PICK UP ACTRESS 桜井日奈子

PICK UP ACTRESS 桜井日奈子

PHOTO=河野英喜 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

34年ぶりに映像化される「ヤヌスの鏡」に主演
優等生と不良少女の二重人格の役に奮闘

 
 

――配信ドラマ「ヤヌスの鏡」で日奈子さんが演じる主人公・小沢裕美は、大人しい優等生のヒロミと凶悪な不良少女のユミという二つの人格を持つ役。ヒロミとユミを両端に置いたら、日奈子さん自身はどの辺だと思いますか?

「私はだいぶユミ寄りだと思います」。

――えっ、そうなんですか?

「不良なことはしませんけど(笑)、不器用で真面目すぎて『こうでないとダメ』というヒロミより、私は固執しないで、どうすればうまくいくか考えるほうです」。

――役柄的には、今まではヒロミ寄りが多かったですよね?

「確かにヒロミに近い役は演じたことがあったから、イメージはしやすかったです。ユミをどれだけやれるか、最初悩みましたけど、演じているうちに気持ち良くなってきました。原作のマンガを読んで、ユミのまぶしいほどの自由奔放さに憧れたんです。恐れるものが何もない。すべて計画通りに、みんなを手のひらの上で転がしていく。そんな強さを持つユミの魅力にハマって、『楽しい』という感覚が一番残りました」。


――日奈子さんがそこまでユミに肩入れしていたとは、ちょっと意外です。

「解放感もあったかもしれません。ヒロミはおばあさまにせっかんされたり、身体的にも精神的にもキツいシーンが多かったので」。

――「ヤヌスの鏡」は原作が38年前、ドラマ化は34年ぶりですが、22歳の日奈子さんは不良というと、どんなイメージですか?

「私の時代にはいなかったです。でも、ユミはわかりやすい濃いメイクで、服装も派手で革ジャンを羽織っていて、外見が役を掘り下げていく助けになりました」。

――ユミはニヤリという感じの笑い方をします。

「“不敵な笑み”がいろいろなところで出てきて、不敵になっているか、普通の笑みになっていないか、ちょっと不安でした。でも、ユミでいるときは何でも許される気がして、細かいディレクションもなく、思うままにやらせていただきました」。

――前から「やりたい」と話していたアクションも、今回披露していますね。

「そうなんです! やれました。実はアクション練習にはずっと通っていたんです。それが今回、活かせました」。

――ユミは合気道の技を使います。

「合気道は習ってなかったんですけど、事前に聞いていたので、YouTubeで動画を観て『合気道は動きを流すんだ』と思いながら、家で練習してました」。


――3話にはタイマンを張るシーンがあります。

「暴れました(笑)。ヒールだったので『大丈夫かな?』と思ったら結構動けて、カッコいいシーンになっていたらうれしいです。ユミはヒロミからは想像できないようなハンパない強さに変わって、昔の大映ドラマのときも『いつあの濃いメイクをしたの?』と言われていたみたいですけど、ツッコミどころは満載だと思います(笑)」。

――ヒロミのほうも、近い役はあったとはいえ、ユミと逆の方向で独特だったのでは?

「振り幅は大きかったです。気弱で臆病で意志のはっきりしないイメージから、私の地声だと違うと思って、声のトーンは意識して作りました。あと、バッグの肩に掛けたところをいつも両手でギュッと握って、内に閉じこもって力が入ってしまっているところを見せるようにしました」。

――二重人格の役はやり甲斐があったのでは?

「ワクワクしました。二重人格の作品もいろいろ観て、特に女性が演じた『フランキー&アリス』という映画が参考になりました。あと、ヒロミにはユミでいるときの記憶がなくて『私、どうなっちゃったんだろう?』みたいな不安は、お酒で失敗したことがある方にはわかっていただけると思います。私は経験ないですけど(笑)」。


 
 

撮影で初めてクラブに行って興奮しました
乱暴な言葉の台詞は気持ち良かったです(笑)

 
 

――日奈子さんにも隠れている人格はありそうですか?

「いっぱいあると思います(笑)。ただ、適切な場所でしか出しません。お仕事のときには絶対出せない面もいっぱいありますけど、たとえば実はひょうきんなところはバラエティとかで出せたらいいかなと。『内村文化祭’19三茶』ではコントライブにも初挑戦します」。

――世の中では日奈子さんには文武両道の優等生のイメージが強いと思いますし、実際そうなんでしょうけど、「ちょっと悪いことをしちゃった」みたいな経験はないですか?

