PICK UP ACTRESS 大久保聡美
PHOTO=石垣星児(BLOCKBUSTER) INTERVIEW=小山内凛
ミュージカルで3年間セーラームーンを演じた元気娘が
“他重人格”を持つ不思議な少女の役に挑戦!
――舞台「他重人格 WHO AM I?」に出演することを最初に聞いたときは、どうでした?
「タイトルを見て『どんなお話なの!?』っていうのが率直な感想です。“多重人格”じゃなくて“他重人格”だから、初めて見る言葉だなって。自分で想像してみたりもしたんですけど、イマイチ“他”っていうところにピンと来ませんでした」。
――それから台本で内容とストーリーを知ったと。
「『なるほど!』ってなりましたね。自分の中にもともといくつもの人格が存在しているんじゃなくて、接する相手によって人格が違うんじゃないかってくらい接し方を変えるという意味だったんです。でもこれって、人間なら誰しもがやっていることじゃないですか。だから、最初に台本をいただいて読んだ段階では、どうやってユアちゃん役を演じればいいのかまったくわからなくて……」。
――聡美ちゃんが演じるユアちゃんは、接する人によって毎回人が変わったようになる、まさにその”他重人格”な女のコです。
「本当に、私が今までいただいてきた役の中で、一番自分と共通点がないんですよ。ユアちゃんは大丈夫なのか心配になるくらい不安定な女の子で、作家さんが私の写真だけを見て想像してユアちゃんを書いてくださったんですけど、私ってこんなイメージだったんですね(笑)。台本を何回も読んで、稽古を重ねた今でも、『なんでこの発言をしたんだろう?』って自分の中で理解しきれない部分が多くて……。本番までにもっと練っていきたいけど、いや〜……難しいです」。
――演技って、自分とは違う人になれるところに魅力を感じる方が多いと思うんですが、ひとつの役でここまでいろんな人格を演じることはなかなかない気がします。
「でも、私にもきっとその“他重人格”な部分って絶対にあると思うから、それをどう引っ張り出すかだと思っています。自分でもまだ出会ったことのない人格があるかもしれないので……」。
――接する人によって多少性格が変わることはないですか?
「ありますね。ここ最近は特に。学生時代はそれこそ女子特有のグループとかがあって、そういうところでは常に中間にいるタイプの人間だったので、違うグループではちょっと接し方を変えることくらいはしていました。小学校から中学校に上がった時は、地元から少し離れた中学へ行ったせいで知っている友達がひとりもいなかったんです。小学生時代は本当にやんちゃで、男の子と走りまわったり秘密基地を作ったりしていたんですけど、やっぱり第一印象って大事なので、中学に入って最初の頃はちょっと優等生ぶって大人しくしていました。教室でひとり静かにイスに座っていたら『名前はなんて言うの?』と聞かれて、『大久保聡美と申します』って答えたり(笑)。でも、案の定そのままいくわけはなく、すぐに小学生時代のやんちゃだった部分が出るようになりましたね。高校入学の時も、『今度こそ優等生キャラでいこう』と思い、伊達メガネをかけて入学式に出たりしたんですけど、それも一瞬で終わりました(笑)。接し方を変えようと思っても、結局それができないことが多かったです」。
――裏表がなくていい性格じゃないですか!
「ありがとうございます(笑)。このお仕事を始めて大人の人や目上の人と接することが多くなってからは、言いたいことを言うのに躊躇してしまうことが多かったんですが、ここ2年くらいでそんな自分が『メンドくさい!』と思うようになっちゃって、吹っ切れてからは本当にいつでもどこでも素のままです。誰と話す時もこのまま。だから、すごく楽なんですよ」。
――どこかふわっと抜けていて、1.5次元分くらい違う世界にいるんじゃないかと思わせられるこの感じですね(笑)。ちなみに、「メンドくさい」と思うようになったきっかけは?
「前に友達と3人で遊ぶってなった時に、ひとりは私が毒舌キャラを演じていた舞台で知り合ったコ、もうひとりは私が純粋でいいコを演じていた舞台で知り合ったコ、っていうことがあって……。当時は役に多少合わせてキャラ作りをしていた部分もあったから、遊んでいたら『聡美ってそんなキャラだっけ?』ってどっちのコからも言われちゃったんです。なんだか、どんどん本当の自分がわからなくなっちゃう気がしました。そういうのをうまく使い分けできる器用な人もいると思うんですけど、私にはできませんでした(笑)。近所のおばさん方を見ていると、だいたい誰に対しても同じ接し方じゃないですか。私、それです」。
――精神年齢がおばさんなんだ(笑)。
「はい。『おばちゃん』ってよく言われます(笑)」。
――演技のお仕事に臨む際、どのように役作りをしていますか?
