PICK UP ACTRESS 山田杏奈

PICK UP ACTRESS 山田杏奈

PHOTO=草刈雅之 HAIR&MAKE=安海督曜
STYLING=武久真理江 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

沖縄が舞台の映画「小さな恋のうた」で
高校生バンドの紅一点のギター役を熱演

 
 

――3月の高校の卒業式では感動的なことはありましたか?

「何にもなかったです(笑)。高3の途中で転校して、卒業した学校にはあまり行ってなくて。友だちは数名できましたけど、特別に仲良い人がいたわけではなく、式が終わったら、すぐ帰りました(笑)」。

――JKでなくなる寂しさはありませんでした?

「ありました。卒業式で『とうとう高校生活が終わったな』と思いました。ただ、前の学校から転校した時点で仕事メインになったので、もう高校は終わったような気持ちになっちゃってました」。

――いわゆるJKっぽいことをしていたわけでもなく?

「プリクラはたまに友だちに誘われて撮ったりしましたけど、タピオカは1人で飲みました(笑)」。

――卒業後は仕事1本に。

「高校に入ったときは、大学に行くつもりでしたけど……」。

――勉強も人一倍、頑張ってましたよね。

「そうですね。前の学校は大学に行くのが当たり前という空気で、私もそうしようと思ってました。でも、高校3年生になった春に、お声が掛かっている仕事を全部やったら、卒業できない状況になっていたんですね。お仕事をセーブすることも考えましたけど、ちょうど『小さな恋のうた』をやるか、やらないかのタイミングで、『やらない』ことにはしたくなくて……。やっぱりお仕事を第一にしたかったから、前の学校は夏に辞めて、その時点で大学に行く選択はなくなりました」。


――「小さな恋のうた」は沖縄の高校生バンドの物語で、杏奈さんは事故死した兄に替わってギターを弾く譜久村舞役。もともと音楽には触れているほうだったんですか?

「聴くのも歌うのもすごく好きです。家にいるときはテレビを観るより、ずっと音楽をかけてますし、電車とかで移動中もずっと音楽を聴いてます。最近は小袋成彬さんが好きですけど、ジャンルは関係なく、いろいろ聴きます」。

――映画のモチーフになったMONGOL800は?

「聴きます! 映画のお話をいただく前から、カラオケに行くと必ず歌うのが『あなたに』とかでした」。

――でも、ギターは初心者だったとか。

「触ったことがないレベルでした(笑)。顔合わせからクランクインまで半年くらい、ずっと練習してました。家で毎日何時間か弾いて、何もしてないときもずーっと触ってましたし、週に何回か、バンド役のみんなでスタジオに入ったりもしました」。

――基礎からやったんですか?

「本当の基礎からです。チューニングの仕方や腕の動かし方から、セッティングも片付けも全部、自分たちでやって覚えました。劇中で楽器を持ったときのちょっとした動作とかアンプへの触れ方とか、細かいところのリアル感に繋がったと思います」。

――ギターを弾けるようになるまでに、壁はありませんでした?

「指が痛くなるし、皮がめちゃめちゃ剥けるし、どうしようかと思いました。歌いながら弾くのも難しくて、経験ないことをイチからやるのは毎日大変でした。でも、みんなで練習すると本当に仲良くなったし、バンドの空気感が半年間でできました。自分たちの関係性がそのまま役作りにもなったのは、すごく良かったです」。


――バンドって楽しいですよね。

「楽しかったです。女性は私1人で、最初は『大丈夫かな?』って緊張したんですけど、演奏中に目が合うと何かリラックスできて、仲良くなれた気分で、その後で普通に話せたりもしました。演奏していると会話するより通じ合う感じです」。

――ライブシーンは高揚感がありました?

「そうですね。演奏シーンの撮影がある日は、みんなで朝から『よし、やるぞ!』って身が引き締まりました。本物のライブではないにしても、半年練習してきた成果を一番出す場だし、映画の中でも山場だったので。私は『あなたに』の演奏シーンでクランクアップで、3人でやるのは最後だから悔いがないようにしたくて、始まる前に円陣を組んだり、本当に青春してました(笑)」。

――エキストラとはいえ、お客さんの前で演奏するのは、どんな気分でした?

「校舎の屋上で『小さな恋のうた』をやったときは、エキストラさんに聴いてもらう意識はあって、実際に演奏したらレスポンスが帰ってきたから、こっちもすごくノレました。そういう相乗効果で、予想してなかった高揚感がありましたね」。

――杏奈さんは落ち着いたイメージがありますが、普段もそういうふうに高まるときはあるんですか?

「もちろんあります(笑)。友だちと遊んでいるときとか、遊園地みたいなところに行ったときとか、わりとテンションが高くなります」。


――舞に「音楽がたくさん大切なことを教えてくれる」という台詞がありました。杏奈さんも音楽から教わったことはありますか?

「昔から音楽は好きでも、歌うときも聴くときも何も意識はしてませんでした。でも、この映画で舞として歌っていて、音楽に乗せると感情が出るものだと思ったし、その熱量は聴く人に届くとも感じました」。

 
 

最初から泣いたらいけなかったのに
自分でも予想外に涙がボロボロ出て……

 
 

――舞は途中までほとんどしゃべりませんでした。基本おとなしい子なんですかね?

