PICK UP ACTRESS 井頭愛海
PHOTO=城方雅孝 HAIR&MAKE=石岡悠希(VANITES) INTERVIEW=斉藤貴志
衣装協力=ジョイフル恵利 着付け=きものさろん花子
朝ドラ「べっぴんさん」で注目されて
「明日の約束」でも好演した16歳
――2017年は朝ドラ「べっぴんさん」の出演が大きかったですよね?
「自分の人生の転機と言えるものでした。朝ドラは自分も小さい頃から観ていたので、抜擢していただいて本当にうれしかったんですけど、その分できるか不安もあって……。途中からの出演で、視聴者の方がどう感じるか、楽しみでもあり怖くもありました」。
――実際の反響をどう感じました?
「周りの方は『すごく良かった』と言ってくださいました。批判の声もありましたけど、それもうれしくて……。自分のことを見てくれなかったら批判もされないし、どんな形であっても皆さんの印象に少しでも残れたなら、自分では良かったと思います」。
――ポジティブですね。
「また新たな役をやるときに、今回の壁を壊す挑戦をするためだと受け止めています」。
――街で声を掛けられることも増えたのでは?
「今まではそんなに声を掛けていただくことはなかったんですけど、普通にごはん屋さんに行ったら『出てましたよね?』『応援してます』と言ってくださって、すごくうれしかったです」。
――朝ドラを観てるお母さんくらいの世代の方から?
「同年代の方も結構観ていただいたみたいで、女子高生も声を掛けてくれました。もちろん撮影に行ったロケ場所とかに年配の方がたくさんいらっしゃると、役名で『さくらちゃーん、観てるよ~』と言ってくださるんです。『頑張っていて良かった』と思うし、『また朝ドラに出たい』という気持ちになりました」。
――観ていて特に印象に残ったのは、親子ゲンカのくだりでした。
「あのシーン、実はクランクインして最初に撮ったんです。そこでさくらのイメージがつかめました」。
――気持ちがわかったと?
「はい。さくらが考えていることは、自分と重なるところが多かったです。最初は15歳の設定で、私もちょうど15歳だったので、進学のこととか、その年代ならではの悩みに共感できる部分がたくさんありました」。
――愛海さんもお母さんとケンカすることがあったり?
「ありますね。自分のお母さんとは何でも言い合えるので、違うと思ったら『違う』と言うし、お母さんも遠慮せずに言ってくれます。ケンカするほど仲がいい、という感じだと思います」。
――どんな原因でケンカになるんですか?
「だいたい私が悪いんですけど(笑)、部屋を片付けないとか、お風呂になかなか入らないとかですね。テレビを観ていたりすると、時間が遅くなってしまうんです。実家は大阪で、私は今、東京で離れて暮らしていて、電話でごはんや生活のことをすごく心配してくれます。ありがたいのに『わかってるやん!』『今それを言おうとしててん!』みたいになるから、私が悪いことが多いんです(笑)」。
――それで謝るんですか?
「一回電話を切るんですけど、またかけ直して『ごめんなさい』って謝ります(笑)」。
――「べっぴんさん」では演技に悩むこともあったそうで。
「はい。自分の年齢を越えて15歳から40歳まで演じたのは初めてでしたから、朝ドラならではの悩みでした。経験してないことは、重ね合わせようがないんですよね。『出産のときはどうだったのか?』『30歳になるとどうなるのか?』ということは親や周りのスタッフさんに聞きました。最終的に40歳になって、今のお母さんと同じ年齢なので、そこはお母さんにいろいろ聞いてから撮影に挑みました」。
――演じる上で役立ったことはありました?
「出産シーンで、撮影はほんのちょっとでしたけど、助産師さんに来ていただいて、お母さんの様子や気持ちのことを聞きました。生まれて15日とかの赤ちゃんもスタジオにいて、本当に小さくて、お母さんの気持ちになることができました」。
――特に終盤は、そういう普通なら実年齢15歳ではやらないシーンの連続でしたね。
「普通のドラマなら1クール3カ月で終わっちゃうところを、ずっと同じ役で撮影を6カ月くらいやらせていただいたので、役の年齢と関係なく、さくらが自分の一部になった気がしました。最後は40歳で終わって、クランクアップしてから2カ月くらい、おっとりしたしゃべり方が全然抜けなくて、自分がおばさん化していたのを感じました(笑)」。
泣く場面で悔しい想いをしたのが
スッと役に入れて涙が出るように
――一方、10月クールの「明日の約束」では、謎の自殺を遂げた男子生徒の同級生役を演じました。
「自分と同年代の役でしたけど、心に傷を負っているところをどう演じていくのか、すごく悩みました」。
――WEBで配信されたチェインストーリーでは、いじめられるシーンも多かったですが、役とはいえ、気が滅入りませんでした?