「私は役が降りてくるタイプじゃなくて、どちらかというと自分に近づけていくタイプです。だから、少しでも自分と共通点のある役の方が役作りをしやすいっていうのはあります」。
――それこそ、2013年から毎年ミュージカルで演じてきたセーラームーンは共通点が多かった?
「はい。本当にいろんな部分で共通して、もう私、セーラームーンでした(笑)。公演を観に来てくれた母に『私は月野うさぎを産んじゃったのかしら?』って言われたくらいです(笑)。ゲームが好きなところとか寝坊しちゃうところとか、明るいところとかちょっとおバカなところとか……。すんなり入ってきましたね」。
――絶対にできなさそうな役ってありますか?
「う〜ん、犯人役とか? 演じることはできるけど、内側からしっくりくるっていう部分で相当難しい気がします」。
――逆に。演じてみたい役は?
「意味がわからない、ちょっと頭のおかしい人の役!」。
――合いそうですね(笑)。
「私もそう思います(笑)」。
言ってしまえば、本当に自己満足なんですよ
ステージで演技をしている時間が好きなんです
――そもそも聡美ちゃんが、演技のお仕事に専念しようと思うようになったのはいつですか?
「高校3年生の終わりですかね。もともと漠然と大学に行きたい思いはあったんですけど、ただ大学生に憧れていただけで、特に勉強したいことはなくて……。それだったら、大学へ行くのは勉強したいことが見つかってからでも遅くないんじゃないかなと思いました」。
――それで高校を卒業して、演技一本に絞ったと。
「そうですね。自分のなかで一番大きかったのは、やっぱり高校3年生の夏に初めて『セーラームーン』のミュージカル(以降、セラミュー)に出演させていただいたことです。初めての主演ミュージカルなうえに、世界的にも有名な作品なので、プレッシャーがすごくてめちゃくちゃ大変でした。その6年前に違う制作会社で同じミュージカルをやっていて、セラミューファンの方もたくさんいらっしゃる中で、私のセーラームーンがセラミューファンの方に認めてもらえなかったらどうしようって思っちゃって……。食事もままならないくらい、精神的に追い詰められていましたね」。
――「セーラームーン」の名前を聞いたことない人なんてほとんどいないでしょうからね。
「本当にコワかったんですけど、本番が始まったらもう楽しくなっちゃって、終わった時には今まで感じたことのないようなすごい達成感に包まれました」。
――千秋楽のことは覚えていますか?
「カーテンコールでのコメントで、息ができないくらい泣いていました(笑)。ヒックヒック言いながらしゃべったのを覚えています」。
――そこで演技の楽しさを知ったんですね。
「言ってしまえば、本当に自己満足なんですよ。演じるのが気持ちいいんです。ステージで演技をしている時間が好きなんです。それに、自分の中から新しい一面を見つけられるのも楽しくて……。それから3年間、続編で同じセーラームーン役を演じさせていただけたことがきっかけで、いろんな舞台や少しだけドラマのお話もいただけるようになりました。それは全部、1年目のセラミューあったからだと思っています」。
――そんなセラミューの5作目に、今度はセーラームーン以外の役で出演することが決まりました。
「ちょうど演出家の平光(琢也)さんとお会いしてお話した時に、セーラーコスモス役のご相談をいただいたんです。ただ、3作目で私を含めた5人のセーラー戦士役は卒業したので、卒業してからまだ2年弱しか経っていないのに出ていいものか、すごく悩みました……」。
――もう完全に卒業だったんですね。
「そうなんですよ。だから、新しい5人の戦士役のコにも申し訳ないなと思いました。でも、ちゃんとした形の卒業ではあったんですけど、シリーズの途中での卒業だったので心残りな部分がどうしてもあったんです。なので、この最終章に携われば、自分の中でキレイに消化できるのかなと思って周りの方に相談したら、みんなが『出なよ!』って背中を押してくれました。それでセーラーコスモス役を受ける決意ができたんです」。
――まだ先の話なので具体的なことはそこまでわからないかもしれないですが、セーラーコスモスはどんな役ですか?
