PICK UP ACTRESS 浅川梨奈
PHOTO=小澤太一 HAIR&MAKE=杏奈
STYLING=鈴江英夫 INTERVIEW=斉藤貴志
「honey」で主人公を密かに想う
人づき合いが苦手な転校生役
――相変わらず多方面でご活躍で。
「いやいや。細々と頑張らせていただいてます(笑)」。
――「honey」の原作のような少女マンガはよく読むそうですね。
「はい。大好きです」。
――「こういう高校生活を送りたかった」と思ったり?
「いえ、私は学園モノや恋愛モノの世界ってファンタジーだと思っているので、憧れというより幻想の世界として見ています」。
――キュンとはするんですか?
「キュンキュンして、1人で満足してます(笑)」。
――「honey」でもそうなりました?
「『honey』は初恋を描いていて、不器用ながらまっすぐな鬼瀬くんの奈緒ちゃんに対する想いとか、そこに私が演じた西垣雅が出てくることで生まれる三角関係とか、いろいろな関係性がありますけど、すごく純粋。ここまでピュアな作品はないなと、原作を改めて読んで思いました」。
――雅は人づき合いが苦手で、いつも1人でいる子ですが、自分にないものを引き出して演じた感じですか?
「そうですね。もともと私は原作で西垣雅が一番好きだったんですけど、自分と180度違うキャラクターなので、どう演じていくか考えました。何よりもまず、最近多いマンガの実写化の中で、『原作と全然違う』となるのがイヤなんです。教科書としてひたすら原作を読んで、雅にどう近づけるかいろいろ考えました」。
――原作の雅に近づく上でハードルだったことは?
「雅みたいに口ごもってしゃべる子を、いかに自然にできるかですね。雅は会話がスローペースで、しゃべるのも苦手だけど、思っていることが言えないだけなんです。感じ悪い子ではなく、ただ感情表現が苦手なんだと伝えるのがすごく難しかったし、意識もしました」。
――口数は少ないけど、表情で雅の気持ちが見えました。
「雅にとって一番大事なのは表情だと思ってました。笑顔はすごく重要。雅が笑顔を見せるときは何かきっかけがあって、そのきっかけは全部鬼瀬くんが作ってくれている。逆にそういうきっかけがなければ、雅は笑うことがないし、微笑んでしまったら雅ではなくなる。だから、目で気持ちを伝えないといけないんです」。
――クラスメイトと「話せた!」と、鬼瀬と廊下でハイタッチしたところでは、笑顔がこぼれていました。
「『鬼瀬くんのおかげで話せたよ』という嬉しさですね。初めて彼に対する想いが強く出て、あそこの笑顔はすごく大事だなと思いました」。
――梨奈さんの演技プランは、たぶんイメージ通りにスクリーンの雅に結実したと思いますが、過程では試行錯誤もありました?
「どの役でも、役作りの上で大変なことや考えることはたくさんあります。雅ちゃんに関しては、決して根が暗いわけではないし、おとなしすぎるわけでもない。だって、バスケが得意なくらいですから。ただ話すペースが人より遅くて、言葉を考えているうちに、相手に感じ悪いと思われてしまう。それで友だちができないけど、本当は友だちが欲しい。そんな気持ちなので、ただの暗いキャラにならないように、テンションは考えました」。
――今回の「honey」に限らず、事前に役作りを念入りにしていくタイプ?
「そうですね。作品に入る2~3週間前から少しずつ、長いときは1カ月くらいかけて作るときもあります。『honey』のように原作があるものに関しては、2次元のものを立体にしたとき、いかに自然に見えるかが大事なので、難しいところはありますね。でも、私自身がアニメやマンガが好きだから、何よりそこに寄せたい気持ちは強いです」。
――ただ「どう演じるか」だけではない部分もあるのでは?
「まったくオリジナルなら自分で役を作れますけど、原作があると別の観点が増えますね。原作ありきの上で、いかにアレンジしていくか。でもアレンジしすぎたら、今回だと目黒あむ先生の生んだ『honey』ではなくなってしまう。そのサジ加減は考えます」。
「アイドルだから」と言われないように
たくさん考えて準備をして臨んでます
――そうやっていろいろ考えた上で、たとえば雅が鬼瀬に何か言おうとしたところで教室に奈緒が入ってきて……といったシーンでのリアルな表情が、自然に出るのでしょうか?
「雅ちゃんは鬼瀬くんが初恋だったんじゃないかと、私は捉えていました。劇中で奈緒ちゃんとの絡みはそんなになかったけど、鬼瀬くんと2人でいるところは少なからず見ていたはず。だったら2人の空気感を目の当たりにして、あんな表情になるんじゃないか……というのを意識はしました。最初、涙を流す案もあったんです。でも、そうすると雅は振られたみたいになるから、『それは違うよね』と思いました。鬼瀬くんがいたから友だちができた。環境も変わった。雅はまっすぐな子なので、鬼瀬くんが好きな人との幸せも願うんじゃないかと思いました。だから、吹っ切れたようにしたくて……」。
――観ていて切なくなりました。
「奈緒ちゃんにも鬼瀬くんにも気を使わせずに身を引くのが一番いいと、雅ちゃんは判断したと思います。でも、鬼瀬くんに言おうとしていた言葉もあるわけだから……。それが言えず、2人の空気を見て『自分のいる場所じゃない』と思ったら、いきなり吹っ切れるわけはない。前後のことも考えて、しっかり気持ちを入れた状態で現場に入りました」。
――鬼瀬に何を言おうとしていたかも、イメージしました?