「いえ、私は楽しみにしていました(笑)。頭からバケツで水をかけられるとか、なかなかないじゃないですか。『ドラマっぽいな』と思いました。実際にあるのかもしれませんけど、私は経験したことがなかったので、気持ちが重くなるというより『えっ、どうなっちゃうんだろう?』という好奇心のほうが強くて、ワクワクしてました」。
――屋上で死ぬことも考えながら、涙を流すシーンもありました。
「あそこは辛かったです。セッティングしてもらって、『自分の間でどうぞ』と言われました。監督に『こういう気持ちで』と言われたことを考えて、自分でいろいろ想像しましたが、台詞がない分、難しかったです。でも、『べっぴんさん』のときも泣くシーンがあって、うまくできなくて悔しい想いをしたんですね。そういう壁をたくさん乗り越えてきたのを活かせたのか、今回はスッと役に入れて涙が出たので、自分の中で少し成長を感じられました」。
――役の気持ちになって涙が出た感じですか? それとも何か悲しいことを思い浮かべて?
「私は他のことでは泣けないタイプです。逆に気が散っちゃって、集中できなくなるので。だから、演じた那美のバックグラウンドや考えていることを、台本に出てないところまで想像して役を掘り下げました。そういう演じ方も『べっぴんさん』で教えていただきました」。
――那美について、どんなことを想像したんですか?
「『普段は何をしているときが楽しいのか?』『よく出掛ける場所はどこなのか?』『眺めのいい丘で1人でいる時間が好きで……』とかを想像しました。重い作品でしたけど、楽屋ではみんな仲良しだったんです。でも、那美はクラスメイトと距離を置いていることは、常に意識してました」。
――クラス全員を前に「吉岡くんはあなたたちのせいで自殺したのに!」って長台詞でブチまけたところは、プレッシャーもあったのでは?
「すっごくドキドキしました。ああいうふうにワーッと言う役は初めてだったし、那美の感情がピークに来た瞬間だったので、そこの気持ちは大切にしないといけないし……。でも、このお芝居をして自分がどう変われるのか、自分で見たいところもありました」。
――イメージ通りにできました?
「そうですね。大きく響き渡るような声で叫びました。あのとき、井上(真央)さんに『気分悪くない? 大丈夫?』と声を掛けていただいて、自分の中で落ち着けて、お芝居に挑めた気がします。でも、放送を観たら反省点も見つかりました。自分の良いところは活かしながら、『もっとこうするべき』というところをたくさん探して、また次につなげていきたいです」。
――本当に謙虚な向上心を持っていますね。
「自分のお芝居をそこまでうまいと思わないので、歩みを止めることなく、前を向いていきたいと思います」。
――2017年はX21での活動も含めて充実した1年だったと思いますが、プライベートでも良いことはありました?
「今年はプライベートもすごく充実していました。大阪での撮影もあって、お休みの日に地元の友だちと京都に行ったり、『べっぴんさん』もずっと大阪で撮っていたので、実家から通って家族との時間も持てて、キャンプにも行ったり……。友だちともたくさんコミュニケーションが取れました」。
――それは良かったですね。
「夏もいつもは花火大会とか行けないんです。お仕事が忙しい時期だから。でも今年は、7月のうちにやる花火大会を探して行ったり、友だちと江の島までプチ旅行をしたり、本当にすごく楽しい1年でした」。
――お正月は帰省するんですか?
「はい。家族でキャンプに行く予定です」。
――新年から?
「いつも大晦日に行ってます。アクティブな家族なので(笑)。夜になる前に兄弟で森に薪や枝を集めに行って、バケツにいっぱい入れてきて、夜にたき火を囲んでしゃべりながら新年を迎えるのが毎年の恒例なんです」。
――へーっ。
「あと、私は星を見ることがすごく好きなんです。東京ではまったく見えないから、夏にも星が見たくてキャンプに行きました。そこで初めて流れ星を見たんですけど、願いごとを言うのを忘れてしまって、ちょっと悲しかったです」。
――今度流れ星を見たら、どんな願いごとをしますか?
「『たくさんの作品や役に携わりたい』とお願いします。2017年の自分を絶対に越える年にしたいので、常に前を向いて頑張っていきます。それと今年はたくさんの方と出会って、たくさんのご縁が生まれたので、来年もどんなご縁が生まれるのか楽しみにしてます」。
井頭愛海(いがしら・まなみ)
生年月日:2001年3月15日(16歳)
出身地:大阪府
血液型:O型
【CHECK IT】
2012年に「第13回全日本国民的美少女コンテスト」で審査員特別賞を受賞。2013年公開の映画「おしん」で女優デビュー。2017年1月から連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK)にヒロインの娘役で出演。10月からドラマ「明日の約束」(カンテレ・フジテレビ系)にレギュラー出演。2018年1月16日スタートのドラマ「大阪環状線 Part3 ひと駅ごとのスマイル」(カンテレ/火曜24:25~)の最終話「Station10 : 芦原橋駅編 私が魚になる前に踊って」(3月20日放送)に出演。次世代ユニットX21のメンバーとしても活動中。11thシングル「Friday Night Party」が2018年3月14日(水)に発売。
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