PICK UP ACTRESS 飯豊まりえ
PHOTO=河野英喜 INTERVIEW=斉藤貴志
連ドラに初主演とヒロインで2本
超天然な役でコメディの才能も発揮
――7月クールのドラマでは「マジで航海してます。」に主演、「居酒屋ふじ」でヒロイン。dTVとFODで配信の「パパ活」もあって、大活躍ですね。
「全部録り終わって、ちょっと落ち着いているところです。でも結構立て続けで、ひと息つく暇もなくやってきたので、すごく“走ってる”感じはありますね」。
――映画も「きょうのキラ君」「暗黒女子」と好評で、女優として自信が付いてきたのでは?
「いやいや。そんな感じではないです。ひとつひとつの役を一生懸命、また必死にやるだけ。ただ最近、楽しんでできるようにはなりました。演技に自分なりのイメージが掴めてきたというか、『このシーンはこういうふうにやろうかな』と考えられるようになった感じです。前まではどちらかというと、『わからないから現場の空気に合わせよう』というのがあったんですけど、『マジで航海してます。』では、『みんなを回すために、こういうお芝居をしよう』とか考えて現場に立っていました」。
――主役として引っ張ろうと。
「はい。今まで先輩方に引っ張っていただいて、その姿を見てきたので、自分のドラマ初主演でも意外と戸惑うことなく、できた感じがします。現場で積極的にコミュニケーションを取ったり……。まあ、無意識なんですけど。現場がちょっとピリピリしちゃったときは、自分はあえて明るく発言したりは、よくしてましたね」。
――ライバル役でドラマ初出演の日比美思さんが「飯豊さんがごはんに誘ってくれた」と言ってました。
「私も初めてのときはわからないことだらけで、言葉を掛けてくれる先輩に助けられたことがありましたから、自分もそういう立場になったら後輩たちに返していかなきゃと。今までにない責任感もありました」。
――今回演じる坂本真鈴は船舶大好きで航海士を目指す役ですが、まりえさん自身は船や海に関しては?
「山より海派です。この撮影に入る前にお休みがあって、母に『海に連れて行ってほしい』と言ったら、『仕事でも海に行くのに?』とツッコまれたくらい(笑)。自分のなかでは海をパワースポットのように思ってます。海に入るのではなく、海風に当たったり波音を聞くと癒されるんですよね」。
――海にまつわる素敵な思い出はあります?
「父も海が好きだったので、小さい頃は頻繁に、夏に限らず家族で車で海に行っていた記憶があります。イヤなことがあったり息抜きしたいときも海に行っていたので、振り返ると、私の人生で海は結構キーになってました」。
――海に向かって「バカヤロー!」とか叫んだりも(笑)?
「叫びませんけど、気晴らしをしたいときは海に行くことが多いです」。
――じゃあ、「マジで航海してます。」は打ってつけでしたね。
「はい。船に乗る機会はあまりなかったので、女性の航海士の方がいるのも知らなくて、興味を持ちました。実際の船を撮影で使わせていただいて、本物の航海士の方もエキストラで出られていて、お話を聞けたのはすごく貴重な経験でした。リアルなお話を聞いて、リアルに再現できたと思います。敬礼の仕方も警察官と航海士は全然違っていたり、勉強になりました」。
――特にインパクトのあった航海士さんの話は?
「『なぜ航海士になろうと思ったんですか?』とお聞きしたら、『普通と違う世界に行けるから』とか『「ONE PIECE」に憧れて』とか(笑)、ドラマみたいでした。船という閉ざされた空間では、絶対に関わらなきゃいけない人たちと協力し合わないと進まない。そこに生まれるシーマンシップは羨ましく思います」。
――運命共同体的な?