「しましたね。あのあとに続く言葉は何だったのか? そして、鬼瀬くんにきっとこう返される……ということも、すべてイメージしました。もし告白していたら、彼女が報われたかというと、私はそうは思いません。雅的にはそのあとでどうこうではなく、『ちゃんと気持ちを伝えよう』ということだったのかな?」。
――その辺の繊細な心情も出てました。梨奈さんはグラビアやアイドルのイメージもありつつ、女優としては演技派ですよね。
「いやいや。でも、1人の演じる身として作品に携わらせていただいているので、そういう現場で『アイドルだから』と言われるのは、すごくイヤです。そう言われないためにも、人より演技経験が少ない分、やらなきゃいけないことはたくさんあって……。観た方にあとで『この子はアイドルが本業だったんだ』と言われたら、勝ちだと思っています」。
――「honey」出演が発表された頃のブログに、「役作りのために、とある練習を1カ月間している」「(SUPER☆GiRLSの)全国ツアーに練習に使うものを持っていった」という趣旨のことが書かれてましたが……。
「それはバスケットボールです。私は一切やったことがなかったんですけど、雅は『勉強とバスケだけは得意』と言っていて、そこは大きいと思ったんです。その二つのことでなら会話ができるという気持ちもあったようだし、バスケの不慣れ感は出したくなくて。バスケットボールを買うことから始めて、『得意』と言えるレベルに達するように、ツアーの地方公演の合間にも、ずっとドリブルの練習をしてました」。
――雅の役作りで何か練習するならバスケかとは思いましたが、大きいバスケットボールをツアーに持っていくとは……。
「すごく邪魔でした(笑)。でも、それより練習しなきゃいけない危機感があったから、家の裏でも夜中にずっと、ドリブル練習とかいろいろやりました」。
――女優魂ですね。梨奈さん自身は雅と違って、友だちを作るのに苦労することはなく?
「いや、苦労します。そもそも人見知りなので。仕事のときとプライベートは違って、仕事モードになっていても休憩中はすごく静かだったりもします。周りの人たちに助けられて馴染めているところがあるので、本当に感謝です」。
――映画タイトルにちなんで、honey=はちみつは普段、口にすることはあります?
「声を使う仕事なので、マヌカハニーとか常に家にストックはあります。以前『ファイブ』というドラマをやったとき、ノドを潰してしまって、叫ぶところがうまくできなかったり、お芝居に影響が出てしまったのがすごく悔しくて。それ以来、ノドには人一倍、気を使うようになりました」。
――鬼瀬の台詞で「幸せすぎてバカになりそう」とありましたが、梨奈さんがバカになりそうなくらい幸せを感じるのは、どんなときですか?
「高橋みなみさんに会ってるときですね(笑)。見てるとき、同じ空間にいるとき……。ここ1年くらいお会いできてませんけど、会ったときは『もういつ死んでも後悔しない』と思いながら帰っています(笑)」。
――「honey」公開を前に、高校卒業となりました。
「4月3日が誕生日で、すぐ19歳になりますし、高校生ではなくなると、お仕事の幅もいろいろ広がるので、より一生懸命やろうと思います。大人と子どもの境い目の1年を楽しく過ごしていきたいですね」。
浅川梨奈(あさかわ・なな)
生年月日:1999年4月3日(18歳)
出身地:埼玉県
血液型:B型
【CHECK IT】
「avexアイドルオーディション2012」に合格し、iDOL Streetストリート生の3期生に。2014年2月よりSUPER☆GiRLSに“第2章”メンバーとして加入。グループでの活動の傍ら、水着グラビアで数々の雑誌の表紙・巻頭を飾り、“1000年に一度の童顔巨乳”と話題になる。女優として映画「咲-Saki-」、「14の夜」、「人狼ゲーム マッドランド」、「恋と嘘」、ドラマ「ファイブ」(フジテレビ系)、「さくらの親子丼」(東海テレビ・フジテレビ系)などに出演。映画「honey」は3月31日(土)より公開。
詳しい情報はSUPER☆GiRLS 公式HP
「honey」
「honey」公式HP
(C)目黒あむ/集英社 (C)2018「honey」製作委員会
【STORY】
幼い頃に両親を事故で失い、やさしい叔父・宗介に見守られて育ったビビリでヘタレな女子高生・小暮奈緒(平祐奈)。ある日、真っ赤な髪と鋭い目つきで“超”不良と恐れられる鬼瀬大雅(平野紫耀)から体育館裏に呼び出され、突然「俺と結婚を前提につき合ってください!」と告白される。宗介に憧れながらもビビッて断れなかった奈緒は、鬼瀬とつき合うことに。しかし、徐々に彼のやさしさや純粋さに気付いていき……。