「ありますよ。……なんて言っていいのかな(笑)? 友だちと待ち合わせをして5分くらい遅れそうになったときに、本当は家を出るのが遅かったのに『道に迷ってる』と言ったことがありました」。

――それが日奈子さんの中では悪いことだったんですね(笑)。実際やらないにしても、不良願望みたいなものはどこかにありました?

「あっても、やる勇気がないです(笑)。この作品の中ではユミだからこそ、悪いことがいっぱいできました。言葉遣いも乱暴で、『クソババア!』とかドキッとするようなことは言った経験がなかったので、それも気持ち良かったです(笑)」。


――ユミが繰り出す夜の繁華街は、実際に行くことは?

「ないですね。この撮影で、初めてクラブに行ったんですよ! ユミはすました顔で入って行きましたけど、私は内心めちゃくちゃ楽しくて、興奮してました(笑)。大音量で音楽が流れて、みんなが踊っていて、こんなパーティなピーポーが集まる空間があるのかと(笑)、初めて知りました」。

――岡山での高校時代はどこで遊んでいたんですか?

「岡山駅の近くのイオンです(笑)。岡山にクラブがあるのかわかりませんけど、行こうという気にもならなかったし、夜の10時ごろまで外にいたら、悪いことをしている気分になっていました」。

――今は夜は何をしていることが多いんですか?

「おうちで料理してます。『ヤヌス』にインするちょっと前から自炊を頑張ろうと思って、現場にもお弁当を持って行きました。『ヤヌス』の撮影期間は二重人格の役ということもあって、心が忙しかったというか。でも料理をしていると、リセットできました。今も自炊は続けているのが自分でも意外ですけど、楽しいですね」。


――どんな料理を作るんですか?

「基本的に和食です。玉子焼き、ひじき煮、きのこのナムル……。ヘルシーな常備菜をよく作っています」。

――このドラマでは日奈子さんが主題歌「花と毒薬」も歌っています。「GROP」のCMなどでも歌を歌っていましたが、得意感はあるんですか?

「全然得意じゃないです(笑)。むしろ苦手意識があって、今回も『私で大丈夫ですか?』と不安になりました。でも、作詞してくださったSally#Cinnamonさんが原作や台本を読み込んで『一語一句無駄はない』とおっしゃっていて、作曲のShoさんもユミのイメージにピッタリなカッコいい曲を作ってくださいました。そういう方たちの熱い想いを自分の声で形にできたら、こんな素敵なことはないと思ったので、1人カラオケで猛特訓して頑張りました」。

――歌もカッコいいです。

「初めての主題歌でしたし、ユミでいたときの楽しかった感覚も本物な気がします。この作品で1コ自分の殻が破れたように感じます」。


 
 


 
 

桜井日奈子(さくらい・ひなこ)

生年月日:1997年4月2日(22歳)
出身地:岡山県
血液型:O型

 
【CHECK IT】
2014年に「岡山美少女・美人コンテスト」にて美少女グランプリを受賞。2015年に配信の「LINE MUSIC」ウェブCMをきっかけに“岡山の奇跡”として全国的に注目される。2016年に舞台「それいゆ」で女優デビュー。同年に「そして、誰もいなくなった」(日本テレビ系)でドラマデビュー。主な出演作はドラマ「THE LAST COP/ラストコップ」(日本テレビ系)、「僕の初恋をキミに捧ぐ」(テレビ朝日系)、「みかづき」(NHK)、映画「ママレード・ボーイ」、「ういらぶ。」など。「沼にハマってきいてみた」(NHK Eテレ/月曜~水曜18:55~。桜井日奈子は月曜日に出演)でレギュラーMCを担当。コスモ石油のCMがオンエア中。ドラマ「ヤヌスの鏡」(FOD)は8月16日(金)0時より配信スタート。9月27日(金)公開の映画「任侠学園」に出演。11月15日(金)公開の映画「殺さない彼と死なない彼女」に主演。
詳しい情報は公式HPへ

 
 

FODオリジナル連続ドラマ「ヤヌスの鏡」

詳しい情報はFOD 公式サイトへ