「そうですね。お芝居も1人でやるわけではないので似たところもありますけど、1人で考えたりすることが多いので……。水漏れとか異常があればすぐわかるように、『船内は常に掃除してピカピカになってないといけない』という話も聞きました。ドラマでも掃除する場面がすごく多いんです。デッキブラシで『わっしょい!』と言いながら掃除するシーンは3時間くらい撮りました(笑)。『わっしょい!』と3時間言ってたんですけど、それぐらい航海士にとって掃除は大事ということで、リアルでインパクトがありました」。
自由にアドリブをやることで
自分の殻を破れたと思います
――真鈴は“超天然”なキャラクターですが、天然を演じるのは難しくないですか?
「いや、すごく楽しいです。エネルギーは使いますけど、周りも自分も明るくなりますから。アドリブも『自由にやっていい』というお許しをいただいていたので、それで生まれるものがあると思って、共演者の方には申し訳ないんですが、いろいろやりました。井口(昇)監督には『全部使ってる』と言われてます(笑)」。
――たとえば、どんなアドリブを?
「船酔いがテーマの2話で、日比美思ちゃんが演じる杏樹とライバル関係になって戦うシーンで、結果が見えちゃったときのリアクションは全部アドリブです。『勝負見えたね』と言われてウソ泣きしたり逃げたりは、台本には全然ありませんでした。あと、みんながシリアスになっているところで、真鈴が1人でバナナを食べて陽気なテンションだったときは、とある芸人さんのモノマネをしたら意外にもOKが出ました(笑)。そういうことを楽しんでできて、『コメディの才能があるね』と誉められました」。
――その才能は自覚してました?
「いえいえ、まったく。ただ普段できないことが許されて、殻を破れたと思います。真鈴はモノに話し掛けるんですよ。船や機械の写真を撮って『いいねー。麗しいねー。またねー』とか。そんなこと、普通しないじゃないですか(笑)。でも『傍から見て“何だ、この子は?”と思うように演じてください』と言われて、やったら気持ち良かったです。私生活でも『お花に話し掛けると元気に咲く』と聞いたので、『頑張れー』とか話し掛けるようになって(笑)。真鈴ちゃんの影響を受けましたね」。
――まりえさんはイメージとしては、明るいけど天然ではない気がしましたが……。
「私も天然だとは思ってなくて、何ごとも完璧にやりたいんですけど、よく『抜けてるね』と言われます。忘れ物が多かったり、大事なときに『エーッ?』みたいなハプニングを起こしたり……。同じ日に同じ場所に5回モノを忘れて、5回取りに行ったときもあります(笑)。1回で持って帰れなくて、他のモノを忘れてきちゃう。『明日は絶対この本を持っていくぞ』と思って玄関に置いておいたのに忘れちゃったり、急いでるときに限って忘れ物をするんですよね」。
――真鈴役に合っていたのかも。
「そうかもしれませんね。船にしゃべり掛けるシーンも、台本を見たときは『私は絶対こんなことしない』と思ったんですけど、考えたら小さい頃、飛行機を見ると『また乗せてねー』と言ってたんですよ(笑)。『うわーっ。潜在意識にある!』と思いました。実感はないですけど、W主演のれなれな(武田玲奈)にも『近いものがあると思うよ』と言われました」。
――一方、「居酒屋ふじ」の鯨井麻衣は印刷会社のOL役で、また違った意味で新鮮だったのでは?
「新鮮でしたね。まず、お酒を飲むシーンはなかったですし……。あと昭和の話がいっぱい出てきて、カセットテープに想いを入れて伝えるのも初めての経験で、楽しかったです。カセットで想いを伝えるときはA面よりB面に入れたほうがいいとか、ちょっとやってみようかと思ったりもしました」。
――カセットテープ自体、馴染みがない世代ですよね?
「ないですけど、昔と形は違っても、自分の好きなものをプレゼントできるような人になりたいと思いました。居酒屋ふじのおやじさんの逸話もすごく刺激があって、同世代の夢を追いかけている方が観ても刺さる気がします」。
――19歳のまりえさんは実際の居酒屋に行ったことはないですか?