「50世紀とか、本当に気が遠くなるほどの未来からやって来たセーラームーンの究極の姿がセーラーコスモスです。だから私が思うに、すさまじいくらいの輝きと高貴さがあって……。卒業してからまだ2年弱で、どちらかというと月野うさぎ感が強い私から急にそんな高貴さは出てこないので、ちょっと不安だったりもします(笑)。本当にセラミュは私の青春そのものなので、最後までキャストとして見届けてこようと思います」。
――さて、初めてセラミューに出演した17歳のときから4年ちょっとが経ち、いつの間にかハタチも過ぎていた聡美ちゃんですが、当時と比べてやっぱり大人になったなって感じます?
「車の免許もとりましたし、10代の頃と比べたら大人になったんじゃないかなとは思います」。
――失礼ですが、車を運転している姿が想像できないです(笑)。
「軽自動車なんですけど、頻繁に運転していますよ。プーさんのクッションがあったりして、メルヘンな車内になっています」。
――他に大人になったと感じる部分はありますか?
「成人して、お酒もちょっとずつ飲むようになりましたね。この前はひとりで飲みに行きました」。
――あまりお酒は強くない方ですか?
「そうみたいです。ちょっと前まではワイン5杯飲んでも平気だったんですよ。それが最近、急に弱くなっちゃったみたいで……。おじいちゃんがもともと一滴でも飲んだら酔っちゃうくらい弱くて、ここにきてその遺伝を継いだのかなとか思いました」。
――ワインが好きなんですね。
「炭酸が苦手なんですよ。カクテルも飲みますけど、ワインでちょっとカッコつけています(笑)」。
――高貴さを出そうとしているんでしょうか(笑)。10代の頃は、ハタチを過ぎたらこんな大人になっていたいなぁみたいな、理想ってありました?
「単純に大学生になっていると思っていたので、もっと若さがみなぎっている感じを想像していたかもしれません。どちらかというと、もうおばさんよりになってきた気がしているので……。お仕事がない日とかは基本一日家に引きこもっていて、どんどん若さが失われていきます(笑)」。
――家に引きこもって何をしているんですか?
「一日中ゲームです(笑)。もうここ5年くらい、パソコンのオンライン対戦のFPS系シューティグゲームが好きでずっとやっています。ベッドの横にパソコンが置いてあって、朝パッて起きたらそのまま手を右に伸ばしてパチッてパソコンの電源を入れて、起動した頃には体を起こしてイスに座ってヘッドセットをつけ、ボイスチャットに入って『おはよう〜!』と会話に入っていきます。一緒にゲームをやる友達も5年の付き合いで、ほぼ毎日、どんなに忙しくても寝る前の時間とかに通話しながらゲームをしていますね」。
――泣くコも黙るような廃人っぷりですけど、大丈夫なんですか……(汗)。
「もちろん、ちゃんと外に出ることもありますよ。外出が嫌いっていうわけではないです。でも、ゲームが楽しすぎるんですよ。ただ、いわゆるガチ勢ってほどうまいわけじゃなくて、単に友達とワイワイ楽しく通話しながらゲームをするのが好きなんです。今後もしばらくは飽きなさそうですね」。
――プライベートでやってみたいことはありますか?
「温泉とか、いろんなところに旅行へ行きたいです。あとはカメラが好きなので、新しいカメラを買ったら写真を撮る旅に出たいなって思います。去年、いとこと一緒に千葉の房総から青森まで車で出かけたんですけど、青森で撮った星がめちゃくちゃ綺麗だったんです。ちょうど流星群だったみたいで……。それから特に星空の写真が好きになったので、今度は青森を越えて北海道まで行って、星や自然を撮りに行きたいです!」。
大久保聡美(おおくぼ・さとみ)
生年月日:1995年10月30日(21歳)
出身地:千葉県
血液型:B型
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’13年夏、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン『-La Reconquista-』」にセーラームーン役で初主演を務めて以降、’14年夏、’15年夏も同作品の新シリーズで同じくセーラームーン役を演じた。7月12日(水)〜15日(土)に東京芸術劇場 シアターイーストで行われる舞台「他重人格 WHO AM I?」に出演。そして、セーラーコスモス役で出演するミュージカル「美少女戦士セーラームーン『–Le Mouvement Final-』」が、9月8日(金)~18日(月・祝)にAiiA 2.5 Theater Tokyoで、23日(土・祝)~24日(日)にアイプラザ豊橋で、29日(金)~10月1日(日)に梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで開催。
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舞台「他重人格 WHO AM I?」
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ミュージカル「美少女戦士セーラームーン『–Le Mouvement Final-(ル ムヴマン フィナール)』」
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