「たぶん落ち着いた子で、はしゃぐタイプではないと思います。でも後から出てくるように、お兄ちゃんたちのバンドを温かい目で見ていて、お兄ちゃんのことを尊敬していて、心の中にはいろいろな想いがあったんでしょうね」。

――お父さんに言われて、よく勉強しているようでもありました。

「譜久村家ではお父さんがああいう感じで、お兄ちゃんの慎司(しんじ)にも昔から『勉強しろ』と言っていて、慎司はたぶんお父さんの前ではあまりギターを弾いてなかったんですよね。舞自身も勉強は言われたからやっていただけで、すごく打ち込んでいるものはなかった。それがお兄ちゃんがバンドをやる姿に影響を受けて、自分もこっそりギターを弾くようになって、好きになって……。だから舞にとって、お兄ちゃんのこともありながら、ギターというものを見つけたのは、すごく大きな出来事だったと思います」。

――杏奈さんもしっかり勉強していたところは共通してますが、舞の心情がわかる部分もありますか?

「自分に似てると思います。性格的に表に出るタイプではないし、争いごとは好きじゃない。あまりはしゃいだりもしない。だけど、心の中で思っていることはすごくある。そういうところが似てました。でも、舞はお兄ちゃんの遺したデモ音源をバンドのメンバーに届けに行ったじゃないですか。あの行動力は私にはないなと思いました」。


――「この曲だけ演奏されてないのはかわいそうだから」と言ってました。

「そう。お兄ちゃんが亡くなった後だし、その曲を演奏するのは断られるのも想像していたはずなのに、それを脇に置いて、『お兄ちゃんの大事な曲をやりたい』という想いを伝えに行ったのがすごいと思います」。

――そんな舞が感情を爆発させるシーンが後半にありました。

「あの日は朝から『ああ、今日だな……』って緊張してました。舞として一番の山場だし、すごく頑張りたいと思っていたので。でも、やり始めたら、ただ無我夢中になっていた感じです」。

――口元がリアルに震えていたり。

「最初から泣いたらいけなかったんですけど、ボロボロ涙が出てきちゃいました。監督に『そこでは泣かないで』と言われながら、お兄ちゃんとギターへの想いがバーッと溢れたのは、自分で予想してなかったことでした。半年間ギターを練習してきた上でもあったし、慎司役の眞栄田(郷敦)さんが本当にお兄ちゃんみたいに尊敬できる方だったんです。慎司は映画の序盤で事故に遭って亡くなってからも、みんなの中でずーっと大きな存在だったし、そういう空気感は最後まで現場にありました」。

――映画でも、慎司の気配はずっとどこかにあるようでした。

「舞は表立ってお兄ちゃんへの想いを出す子ではないし、たぶん家ではベタベタ仲の良い感じではなかったと思うんです。お兄ちゃんとのシーンも1回しかありませんでした。だからこそ、『ずっと尊敬していて……』というところを、あそこで出したかったんです」。


――それこそ普段の杏奈さんがあそこまで爆発することはないでしょうけど。

「いやいや、ありますよ(笑)。最近は昔より減りましたけど、反抗期は全然あって、普通に親ともケンカしました。でも、舞のあのシーンは人生最大くらいの爆発じゃないですか。あそこまではまだないかもしれません」。

――沖縄で1カ月半、撮影したんですよね。

「私は沖縄は初めてだったんですけど、昔からいたみたいな感じがして、何か不思議な時間でした。たぶん、それが沖縄の空気感なんでしょうね。ずっと自然体でいられる気がしました」。

――杏奈さんは海なし県の埼玉出身だけに、沖縄の海にも気持ちが高まったのでは?

「高まりましたね。知識として沖縄の海がきれいとは知ってましたけど、実際に見て『こんなにきれいなんだ』と思いました。沖縄の方が海を神様のように大切にしているのもわかります」。

――撮影からは1年経ちましたが、ギターは今も弾いているんですか?

「弾いてます。撮影が終わってからも、好きな曲を弾いたり、弾きながら自分で歌ったりしています」。

――腕前は落ちてないわけですね。

「そうですかね(笑)。この映画のお話が来るちょっと前に、アコギを買って始めようかな……と思っていたんです。ギター自体は元からやりたい気持ちがありました」。

――高校を卒業して、新たに始めたいこともありますか?

「学生ではなくなって、見られ方も変わるじゃないですか。人間的に充実させたいと思うので、いろいろなことに挑戦したいです。最近やりたいのは乗馬と日本舞踊。ゆくゆくは海外にちょっとの期間いて、その国の空気を知ることもしたいです」。


 
 


 
 

山田杏奈(やまだ・あんな)

生年月日:2001年1月8日(18歳)
出身地:埼玉県
血液型:A型
 
【CHECK IT】
「ちゃおガール2011☆オーディション」でグランプリを受賞。2016年に「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」で実写映画に初出演。主な出演作は、ドラマ「先に生まれただけの僕」(日本テレビ系)、「わたしに××しなさい!」(MBS・TBS)、「幸色のワンルーム」(ABC/主演)、映画「咲-Saki-」、「あゝ、荒野」、「ミスミソウ」(主演)など。映画「小さな恋のうた」は5月24日(金)より全国ロードショー。「五億円のじんせい」が7月20日(土)より公開。ロッテ「ガーナミルクチョコレート」イメージキャラクター。写真集「PLANET NINE」(東京ニュース通信社)が発売中。
 
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「小さな恋のうた」

配給:東映
詳しい情報は「小さな恋のうた」公式HP
 

 

 

©2019「小さな恋のうた」製作委員会
 
 

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