「ないですね。テレビとかで見ると、みんな仲良くしゃべってフレンドリーな人たちが集まるイメージがあります。撮影ではごはんも家庭料理でおいしかったし、大人の方たちのお話が聞けるのは、やっぱりいいですね」。
――麻衣のキャラクターはどう捉えてます?
「芯がしっかりしていて、男っぽい人だと思ってます。監督にも『かわいすぎる。もっとサバサババージョンで』とか結構言われました。ある夢を持っていて、他の選択肢を考えずに頑張っている女の子で、リアルと言えばリアルですね」。
――永山絢斗さんが演じる売れない俳優と惹かれ合っていますが、若い頃から活躍しているまりえさんには、ああいうくすぶり感はなかったような?
「私は恵まれていたのか、いろいろな人と関わって繫がりも多かったし、皆さんのお力でいろいろな経験をさせていただているから、自分とはちょっと違うと思いました。でも夢を追いかけているのは一緒なので、永山さんが演じる西尾さんの姿を見て『頑張れー!』と思います」。
――毎回の本人役の豪華ゲストも話題です。
「椎名桔平さんがいらっしゃったとき、昔、本当の居酒屋ふじに通っていらっしゃた頃の思い出を交えた台本になっていたり、ドキュメンタリーっぽいリアルさも面白い要素だと感じました。長山洋子さんとは一緒に歌ったりもしました」。
――ベテラン歌手の方と一緒で、緊張しませんでした?
「いや、すごく楽しかったです。歌ったのは番組のオリジナルの歌でした」。
――まりえさんも居酒屋ではないにせよ、行きつけのお店はありますか?
「行きつけの喫茶店があります。すごく落ち着きがあって、風通しはいいけど日差しは入らない感じです。お客さんに知り合いも多いので、遠くで仕事があったら『喫茶店におみやげを買っていこう』と思います。そこでおみやげを交換し合ったり……。基本1人で行って、誰かしら知り合いがいるので、“喫茶店ふじ”みたいな感じですね」。
――今はまりえさんの10代最後の夏ですが……。
「あっ、そうですね。ただ、そこまで気にしたことはないです。私、結構満足してるんですよ。17歳のときに“花のセブンティーン”ということで、ちゃんと青春したんです。友だちといっぱい遊びに行ったり、充実した日々を過ごせたので、あとはもう……。いろいろな人たちと出会えて、その人たちへの恩返しを20代に向けてしていきたいので、これからが楽しみです。早く20歳になりたい。もう10代には満足しましたから。ひとつ後悔しているのは、絵本を10代で出したかったのが間に合わなそうなんです」。
――まあ、それはこれからでも。
「いずれ大人になったら出したいです。やっぱり素敵な人たちと出会えたことが私のなかで大きいので、自分もちゃんと周りの大切な人たちに愛を与えられるようになりたいですね」。
飯豊まりえ(いいとよ・まりえ)
生年月日:1998年1月5日(19歳)
出身地:千葉県
血液型:B型
【CHECK IT】
2008年に「avex kids×ニコ☆プチ公開モデルオーディション」でグランプリを受賞し、小学生向けファッション誌「ニコ☆プチ」(新潮社)にてモデルデビュー。その後、「nicola」(新潮社)から現在は「Seventeen」(集英社)と専属モデルを務める。2012年から本格的に女優活動を開始。これまでの主な出演作はドラマ「学校のカイダン」(日本テレビ系)、「MARS~ただ、君を愛してる~」(日本テレビほか/劇場版)、「嫌われる勇気」(フジテレビ系)、映画「きょうのキラ君」、「暗黒女子」など。現在、ドラマ「マジで航海してます。」(TBS/火曜25:28~ MBS/日曜24:50~)、「居酒屋ふじ」(テレビ東京ほか/土曜24:20~)、「パパ活」(dTV・FOD/月曜24:00配信)に出演中。
詳しい情報は公式HPへ