PICK UP ACTRESS 遠藤新菜

PICK UP ACTRESS 遠藤新菜

PHOTO=松下茜 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

映画「TOURISM」に主演
シンガポールを旅するフリーター役

 
 

――「TOURISM」で遠藤さんが演じたニーナは、抽選で旅行券が当たり、シンガポールで初めての海外旅行をする役でした。遠藤さん自身は旅慣れてますよね?

「まあ、そうですね。アメリカやアジアは普通に行っていて、シンガポールにも5~6回行ったことがあります。2年前のこの映画の撮影のときは2~3回目でした」。

――初海外はどこだったんですか?

「小さい頃に父親のお母さんの国のアイルランドに行きましたけど、ほとんど覚えてません。自分で行くようになっても彼の仕事に付いていったことが多くて、初めて1人で行ったのはたぶん中国です。建造物の大きさがすごいレベルだったり、光っているビルのネオンが日本より気合いが入ってる感じで(笑)、刺激的でした。何より食べ物がおいしかったです」。

――中国の食べ物って、日本人は好き嫌いが分かれますよね。

「合わない人は合わないと思いますけど、私はスパイスがすごく利いた辛い鍋とか大好きです」。


――あまり観光名所を巡ったりはしなさそうですね。

「現地に友だちがいたら、それっぽい名所に連れて行ってもらいますけど、ノープランだと、出掛けるかホテルでダラダラするか半々くらい。シンガポールみたいに暑いと、全然外に出ない日もあります。でも、ホテルも広くて楽しいから」。

――ニーナたちみたいに自撮りしまくったりは?

「しなくはないですけど、あそこまでキャピキャピするタイプではないですね(笑)。海外だと携帯は見なくなります」。

――映画では成田空港の場面から丁寧に描かれてました。

「私も一緒に行く役のスーちゃん(SUMIRE)も日本から出たことがない設定ですけど、実際は2人ともシンガポールに行ったことがあるので、『新鮮にやろう』と飛行機で話しました。ただ、役の2人も派手に驚く感じではなかったので、すんなりできました」。

――実際に初めてシンガポールに行ったときのことも思い出しつつ?

「そうですね。当時は父親が単身赴任していて、母と一緒に会いに行ったんですけど、着いてまずビックリしたのは日本の比ではない暑さ。33度くらいでモワーッとしていて『すごいな』と思いました。あとは空港でいろいろな人種の人を見掛けたのも面白かったです。どこの国の人が一番多いとか、わからないくらいでした。映画ではマーライオンを見て『思ったより小さい』と言っていて、そこが使われると思いませんでした(笑)」。


――マーライオンは“世界三大がっかり”と言われます。

「『思った通りに話して』という感じの撮影で、カッコイイものをイメージしていたら『うーん……』となるのは、観光あるあるで共感してもらえる気がします」。

――ニーナはチャイナタウンで携帯をなくして迷子になりますが、そうした海外でのトラブルは経験あります?

「マレーシアに行ったとき、飛行機の便を逃しちゃったんですよ。乗り継ぐ前の便が遅れたので、『こっちの責任ではないから払い戻して!』と、空港の人と英語でケンカしたんですけどダメで、ホテルを探してタクシーに乗ろうとしたら、現地の人に腕を引っ張られて『乗ったらダメ!』と言われました。『あのタクシーは法外な請求をする』って、正規のタクシーを案内してもらったんですけど、乗っていたらたぶん何万円とか取られてました。日本とは違って、安全じゃないところもあるので、ショックでした」。

――でも、現地の人が止めてくれたんですね。

「やさしくしてもらって、本当に助かりました」。

――映画でもそんな局面がありました。ニーナは見知らぬ国で迷子になっても、慌てふためく感じではなかったですね。

「私が思う彼女の性格だと、たぶん焦ってはいても、クールにしていたいんです。なるべく普通にブラブラ歩いて、単純に『ここまで迷ったらどうしようもない』というのもあって、ハキムという人に『どうしたの?』と声を掛けられる瞬間まで、辛い顔は見せないようにしました」。

――そこは演技プランとして?

「はい。あそこで座って正面にカメラが回ったとき、『ハーッ……』という顔にしようと考えていたんですけど、実際に1日中歩き回っていたのでガチで疲れていて、自然にあの表情になりました(笑)」。


 
 

物を落としたり携帯をよくなくす
自分のバカっぽさを誇張しました

 
 

――ニーナは週5で工場でバイトするフリーターで「通販の服を見るのが楽しい」と話してました。人物像はイメージしやすかったのでは?

「そうですね。私も服は好きで、かけ離れてはいませんでした。私のちょっとバカっぽい感じを誇張すると、この子になるんです(笑)。喋り方もわざと『すぅちゃぁ~ん』みたいな感じにしました」。

――逆に言えば、ニーナのバカっぽさを薄めた感じが、遠藤さんにあると(笑)?

「絶対あります。普通に頭が悪いんですよ(笑)。ちゃんと考えてはいるんですけど、空間処理能力がなくて、体をガーンとぶつけたり、物を落としたり、なくしたりはしょっちゅう。口内炎ができて、そこを庇いながら食事していたら、違うところを噛んでもう1コできたり(笑)。そういうカッコ悪さを、役に活かしました」。

――遠藤さんの見た目のイメージとは違いますね。

「自分でもイヤですけど、仕方ないので(笑)。お酒をバーッとこぼしたりもするし、いつも恥ずかしいと思ってます」。


――ニーナみたいに携帯をなくしたことも?

