PICK UP ACTRESS 川口春奈
PHOTO=城方雅孝 INTERVIEW=斉藤貴志
主演映画「一週間フレンズ。」が公開
記憶障害を抱える難役で繊細な感情表現
――「一週間フレンズ。」は「自分で試写を観て初めて泣いた」と先行上映の舞台あいさつで語られてましたが、どの辺で泣いたんですか?
「全編通して、ちゃんとストーリーになっていて、自分が演じているときに苦しかったり、心を動かされたシーンが何コかありました。いろいろなことを思い出して、感慨深いものがあって」。
――特に感極まったシーンというと?
「というか、全部ですね。全部のシーンに全力で向き合ったので、思い返すと香織の立場になって、彼女の感動が伝わってきました」。
――香織は言葉も感情表現も抑えたなかで気持ちの動きが見えましたが、演じるうえで意識したことはありました?
「たとえば長谷くんに傘を差し出されても、彼が誰だか忘れちゃっているので、そういう切なさとかをシーンごとにどうするか考えて作った部分はありました。かと言って『こういうふうに見せなきゃいけない』とか、決まり事は自分のなかで作りませんでした。その場で出た感情が表情や目から伝わればいいなと思いながら、やっていました」。
――難易度が高い役だったのでは?
「難しかったですね。一週間で友だちの記憶がなくなってしまう設定もそうですし、いろいろな気持ちになるので。今までやったことのないような作品だったし、キャラクターでした」。
――悩むこともあったり?
「悩むというか、考える点はいろいろありました。どうしたら香織が徐々に成長していく姿を観ている人に伝えられるか。本当にいろいろな想いを内に抱えた子なので、感情を表に出さないなかで、香織がどう変わっていくかは多々考えました」。
――一方で、文化祭の準備中に長谷くんと走って逃げたり、バックハグされるようなシーンでは、演じるなかでときめく感覚はありませんでした?
「私はあくまで役を演じているので、そこまではありませんけど、観る方がそう思っていただければうれしいです。学園モノだし、2人の切ないけど甘酸っぱい、『ああ、いいな』ってキュンとしてもらえるシチュエーションもあると思います」。
――川口さん自身は試写を観ても、胸キュンするのとは違いました?
「普通の学生2人がイチャイチャしている映画ではないですし、ちゃんと設定があるので。キュンとしてくださる方もいらっしゃると思い
ますけど、やっぱり私は香織という役をまっとうしていたので、そういう気持ちでは観られないというか」。
――一週間で友だちの記憶がなくなってしまうのは、現実なら重苦しい状況ではありますよね。
「でも、本当にそういう方がいらっしゃるみたいなので。悩んで苦しんで闘っている人のなかの1人が香織で、どうやって背中を押してあげたくなるようなキャラクターにしていくか。ただ理由もなく友だちを拒んでいるわけではないから、彼女なりの悩み、考えが伝わるようにしたいと思いました」。
――自分がそういう状況だったら、やっぱり友だちは作らないか……みたいな想像もして?
「その状況になってみないとわかりませんし、そんな簡単に考えられるものでもなくて。自分だったらどう行動するかは、わからなかったですね」。
友だちとの些細な時間が高校の思い出
今でもいてくれるだけで助けられます
――川口さん自身には、学生時代の忘れたくない記憶はありますか?
「行事はあまり出られなかったので、日常生活でおしゃべりしたり、話を聞いてもらったり、自分が欠席したときに助けてもらったり。そういう些細なことを今でもすごく覚えていて、友だちには感謝していますね」。
――やっぱりフレンズとのことが。
「学生時代の友だちは全然別の道に進んでますけど、今でも会ったり、刺激をもらう仲間です。高校生のとき、進路のこととかいろいろ悩みごとが多いなかで出会って、つき合う人たちはすごく大きかったなと思います。大人になってからもわかり合えて」。
――今も支えてもらうことがあったり?
「いてくれるだけで助けられる存在です。何かあれば会いに来てくれて、話を聞いてくれたり。そういう存在は大切にしたいと思ってます。当時から何でも言い合える仲だし、会ってなくても関係は崩れません」。
――早くからこの世界で活躍していた川口さんは、文化祭とかの思い出はなくて?
「そうですね。できれば参加したかったけど、出られなかったので。映画のなかの文化祭でカフェをやってみて、今しかない時間にいろいろな人と出会える世界なんだと感じて楽しかったです。お店を出したり、出し物をして、他校から来た人ともつながりができるのはいいなと思いながら、やっていました」。
――「一週間フレンズ。」の公開を前に、川口さんは22歳になりましたが、今は高校生役も大人の役もできる時期ですね。
「お芝居するうえで年齢は気にならないですし、今回は学園モノでしたけど違和感は全然なくて、香織というキャラクターにすごく感情移入できました。そこは別に大人かどうかは関係なくて」。
――女優としてはそうだとして、川口さん自身は高校生の頃の自分より大人になってきたとは思います?
「それは感じないですね。というか、わからないです。周りの人のほうが自分の変化に気づいてくれているかもしれません。でもまあ、根本は高校生の頃と変わってないとは思います」。
――デビュー10周年でもあるんですよね?
「速かったし、それなりに長かったです。大変なことも苦しいこともあって、いろいろな人とご縁があって、いろいろな作品に出会えて。それがすごく宝物で、良い10年だったなと思います」。
――そんななかで「一週間フレンズ。」から得たものも大きかったり?
「病いを抱えて想いを内に秘めて、成長に涙して応援したくなるような役と出会えたことで、今まで10年やってきて自分も知らなかった自分が見つかりました。『私はこういう顔をするんだ。こういう気持ちになれるんだ』という可能性を感じさせてくれたし、ある意味、ステップアップの分岐点になって。そんな作品と巡り合えたことが、すごくうれしかったです」。
――ちなみに、いろいろとお忙しい毎日のなかで、“一週間”のどこかのタイミングで息抜きのためにしているようなことはありますか?
「必ず何かするというのはないですけど、自分が落ち着けるような人と会って話したり、ごはんを食べにいく何気ない時間は、日々仕事をしているなかでもあります。そういう時間が一番ホッコリさせてくれますね」。
川口春奈(かわぐち・はるな)
生年月日:1995年2月10日(22歳)
出身地:長崎県
血液型:O型
【CHECK IT】
2007年に「nicola」(新潮社)のモデルとしてデビュー。2009年にドラマ「東京DOGS」(フジテレビ系)で女優デビュー。2010年に「初恋クロニクル」(BSフジ)でドラマ初主演。2012年に「桜蘭高校ホスト部」で映画初主演。その他の主な出演作は、ドラマ「GTO」(フジテレビ系)、「夫のカノジョ」(TBS系)、「金田一少年の事件簿N(neo)」(日本テレビ系)、映画「好きっていいなよ。」、「クリーピー 偽りの隣人」、「にがくてあまい」など。主演映画「一週間フレンズ。」は2月18日(土)より公開。
詳しい情報は公式HPへ
(c)2017 葉月抹茶/スクウェアエニックス・映画「一週間フレンズ。」製作委員会
詳しい情報は公式HPへ