音楽性の向上とファンの広がりを両立するために~callmeのライブに見る挑戦~

MIMORIのクールな作曲センス

 1年前、callmeの1stアルバム「Who is callme?」を聴いたときの衝撃は忘れられない。セルフプロデュースを掲げ、作曲はすべてMIMORIが手掛け、作詞は3人で振り分け。それまでにもシングルやライブで曲を聴いてはいたが、13曲揃えたアルバムのクオリティときたら! 何度もリピートして聴いた。飽きるどころか、どんどんのめり込んだ。
 柱はやはりMIMORIが生み出したメロディ。Dorothy Little Happy時代から趣味でDTMをやっていると聞いていたが、これほどのメロディメイカーだったとは。どの曲もシャレていて並外れた才能を感じた。特にジャジーなピアノをフィーチャーした「I’m alone」などが耳に付いて。
 彼女自身もこのラインが最も得意らしく、今年4月に出た2ndシングルのカップリング「Real love」を経て、3rdシングルでこれまた傑作の「Confession」と続いたピアノ路線を「callmeの軸」とインタビューで話していた。
「Confession」は洋楽の香りもする本当にカッコイイ曲で、両腕を駆使したタットダンスから入る流麗な振りもシビれる(振付はKOUMIが担当)。ただ、昼間の屋外のフリースペースでのイベントなどで観ると、クールさが場に合わない印象も否めなかった。
 もはやライブでミックスが飛び交う系のアイドルとはまるで違う場所にいるcallme。そのハイブロウな音楽性を支持するファンは少なくないが、ベースにはアイドルとしての立ち位置もある。セルフプロデュースでどんな地平に進むのか。クリエイティブゆえの試行錯誤は常に続いているのだろう。
 
 

軸をブラさずポップを取り込む

 そんなcallmeが2ndアルバム「This is callme」の発売に先駆け、単独ライブ「Ultra callme」を開催した。9月16日、ヤマハ銀座スタジオ。地下の照明暗めのスペースで金曜の19:30開演。callmeのライブには打ってつけに思えた。
 アルバムの新曲をいち早く披露とのことで、スタートからリード曲「Sing along」。ピアノ曲でありつつ、これまでのようなクール系ではなく、音が軽快に跳ねて明るい。軸はブラさず新境地を広げ、callmeの“答え”のように思えた。3人は笑顔でリズミカルに踊り、ターンを繰り返す。会場全体でのジャンプやコールが入る「step by step」やアルバム収録曲で心が暖まる「Life」まで、序盤はポップチューンを中心に5曲続けた。手拍子が絶えず、間奏でのキレキレのダンスには「ヒューッ!」と歓声が起こる。
 早くも汗ダクの3人。「すごい熱気で(会場の)空気清浄が追い付かない」(RUUNA)といったMCを挟み、次は「callmeらしいクールな曲を」というゾーンへ。「Confession」に始まり、新曲でR&B調の「I like you」、シンセ音に乗った「Awaking」とグングン迫って聴き入らせる。まさにcallmeならではのグルーヴが心地良い。KOUMIによる英語ラップの「So beautifully」はしなやかで優雅に。「I’m alone」は仄暗い会場に似つかわしく、切なくもカッコよく映えた。
 後半は再び明るいナンバーを連発。新曲「Hello new world」「Run Run Run」などRUUNAの作詞曲が続き、3人がさわやかに歌って会場にまた手拍子が響く。開放感が満ち溢れた。そしてラストは、アルバムでも最後に収められた新曲「Cosmic walk」。宇宙旅行がテーマというアッパーチューンだ。
 アルバム、ライブとも最初と最後にあえてcallmeらしくない曲を持ってきたと、MCで話していた。「次のcallmeに期待できるように」(RUUNA)とのことで。ライブ全体も、最も持ち味が出るクール系を中盤に固め、前半と後半のポップで挟むサンドイッチのような構成だった。初めてでも食べやすいように、だろうか?
 
 

金曜の夜に大人を楽しませて

 callmeの曲を聴き、ライブに行くたびに思う。「最高じゃないか!」と。この銀座でのライブは急に発表されて大々的なものではなかったが、上質な音楽を大人としてもフランクに楽しめて、良い金曜の夜を過ごせた。クールでシャレたcallmeらしさ。そこは追求しながらポップなエッセンスも取り込み、また新たな形が生まれたニューアルバム。ライブでは躍動的なダンスも冴えて、グルーヴ感がより広がっていた。本当に素晴らしかった。
 しかし、その素晴らしいcallmeが現状トップに立っているわけではまったくない。自分は絶賛しすぎだろうか? いや、そんなことはないはず。銀座スタジオでもオーディエンスが心から音楽を楽しんでいるのははっきり感じられた。問題は、その外にいる人たちに彼女たちの良さが届くか。
 独自の道を歩んでいるだけに苦難もあるだろうが、callmeに触れてない人がまだ多い分、もっと広がるとも思える。前回のワンマンでは、RUUNAが「今は種を撒いているところ」と話していた。その種はいつか、大きな花を咲かせていく。
 
 

 

 

 

 
 

ライター・旅人 斉藤貴志