもあるのでは?
「私は人のものを盗ったりはしませんけど(笑)、最初に台本を読んだときは、チワワと私は似ているかもしれないと思いました。でも、リハーサルで演じてみたら意外と違っていて、私は彼女ほど大胆ではないことを実感しました。北海道にいたときの私のほうがチワワに近かった気がします。だからこそ、わかる感情はありましたけど、大変だったことも多かったです」。
――似ていたのはテンションの高さとか?
「ノッていける感じは私もあります。でも、私はあそこまでテンションが高くないです。明るいとは思いますけど、めちゃくちゃ明るいわけではないし……。チワワのパワーが強すぎて、そこまで持っていくのは大変でした」。
――チワワたちがバカ騒ぎをしていたクラブやナイトプールで遊ぶことはあるんですか?
「私はプライベートでは行きません。ナイトプールも今回の撮影で初めて体験して、楽しかったです。普段はああいうところでは遊びませんが、そのときはチワワの気持ちになっていたので、めちゃくちゃテンションは上がりました」。
――普段の志織さんが、それに近いテンションになるのはどんなとき?
「ライブとかですね。私、音楽が本当に好きで、聴かない日はないんです。『チワワちゃん』の撮影のときは監督がいろいろな曲が入ったCDを作ってきてくれて、『映画のイメージがわかりやすいように』という意味もあったので、それを聴いてました。音楽は私にとっては頼りにしているものでもあって、気持ちがうまく切り替えられないときにも助けになります」。
――劇中でチワワはUKバンドPale Wavesの「Television Romance」が好きだったことになっていました。志織さんはどんな音楽が好きなんですか?
「特に好きなジャンルはないです。フォークソングも演歌も歌謡曲も聴きます」。
――ロックフェスに行ったりも?
「フェスは去年の夏に初めて行きました。人混みが苦手なので、どうしようかと思っていたんですが、行ってみたくて。『サマーソニック』にPale Wavesが来るということで行ったら、チケットを買うところで、たまたま監督と会ってビックリしました」。
――チワワが志織さんと違っていたことは、テンションの高さの度合い以外にはどんなことですか?
「彼のために何でもするところですかね? 600万円を盗ったのも、自分が楽しいことをしたいからでもあるけど、彼のことも抱えていたので。そういうところは私とは似てないと思います。常識とか全然関係なく盗りに行っちゃうところも、私にはないです」。
現場はもちろんプライベートでも
ずっと役でいるようにしてました
――チワワは殺されたと報じられてから、毎日のようにつるんでいた仲間たちが誰も彼女の過去や本名すら知らなかったことがわかって、素性は謎のままでした。演じる上では、劇中で描かれてない彼女の背景も考えたんですか?
「考えたといえば考えたと思います。そもそも原作の岡崎京子さんのマンガは34ページしかなくて、しかもチワワの出番は映画より全然少ないんです。だから台本が元にはなりましたけど、バックボーンは大事なので、どういう子だったのかは考えました。でも、そんなにこだわってもいません」。
――やっぱり場面ごとのテンションが一番大事だったから?
「そうですね。リハーサルでは、最初チワワのアップダウンの激しさについていけなくて、『大丈夫かな?』と思ってました。でも、無理してテンションを上げても監督にバレるし、自分でも『今、できてなかった』とわかるんです。だからもう、ずっとチワワでいようと思いました。現場ではもちろん、プライベートでもできる限り、自分の中にチワワがいるように心がけました。それを続けていたら、走りながらのアクションシーンのリハーサルのとき、初めて『これがチワワのテンションの出し方なんだ』と納得できた瞬間があったんです」。
――600万円入りのバッグを盗って、夜の街を逃げるところですか?
「そのシーンの練習中でした。たぶん体を動かしていたから頭がスッキリしたのもあって、自分の中で『あっ、これってチワワだ』と思って、その感覚を忘れないようにしました。クランクインの初日には、監督から『もうやりたいようにやって』と言われて、私は新人だから困ることもありましたけど、それからも基本的にはやっぱりチワワとして生きました」。
――その逃げるシーンでは、チワワは走りながらバンザイしたりしてました。
「あそこはハイテンションでしたし、モデルになって売れてきて、みんなにしゃぶしゃぶをおごってあげるシーンもそうでした。人って自分が求められたらうれしいじゃないですか。たぶんチワワはそういう感情が人一倍強くて、それが彼氏に注ぐエネルギーにもなっていたし、愛とか性欲とかいろいろな欲求がゴチャ混ぜになって、パワーになっているんじゃないかと思いました。だから、すごく人間っぽい子だなと思います」。
――この映画では映像の激しい切り替わりがありました。時間にすれば数秒のシーンも含め、すごくいろいろなカットを撮ったんじゃないですか?