「結構やりますね。今の携帯が4台目ですから(笑)。なくすし落とすし、水没もさせました。隣りのイスとかに平気で置くので、海外でやったらダメですよね」。

――日本でのちょっとしたシーンで、ニーナは道を歩きながらあくびをしてました。

「最初のほうは意図的に元ヤンっぽくしていた気がします。だんだん自分でも気づかないうちに役と一体化してくると、無意識になってきますけど、ずっとスーちゃんとのバランスは考えていました。ギャップを出して、観る方が自分がどっち派とか思えたら面白いので。2人とも気さくさはありつつ、スーちゃんはちょっと知的な気さくさだから、私は髪の毛もヘンだし、とことんバカっぽくしました(笑)」。

――共演の柳喬之さんは宮崎大祐監督について、「今までにない撮影方法」とコメントしてました。以前も宮崎監督作品に出演した遠藤さんから見ても、独特ですか?

「独特だと思います。でも慣れたら、むしろやりやすい気がします。意外と緻密な監督さんで、それを私たちにわからないように動かしてくれるんです。さっき言ったシーンでも、歩き回って疲れて『休憩はないんですか?』と思いましたけど、休憩していたら、あの表情は出なかった。後からハッと気づくことがいっぱいあります」。

――シンガポールではほぼゲリラ撮影だったそうですが、そこは演者さんとしては?

「ちゃんと仕切られた現場に慣れてる方には苦痛だと思います。でも、私はストリートっぽい撮影に慣れているので。前回の宮崎監督の『大和(カリフォルニア)』もそうだったし、『シスターフッド』もそう。ゲリラっぽく撮ることは何とも思いません」。

――シンガポールで、この撮影で初めて行った場所もありました?

「いっぱいありました。電飾が光ってる美術館とか、普段は撮影できない場所らしいです。行ったことがあったのはマリーナベイとかくらいで、白い慰霊塔も知らなかったし、チャイナタウンもあんな奥まで行ったことはなくて、7割くらいは初めてでした」。

――リトル・インディアも?

「あそこは行ったことがあって、好きでした。街並みに突然わけのわからない配色の建物が並んでいて、すごいんですよね。パステルカラーの風変わりな家やお店とか、夜に歩くシーンでは光るお寺みたいなところがあったり、東京ではありえない。異世界だなと思いました」。

――マレーシア料理を手づかみで食べたのも初体験でした?

「はい。やったことがなくて、半分は演技ですけど、半分は本当にあたふたしてました(笑)。カレーみたいなものに『超熱いのに手でいくんだ』と動揺しましたけど、味は全部おいしかったです」。

――2年前の数日間の撮影でも、だいぶ印象に残ったようですね。

「覚えていることはいっぱいあります。本当に濃かったので、2年経っても昔に感じられません。スーちゃんと泊まって撮影したホテルにもビックリしました。民宿っぽい感じで創業何10年だったのか、ボロボロで『うわーっ! ここに泊まるの?』と思いました(笑)。おばけが出そうだったので、スーちゃんと2人部屋にしてもらって、一緒に寝ました。本当に怖かったので(笑)」。


――実際、出たんですか?

「出はしなかったんですけど、廊下とかはどんよりする感じがありました(笑)」。

――改めて、遠藤さんにとって旅の楽しみというと?

「せっかく海外に行くなら、自分の英語を使って話したいので、いつもより喋るようにして、街の人に声を掛けられたらなるべく応じます。この前テキサスに行ったときは、ホテルの下のベンチで普通に『今日はどこに行くの?』と話し掛けられたり、『ネイルを見せて』と手をつかまれたりしました」。

――アメリカっぽいですね。

「慣れたらストレスを感じないで人づき合いができそうに思いました。あと、現地の人たちが好きな音楽に興味あるので、必ずクラブっぽいところに行ったり、ストリートライブを見ます」。

――「TOURISM」でも演奏を聴くシーンがありましたね。この夏もどこかに出掛けるんですか?

「夏は苦手なんです。陽に当たるのは好きですけど、アクティブなことはしたくありません(笑)」。

――海に行くノリもなく?

「海も苦手です。日本の海って海の家があったり、イエーイって感じじゃないですか。あれがダメなんです。沖縄の奥のほうとかで、何もしないでビーチに座っているのはいいですけど。静かなところが好きなので、海よりもカフェのテラスとかで、陽が落ちるまでコーヒーを飲んで話すほうがいいですね」。

 
 


 
 

遠藤新菜(えんどう・にいな)

生年月日:1994年10月3日(24歳)
出身地:東京都
血液型:O型
 
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2013年に「海にしずめる」で映画初出演にして主演デビュー。2014年から2017年まで「non-no」(集英社)で専属モデルを務める。その他の主な出演作は、映画「Starting Over」、「やるっきゃ騎士」、「無伴奏」、「大和(カリフォルニア)」、「ママレード・ボーイ」、「シスターフッド」、ドラマ「受験のシンデレラ」(NHK BSプレミアム)など。映画「TOURISM」は7月13日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開。
詳しい情報は公式HPへ
 
 

「TOURISM」

詳しい情報は「TOURISM」公式サイトへ
 
 

 

 

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