PICK UP ACTRESS 増田璃子
PHOTO=古賀良郎 STYLING=難波雅恵
HAIR&MAKE=佐々木愛 TEXT=田中裕幸
衣装協力=11、Hello UFO
初主演長編映画『ちょき』で盲目の少女役を熱演
――小学生の頃に通っていた書道教室の先生の夫で、美容院を営む直人(ちょきさん)と10年ぶりに再会したサキ。サキは母親のDVにより失明、一方直人は奥さんを亡くしていた。大切なものを失くした者同士がやがてお互いに惹かれ合っていくという恋の物語。今回、璃子さんは長編映画では初の主演となりますが、最初話を聞いた時はどんな気持ちでしたか?
「お話をいただいた時に、全盲という役柄と聞いて、不安や緊張が大きくて、最初は『私でいいのかな』『大丈夫なのかな』という気持ちでした」。
――主演の喜びというよりも?
「もちろん主演作をすごくやりたいという気持ちはあったのですが、『主演だけど難しい役だな…』と、わくわくと不安が入りまじっていました」。
――大変な難役ですが、撮影前にはどんな準備をしましたか?
「白杖を貸していただいて実際に歩くことで、全盲の人はどんな感覚なのか、どうやって歩くのかなど勉強させていただきました。撮影の直前には地元の盲学校で全盲の方にお話をうかがいました。私より3つくらい年下の女の子だったんですけど、すごく明るくて、笑顔で『何かできることがあれば言ってください』とおっしゃってくださって…。彼女と話せたことで気が楽になりました」。
――その少女から前向きなパワーが出ていたのかもしれませんね。
「はい。髪を三つ編みにしていて、聞いたら『自分でやりました』って。見えなくても自分で距離感をつかめているそうで。彼女と接したことで、特別な役のように構えず、自然体で臨めばいいと思えるようになりました」。
――全盲という設定はありますが、一人の17歳の女の子として生きることができたようですね。
「はい。今回のサキ役は、監督が当て書きしてくださって、私に似ているところがありますので、そういった面でもありのまま演じられたかなと思います」。
――相手役のちょきさん(吉沢悠)に対しての言い返し方とか、そのあたりは素の反応なのかな?
「はい。自分で感じたことをサキとして演じました」。
――じゃあ特に役を作り込んだり、この時の気持ちがわからないということは?
「なかったです」。
――目が不自由であっても、17歳として恋もするし、おしゃれもする。そういうところは変わらないですからね。
「はい。私自身も恋愛するし、おしゃれも好きだし。サキは目が不自由ですが、一人の女の子という部分は変わらないので、本当に感じたまま動いた、という感じですね」。
――あとサキはロックが好きで、ライブに行くシーンもありますよね。
「私もロックが好きなので、本当に似てます」。
――ちなみに好きなアーティストとかいるんですか?
「back numberさんが好きです!」。
――自分でライブに行ったりするの?
「はい、行きます!」。
――璃子さんは現在19歳。ちょきさんのような40代の男性に恋愛感情を持つ気持ちはわかりますか?
「自分自身はそんなに年上の人を好きになったことはないですけど、もしサキの立場で、そういう存在の人がいたら恋愛するんじゃないかなと思います」。
――最初は恩人である奥さんに会いたくなった。ただそれだけだったのが、ちょきさんに恋愛感情を抱くようになる。そこに至るまでの心の移り変わりを見事に演じていました。撮影は台本の順番通りに行われたのですか?
「はい。撮影が台本順に進んでいったこともあって、気持ちは作りやすかったです。サキは最初はクールで、人見知りなんですけど、だんだん心が打ち解けていって、最後は恋愛感情を持つ。順番に演じるからやりやすかったです」。
――これまでの作品で恋心を演じる機会はあった?
「いえ、今回初めて恋愛を演じました」。
――どうやって恋する気持ちにアプローチを?