「たくさん撮ったと思います。目まぐるしい感じでした」。
――特に大変だったのはどこですか?
「プールに飛び込むところは、私は高所恐怖症なので結構怖かったです。でも待ってるほうがイヤで、すぐ飛び込みました。他には何だろう? 全部大変だったと思います(笑)」。
――キスシーンもいっぱいありました。
「そういう体を張ったシーンは、ちょっとキツかったかな。チワワとしては大丈夫ですけど、私が大丈夫じゃないという感じでした。現場にいてカメラが回っているときは、特に抵抗はなかったんです。でもホテルに帰ったら、自分で『何か傷ついてるな……』と感じました。だから、たぶんそこは大変だったんだと思います」。
――劇中では遊び人ふうのキスに見えました。
「チワワでいるときは何も感じてないんです。ただやりたいから、やっているだけ。それはスイッチがオンになっているからで、ホテルに帰ってオフになって、自分に戻るとドッと疲れたり、心身が削られる感じがしました」。
――玉城ティナさんとは女性同士で水中でのキスシーンがありましたが、あれは物理的に大変だったりも?
「体を支え合うのが大変で、下に何か置いて撮ったりしました。女の子同士なので力もあまりないし、まして玉城さんは私を担ぐ形でやらないといけなかったので」。
――一方で、さっき出たアップダウンということでは、チワワはアンニュイな表情を見せたり、涙するシーンもありました。浅野忠信さんが演じるカメラマンのサカタにキツイことを言われながら撮られるところは、ズキズキきました?
「ひとつひとつの言葉がそうでしたけど、特に『いつか若くなくなるから、若いねって言われるんだ』というひと言にウワッとなって、泣いてしまいました。それまでチワワの周りにいた友だちって、芯を突いてくることはなかったと思うんです。でもサカタさんは年上ということもあって、そういうことを言われて、くるものがあっただろうし、それで持っていかれちゃったんです。『この人は私を愛してくれるのかも』と思ったんですよね」。
――すぐにチワワの新しい彼氏になりました。
「すっごいイヤなことを言われたけど、それはたぶん、チワワが表面的には隠して気づかれないようにしながら、内面で抱えていたことだったんです。だから、『この人だったら私の寂しさを埋めてもらえるかもしれない』と思って、泣いてしまったのを覚えています」。
――若手実力派と呼ばれるキャストたちの中に新人として入って、主人公のミキ役の門脇麦さんとの2人芝居もありましたが、プレッシャーは感じませんでした?
「最初はありました。でも、本読みのときに門脇さんや成田(凌)さんたちとみんなで集まったら、雰囲気がすごく良かったので、大丈夫になりました。あと、皆さんが気にかけてくださって、『みんながチワワを作るし、チワワがみんなを作る』と言われて、『そっか』と思いました。だから、現場では緊張しなかったです」。
――チワワには「絶対ビッグになってやる」という台詞もありました。志織さんもハリウッド女優を目指しているんですよね?
「はい。今はアジアからグローバルに行く女優さんも多いみたいで、良い波だと思いますけど、そこに乗っかるだけではなく、ちゃんと実力と柔軟性があって、必要とされる人になりたいです。世界で活躍して、いろいろな人を元気付けられるようになれたらと思ってます。たくさんの人に知られることによって自分が苦しくなるかもしれないけど、それ以上に演技が好きだから、自分の演技を世界の人に見てほしい気持ちがあります」。
――では最後に、チワワたちは手に入れた600万円を3日間のお祭り騒ぎで使い切ってしまいましたが、志織さんだったら600万円あったら、何に使いますか?
「海外旅行をします。LAやニューヨーク、そしてリゾート系のハワイとかも回りたいです。あとは日本ですけど、金沢でおいしいものを食べます(笑)」。
吉田志織(よしだ・しおり)
生年月日:1997年3月21日(21歳)
出身地:北海道
血液型:A型
【CHECK IT】
2017年にドラマ「クズの本懐」(フジテレビ/FOD)で女優デビュー。同年に「心が叫びたがってるんだ。」で映画初出演。その他の主な出演作は、ドラマ「東京アリス」(Amazonプライム・ビデオ)、「花にけだもの」(フジテレビ/FOD)、「FHIT MUSIC♪ ~Da-iCE~」(dTV)、映画「honey」など。映画「チワワちゃん」は1月18日(金)より全国ロードショー。「吉田志織 in チワワちゃん ビジュアルブック」(KADOKAWA)が同日に発売。
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「チワワちゃん」
配給/KADOKAWA
詳しい情報は「チワワちゃん」公式HPへ
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