「ちょきさんは奥さんが亡くなり、サキは虐待で失明する。お互い大切なものを失くし、困難があったからこそ、この二人は惹かれあったのかなと思うと、自然と恋愛する気持ちになれました」。
――よくある若者同士の恋愛を演じるほうが難しいのかもしれませんね。今回は役になりきることで自然に恋愛できたのかもしれませんね。自分の恋愛経験を思い出してイメージしたりというようなことは?
「今回それはやってないですね。年が上なのもあって、ちょきさんとサキという、その世界観とか二人の距離感とか雰囲気を意識しました」。
――終始落ち着いた印象のサキですが、終盤、唯一感情を爆発させるシーンがあります。
「その日はあまり人と話さず役に入り込んでいたら、撮影の時に自然と涙がこぼれてきました。サキが一番精神的に追い詰められるシーンは、私自身厳しかったこととか、もう絶対体験したくない怖い思いだとかを思い出しつつ、サキに感情を移入して演じました」。
「すごく涙が溢れてその瞬間にもっと演技をやりたい」
と感じた転機となった作品とは…
――撮影はいつ頃行われたのですか?
「昨年の12月中旬です」。
――和歌山には行ったことはあった?
「映画の撮影の時に初めて行きました」。
――じゃあ言葉も風景もすべて新鮮だったでしょうね。
「言葉はテレビでよく聞くような関西弁をイメージしていたんですけど、優しい印象の言葉でした。なんか、ほっこりするような感じでした。語尾が優しくて」。
――今回の金井純一監督の作品に出たことはあるんですよね。
「はい、4年前の『転校生』という作品に出させていただきました」。
――女優の活動を開始したのはそのさらに前?
「スカウトをしていただき事務所に入ったのが12歳の時でした」。
――その年齢で同じ事務所にスカウトで入った子だと、ローティーン向けのファッション雑誌のモデルやCMを中心に活動する人も多いですが、最初から女優として?
「最初はどういうことをするのか全然知らなくて、気づいたら演技の勉強を始めていた感じで。レッスンを始めたら楽しいなと思うようになってきて、続けたいなと思って、お芝居を始めるようになりました」。
――演技の楽しさを特に実感できた作品って?
「やはり『転校生』ですね。あ、でも、その前に、中学生の時に『わたしたちがうたうとき』という短編映画で主演させていただいたんです。それまでの作品ではセリフを追って読むだけという感じだったのが、自分の感情の中から生まれるものを出せた気がしました。その作品の中で歌うシーンがあるんですけど、カットってなった時にすごく涙が溢れてきて、その瞬間にもっと演技をやりたいと思うようになりました」。
――初めて役として生きられた実感があったのかな?
「当時はまだ中学生ということもあり、役を自分のものにできていませんでした。ぎこちないなと観ていて思いました。でも『わたしたちがうたうとき』を経験してもっとやりたいと思うようになりました」。
――いよいよ『ちょき』の全国公開が間近に迫ってきましたが、今の思いは?
「とてもうれしいです! 撮影で行くまで和歌山のことを全然知らなかったのですが、この撮影を通して和歌山を好きになりました。観てもらえれば和歌山って素敵なところだって絶対に思えます。あたたかい街ですし、優しい人がたくさんいますし…」。
――なんだか、自分の作品を観てもらいたいという思いより、和歌山の魅力を知ってもらいたいという気持ちが強いみたい(笑)。
「はい。とてもいいところで。あまり和歌山が舞台になっている作品ってないと思うので」。
――でも同時に、自分が大きく写ったポスターであったり、そこの一番前に名前があるのを見ると、うれしい気持ちになるのでは?
「私の代表作になればいいなと思います」。
――全国公開が近づいてくれば、もっとワクワク感が強まるかもしれませんね。
「はい、楽しみです!」。
増田璃子(ますだ・りこ)
生年月日:1996年12月26日(19歳)
出身地:埼玉県
血液型:B型
【CHECK IT】
主演映画『ちょき』が和歌山での先行公開に続き、12月3日(土)より渋谷HUMAXシネマにてレイトショー公開。
詳しい情報は公式サイトへ
映画「ちょき」
詳しい情報は映画「ちょき」公式サイトへ